【レポート】CO2排出量の〝見える化〟サービス続々と
SDGsの高まりなどを受け、カーボンニュートラルの実現に向けて動き出した物流業界。物流事業者にとっては、自社の事業活動で排出するCO2削減に加え、顧客のサプライチェーン上で排出されるCO2削減にいかに貢献できるかが大きな課題であり、物流事業者の今後の事業競争力を左右する要件ともなる。そうした中、物流各社からは、輸送などに伴うCO2排出量を可視化できる〝見える化〟サービスが続々リリースされ始めた。カーボンニュートラルを実現するためには、第一段階として物流活動におけるCO2排出を正確に把握することが必要となる。
CO2排出量を瞬時に把握=日本通運
日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は今年10月、PCやスマートフォンなどから発着地や個数・重量を入力するだけで、国内輸送における運賃やリードタイム、CO2排出量などを瞬時に把握できる「ワンストップ・ナビ」の提供を開始した。さらに、翌11月にはワンストップ・ナビのCO2排出量の見える化をさらに進化させた「エコトランス・ナビ」をリリースした。
エコトランス・ナビは、過去の輸送データ(個数、重量、集荷・配達先の場所)をもとに、現行の輸送モードを環境に優しい鉄道や海上輸送にシフトした場合のCO2排出量削減効果をレポート化するサービス。すでに鉄道や海上輸送を利用している場合には、トラックで輸送した場合のCO2排出量を比較することで、現在の環境貢献度を可視化することもでき、顧客のESG経営をサポートする。
また、国土交通省への物流総合効率化法の申請書や、資源エネルギー庁への特定荷主定期報告書などの所定書式に計算結果を記載するなど、公的機関への提出書類にも活用できるため、顧客の事務作業の負担軽減にもつながる。
ワンストップ・ナビ、エコトランス・ナビとも、CO2排出量については集配距離を地図データと連携することで正確なデータを算出。仕組み自体が第三者機関の検証を受けているため、公的な手続きに利用することができる。
顧客のサステナビリティを包括支援=三井倉庫グループ
三井倉庫ホールディングス(本社・東京都港区、古賀博文社長)がリリースしたのは、「三井倉庫Sustaina Link(サステナリンク)」。顧客のサプライチェーンサステナビリティ実現を支援するサービスと位置づけている。
サステナリンクでは、サプライチェーンにおけるリスクを「環境」「労働力」「災害」の3つに分類し、それぞれのリスクに対して、①知る→②見える化する→③改善するという3つのステップでソリューションを包括的に提案していく。このうち環境リスクにおいて、今後もっとも重要となるのがCO2排出量の削減であり、これについても制度面の把握から始まり、現状の排出量の見える化、削減するためのソリューションというステップで、顧客の物流における低炭素化を実現に導いていく。CO2排出量の算定・把握は第三者が認証した手法で行う。
ソリューション提案では、三井倉庫グループが持つフルスペック物流機能を活用することで、低炭素型の物流設計を提案。さらに、今後の人手不足の深刻化を見据えた省力型の物流や、災害に強い物流体制の構築をサポートしていくことで、顧客の持続可能な物流を包括的に支えていく。
CO2削減量をシミュレーション=NTTロジスコ
NTTロジスコ(本社・東京都大田区、中江康二社長)も今月から「CO2排出量可視化ソリューション」の提供を開始した。「物流領域で排出されるCO2排出量の把握が難しい」「ガイドラインに沿った排出量の計算が必要だが、データ収集や算出に時間がかかる」といった顧客からの相談が増えていることから、サービス化に踏み切った。
CO2排出量の把握では、輸配送および倉庫内での活動についてのデータを収集・精査した上で、CO2排出量を可視化してレポートとして提出する。算出基準は行政のガイドライン等に準拠しており、レポートの提出頻度は四半期ごとが基本だが、月次や年次での提出にも対応する。
さらに、同社が提供している共同配送やモーダルシフト、太陽光発電やEV車両の導入、梱包資材の見直しなどの各種サービスを導入した場合のCO2排出削減量のシミュレーションも提案することで、顧客の低炭素物流の構築を支えていく。
(2021年12月21日号)