海コン輸送、「2024年問題」で存続の危機
海上コンテナ輸送が「2024年問題」を前に存続の危機に立たされている。東京港の一部のコンテターミナル(CT)では常時3~5時間の待機が発生。24年4月から適用される年960時間を上限とする罰則付きの時間外労働規制や新たな改善基準告示への対応が困難になり、撤退が加速する可能性も指摘される。ドライバー不足や高齢化も進み、輸出入のラストワンマイルの輸送力の縮小が危惧される。
3~5時間の待機、違反リスク高まる
CTを起点とする海コン輸送にとって、「2024年問題」は死活問題。とくに深刻なのが東京港を利用する海コン業者だ。CTの待機時間は全体としては改善傾向にあるが、一部のCTでは「ほぼ毎日3~5時間」の待機が発生。「かつての『10時間待ち』と比べインパクトが薄いのか、マスコミもあまり取り上げなくなった」と海コン業者はこぼす。
CTでの待機は一般のトラックと事情が異なり、待機の間にも少しずつ車が動いている。このため、待機とはいえ「運転時間」「拘束時間」にカウントされ、都道府県トラック協会の適正化事業の巡回指導の際に、CTでの待機時間を「休息時間扱いにしてほしい」と要望しても認められなかったという。
海コン業者が危機感を募らせるのは、24年4月からの時間外労働規制は「罰則付き」であるためだ。1日に3~5時間の待機にはまれば、その分、運転できる時間は少なくなる。ドライバーの労務管理のハードルが上がり、違反のリスクも高まる。罰則を回避するため、海コン輸送から撤退する事業者が増える懸念がある。
CTでの待機は「待機時間」でなく「荷待ち時間」
海コン業者によると、港頭地区に営業所を構える業者は、長距離や“夜走り”等の時間外労働はほとんどなく、規定の時間内に収めやすい。このため、「2024年問題」によって打撃を受けるのは、「北関東方面の業者や、営業所が港から1時間圏内にある『地場業者』ではないか」と見られている。
港から顧客までの配送距離や時間は同じでも、車庫のある場所によって「出発起点」が異なる。例えば、港から1時間圏内の地場業者は、港で作業が終了しても営業所まで帰庫する時間が拘束時間にプラスされ、港の元請け業者よりも「朝1時間・夕方1時間」程度拘束時間が長くなってしまう。
東京都トラック協会海上コンテナ専門部会では、CTでの待機を「待機時間」でなく、国土交通省が規定する「荷待ち時間」との位置づけを明確にしようという動きがある。また、混雑するCTの輸送を断ったり、インランドデポの活用、港内の搬出入と顧客への配達の“分業”など、「できるだけCTで待機する車両台数、回数を減らす」取り組みも各社で進めている。
立ち退きで“車庫難民”が発生、減車も?
東京港を利用する海コン業者にとってもうひとつ頭の痛い問題が、「車庫」の確保だ。大井ふ頭隣接地のシャーシプールの立ち退きを土地保有者であるJRグループから要請され、期限が9月末に迫っている。これまで300~500台が利用しており、新たな車庫が確保できなければ減車を余儀なくされるケースも出てくる。
公式にアナウンスはされていないが、中央防波堤外側コンテナふ頭に代替シャーシプールが設置され、40ftコンテナ換算で220台分のレーンが用意されるという。ただ、「倍以上の応募があった模様」(海コン関係者)で、また、トラクタヘッドは対象外であるため、“車庫難民”が発生し、「車庫登録できず減車する可能性は十分ある」という。
東ト協海コン専門部会の調査によると、2022年3月時点における調査対象全店社(20社)の運行稼働台数は3万2734台で前年比2241台減少。調査を開始した11年3月時点(16社)と比べると6447台減少している。自車はほとんど変化がない一方、庸車は97・5台から59・5台に4割近く減り、庸車の輸送力の縮小が目立つ。
ドライバーの高齢化も進む。関東トラック協会海上コンテナ部会の調査では、22年3月31日時点の在籍者の最高齢は81歳で、新規採用者の最高齢も71歳。50歳台以上が6割超を占める。シニアドライバーが知る「海コンはもうかった」時代の賃金水準から程遠いことも、若年ドライバーの“海コン離れ”の一因となっている。
(2022年8月30日号)