国交省、来秋にも「自動車・物流局」に組織再編
国土交通省は物流行政の強化に向けて組織改正を行う。現在の公共交通・物流政策審議官部門に置かれた「物流政策課」「大臣官房参事官(物流産業)室」「大臣官房参事官(国際物流)室」の3つの物流関連部署を「自動車局」の傘下に移管し、自動車局は「自動車・物流局(仮称)」と名称を改める。物流行政とトラック輸送行政の一体的で効果的な推進体制を構築することが狙い。組織改正は来年度に実施し、詳細な時期と正式名称は政府の承認の上で決定するが秋頃が有力視されている。
物流3部署がトラック行政の貨物課と隣接
組織改正の最大の目的は物流行政の強化だ。今後の物流行政について、物流DXなどによるサプライチェーン全体の最適化や、脱炭素化社会の実現に向けたグリーン化など様々な課題に効果的に対応することが重要との考えに基づき、新たな組織体制で施策を推進する。現在、物流政策を担当する「物流政策課」「大臣官房参事官(物流産業)室」「大臣官房参事官(国際物流)室」の3部署が所属する公共交通・物流政策審議官部門から切り離し、トラック輸送行政を担当する自動車局貨物課と同じ局内に置く。国内物流の太宗を担うトラック輸送分野の施策とこれまで以上に緊密な連携を取ることで、施策の推進を強化していく。
これまで、物流政策課は陸海空の3輸送モードが担う物流全般にわたる行政を担当し、参事官(物流産業)室は倉庫業、フォワーディング業、自動車ターミナル業、物流分野の災害関連を所管してきた。参事官(国際物流)室はグローバルサプライチェーンの発展を踏まえ、東アジア・ASEAN地域などを中心とした物流関連施策を推進してきた。今後、「自動車・物流局」の傘下に置かれても、その機能は変わらない。
国交省の関係者は、「世界的にもサプライチェーンの混乱がみられる一方、国内では労働力不足が進み、特にトラックドライバー不足が深刻化している。そうした中、わが国の物流の太宗を担うトラック輸送関連の施策と物流関連の施策との関係はこれまで以上に緊密な連携が必要」とし、新体制で物流課題の解決に取り組んでいく考えを披露した。
「2024年問題」や中長期の課題に対応
現在、物流における最大の課題と言えるのが「2024年問題」だ。24年4月からトラックドライバーの時間外労働規制が罰則付きで施行される。ドライバーの働き方が変わることで、19ヵ月後にはいままでの物流のあり方が通用しなくなる。そこで国交省は自動車局貨物課を中心に安定的なトラック輸送を維持する取り組みを進めてきた。一方、物流行政を担う公共交通・物流政策審議官部門では、国の物流政策を定めた「総合物流施策大綱」の方針に基づき、様々な物流政策を実施することで物流の安定的・持続的な維持に取り組んでいる。国交省では国内物流の太宗を担うのはトラック輸送であるとの観点から、「2024年問題」への対応とともに、中長期的な視点から物流のサステナビリティを担保するため、物流行政とトラック輸送行政の一体的な推進体制を構築することとした。
国交省の関係者は「従来の公共交通・物流政策審議官部門から物流政策担当部署を分離することになるが、公共交通政策を所管する審議官部門は名称を改めた上で存続する予定。物流関連の部署はこれまでも貨物課との連携を図ってきたが、新体制では連携がより一層強化される。物流担当3部署の機能はいままでと変わらない」とした。
ただ、物流関連部署は、これまでトラックから鉄道・船舶へのモーダルシフト推進を担ってきたという経緯がある。今後、トラック輸送行政を核とした自動車局と一体的に運営される中で「モーダルシフトをどう位置づけるか組織運営面で難しい局面も予想される」との声もある。
(2022年9月1日号)