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「標準的な運賃」普及推進運動を実施へ=全ト協理事会

2021.03.18

全日本トラック協会(坂本克己会長)は11日、理事会を開催し、2021年度の事業計画や予算を議論した。21年度から23年度にかけて国土交通省、地方ト協とともに「『標準的な運賃』普及推進運動(仮称)」を実施し、改正標準貨物自動車運送約款と同様、8割程度の事業者の届け出を目指すこととした。21年度は重点期間と位置づけ、月に一度程度、届け出状況の把握や情報共有を進めていく。荷主をはじめ周知を図るためのWebサイトへのバナー広告も検討する。

届け出をするところから始まる

開催にあたり、坂本会長(大阪運輸倉庫)は「業界が心ひとつとなって成立した改正貨物自動車運送事業法により、標準的な運賃が示され、荷主や元請に堂々とその運賃を主張し、“利”ある時代が来る。だからこそ(標準的な運賃に基づく新運賃の)届け出をするところから始まる」と強調。

改正事業法の柱のひとつである規制の適正化や事業者の遵守すべき事項の明確化に関し、「悪質な事業者を排し、公正な競争環境をつくらなければならないということが示された。21年度は、適正化事業実施機関による巡回指導ではDまたはEランクの事業者に絞り、真面目な事業者の足を引っ張る事業者は土俵の外に出ていってもらうようにしたい」とした。
荷主対策の深度化について、「悪質な荷主の情報を行政や全ト協に提供していただき、しっかりとした荷主との取引にしていきたい」とし、道路問題に関しては、トラック業界が利用しやすい高速道路料金体系、重要物流道路の指定、暫定2車線の4車線化、ミッシングリンクの解消、PA/SAの拡充が必要とした。

来賓の国土交通省の秡川直也自動車局長は標準的な運賃について、「自社の運賃と比べて差があるか、どこが足りないかを分析し、荷主と交渉するなど、届け出に至るプロセスが大事」と指摘。吉岡幹夫道路局長は、道路局としての取り組みを紹介し、「外国に負けない幅の広い道路であるべき」と語った。

高い届け出率の大分県の取り組み紹介

理事会では、標準的な運賃の届け出が全国で5%弱にとどまっていることに関し、もっと届け出すべきではないかとの意見が出され、国交省自動車局の伊地知英己貨物課長は「標準的な運賃は23年度末までの時限措置。延長するには法改正が必要だが、届け出が進まなければ『使われていないではないか』と言われてしまう」と述べた。

また、届け出率が全国でも高い大分県トラック協会の仲浩会長(中津急行)が届け出促進に向けた協会の取り組みを紹介。「大分県に本社を置く企業の87%が届け出を出した。出していない会社を把握し、事務局がフォローし、出してもらえるように指導している」と語った。

6月の総会時までに5割を目指そう

全ト協の馬渡雅敏副会長(松浦通運)は「まずは届け出をすることが必要。『届け出することを知らなかった』『届け出したら自動的に荷主からその運賃をもらえると思っていた』――という会員もいる。時限措置が終了する23年度末まであと3年しかない。『コロナ禍で荷主との交渉がまとまらず届け出できなかった』などぬるいことを言っているようではいけない」と強調。

改正事業法に関し、「全会一致で成立した、近年まれにみる法律であり、ボールは事業者の方に投げられた。いまやらなければ、未来永劫、国交省に運賃の話はできない。これが最後と思って取り組まないと時限措置の延長も難しい。改正約款の届け出は8割を超えており、6月の総会時には届け出が5割を超えるように呼び掛けていこう」と述べた。

また、理事からは標準的な運賃に関し、国際海上コンテナ輸送に関しては対象に含まれていないとの問題提起がなされ、「(昨年4月の標準的な運賃の告示以降)追って海コンについても料金を示すと言われていたが、ずっと待っている状況だ」とし、海コン輸送は帰り荷を積む前提になっていないなど輸送特性にも触れた。
(2021年3月18日号)


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