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カインズ、次世代センター新設でロジ機能強化

2021.12.16

ホームセンター国内最大手のカインズ(本社・埼玉県本庄市、高家正行代表取締役社長CEO)は、SPA(製造小売業)としてのさらなる差別化に向け、ロジスティクス機能を強化する。三重県、埼玉県に最新技術を取り入れた次世代大型物流センターを新設。自社のコントロールによる物流網の強みを活かし、高い次元でのQ(クオリティ)、C(コスト)、D(デリバリー)を実現する。また、自社の店舗やオフィス、倉庫などの「スコープ2」に続き、2050年までに輸配送も含めたサプライチェーン全体の「カーボンゼロ」を目指す考えだ。

自社のコントロールによる物流網を構築

1989年設立のカインズはSPA方式を業界に先駆けて導入。素材調達から生産管理、販売までをスムーズに行うため、自社のコントロールによる物流網を構築。店舗環境の進化や新たなサービスの創造といったカインズのビジネスの変化に対応しながら、約20万点のアイテムを全国266店舗(11月30日時点)に、安心・安全・正確に商品を届けるのが物流に課せられたミッションだ。

国内では北海道から九州まで11ヵ所に物流拠点を配備。売上高全体の4割を占めるオリジナル商品は中国をはじめアジア各国で生産されており、海外の物流拠点をコントロール。主に首都圏の港で輸入され、「マザーセンター」である太田流通センター(群馬県太田市)に集約し、全国の店舗に供給。国内生産の商品は共配センターで混載して店舗に納品し、店舗作業の効率化につなげている。

グループ企業への商品配送や物流拠点での商品管理は、物流子会社のアイシーカーゴが担う。目下の課題がドライバー不足。とくにカインズでは10t車による店舗納品が多いため、大型免許保持者が減少していることに危機感を強める。「貴重なドライバー、車両の稼働率を高め有効活用する」(SCM統括部の川鍋智之部長)ため、店舗への納品時の積載率を向上させ、車両台数の削減に努めている。

保管・出荷能力を向上、競争力を高める

カインズは右肩上がりの成長を続け、従来は北関東を中心に店舗展開してきたが、中部以西の店舗数も83店舗(11月30日時点)にのぼる。事業拡大と新業態への対応、さらには既存の店舗への物流サービスレベルの向上を目的に、保管・出荷能力を高めた物流センターを構想。立地や規模を検討した結果、三重県と埼玉県で次世代大型物流センターの開設を決定し、両センターとも最新のロボット設備導入を検討する。

三重県桑名市では延床面積約9万400㎡の物流センターを計画し、23年秋の稼働開始を目指す。中部および中部以西のTC機能とともに、海外からのオリジナル商品を受け入れる「西のマザーセンター」と位置づけ、マザーセンター機能を東西に分散。現在は「太田流通センター」から供給しているPB商品の陸送距離を短縮し、CO2削減に寄与するとともに、ドライバー不足への対応を図る。

首都圏エリアの配送効率と物流サービスレベルを向上させるため、埼玉県日高市でTCとDC機能を備えた延床面積約6万7000㎡の物流センターを24年中に稼働開始予定。川越の物流拠点を移転するもので、出荷能力を1・5倍に高める。川鍋氏は「納期、品質、コストの競争力を高め、店舗のビジネスを支える物流を実現したい。自前で物流網を持つことが差別化につながる」と話す。

25年までに倉庫などのカーボンゼロ達成へ

カインズではこのほど、50年までのカーボンゼロ(CO2排出量実質ゼロ)に向けた目標を策定。中間目標では25年までに「スコープ2」として自社の店舗・オフィス・倉庫のカーボンゼロを達成したうえで、50年には「スコープ1、3+α」としてカインズのサプライチェーン全体のカーボンゼロを達成するとともに、カインズのある「まち」のカーボンゼロにも貢献していく方針を掲げた。

「物流におけるカーボンゼロの達成は現状の技術では難しい」ことから、物流に伴うCO2排出量の削減に注力。輸配送距離の短縮やベイシアグループ企業との共同配送、メーカーの車両の帰り便の活用、環境負荷の低い次世代車両の導入などを計画中。新設センターでは太陽光発電など創電の仕組みを採用する。海外からの調達で先駆的に実施してきた、内陸デポを活用したコンテナラウンドユースも継続的に取り組む。

「スコープ3」における輸配送のCO2排出量の算定に向けては、運行管理システムの活用を検討している。「従来であれば車載端末を装備しなければならなかったが、いまはスマートフォンのアプリなどを活用してデータを取得できる」と指摘。輸配送の協力会社にデータ取得への協力を呼びかけていく考えで、「より使いやすい仕組みを開発し、提供していきたい」と意欲を見せる。
(2021年12月16日号)


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