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EC物流事業、30年に1000億円へ=SBSHD

2021.11.11

SBSホールディングス(本社・東京都墨田区)は来期からEC物流事業へ本格参入し、同事業で2030年をメドに1000億円の売上を目指す。現在展開中のラストワンマイルネットワークに加え、SBSリコーロジスティクスが保有するシステム開発力やSBSロジコムの現場ノウハウを融合したEC事業者向け3PL提案を拡大する。鎌田正彦社長は「当社は日本一のEC物流会社になれる実力を持っている」と自信を示す。

SBSリコーロジのシステム開発力が強み

現在のSBSホールディングスにおけるEC物流関連事業の売上高は、大手EC事業者などのBtoBおよびBtoCラストワンマイル配送業務が約170億円、3PL業務が約100億円となっている。これを、10年に満たない期間で1000億円へ引き上げる構想で、うちラストワンマイルが300億円、3PLが700億円を占める想定。達成には、EC向け物流センターも新たに24~25万坪を開発する試算となる。

構想を実現するカギとなるのが、SBSリコーロジのシステム開発力だ。2018年にSBS傘下入りした同社は、リコーの子会社としてシステム開発力を持つ上、大塚商会のオフィス通販事業「たのめーる」の物流業務を一括受託するなど、通販物流における豊富なノウハウを保有する。そこにSBSロジコムの現場力や、SBS東芝ロジスティクスの最新物流ロボット導入技術などを融合し、最先端技術を用いた“EC物流で最高のプラットフォーム”を作り上げる。

「M&Aでシステム開発力がグループに備わったことは大きな成果」と鎌田氏は話す。SBSリコーロジとSBS東芝ロジの傘下入りで、SBSグループにおけるロジスティクステクノロジー(LT)部隊の所帯は40~50人、IT部隊は約200人に達した。「物流会社にこれだけ充実したシステム部門があることはなかなかない」(同)。倉庫内で活用するロボット技術も、米シリコンバリーをはじめとする国内外で活躍するスタートアップ企業などへ数十億円規模の出資を進めており、SBSグループの物流センターで実験・検証し、成果が出たものを順次導入していく。

EC向け専用大型物流センターを開設

最新鋭のシステムやロボット技術を導入する、EC専用の大型物流センターも開発する。自動化・省力化機器を一気通貫のシステムでシームレスに連結することで、庫内作業の効率化と最適化、および顧客サービスの向上を図る。こうしたEC向け3PLサービスを「いかに安価で、わかりやすく提供するかが重要」として、サービスのパッケージ化も想定。単価に競争力を持たせる仕掛けが、物流センターを自社開発することによるコスト低廉化だ。「物流施設開発事業者が提供する高単価の物流センターではなく、自前で開発し、賃料を自分で設定できる環境を作ることが最も大切」と鎌田氏は話す。

用地そのものもなるべく坪単価の安い土地を仕入れる。EC拠点の場合、道路アクセスはそれほど重要ではなく、反面、作業者が集まるかどうかがポイントだが、自動化機器の導入でカバーすることも可能。大手宅配会社が集荷に来られない場所でも、SBSグループの足回りを使って宅配会社のセンターへ持ち込めるため、「用地の選択肢はかなり広がる」。まずは関東1都4県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城)のいずれかで大規模拠点を立ち上げた上で、大阪や名古屋にも展開していく。

多様な“仕掛け”でEC市場に打って出る

鎌田氏は「当社であればEC物流市場をひっくり返せると思っているが、そのためには様々な仕掛けと経営のロジックが必要」と指摘する。例えば、当面は既存物流センターの空スペースで個別のEC物流案件を段階的にスタートするが、案件が集まったところでEC専用物流センターを開設し、一気に集約する。そうすることで “荷物であふれるEC専用物流センター”がすぐに完成し、同所をショールームとして公開すれば、「さらに新たなお客様を呼び込むことができる」。

グループで拡大中のラストワンマイルネットワークも優位性を発揮する。SBS即配サポートが首都圏で構築する配送網にSBSリコーロジのオフィスサプライ品供給網を組み合わせたことで、既に人口カバー率は5~6割に到達。大手EC事業会社複数社からBtoBおよびBtoC配送業務を受託しており、SBS東芝ロジの商品も上乗せすればさらに強固なネットワークになるという。鎌田氏は「不在再配達など課題もあるが、いずれはBtoCのネットワークを太くし、3PLとのシナジーを発揮したい」と展望する。

その上で、「SBSリコーロジとSBS東芝ロジのグループ化で本当になんでもできる会社に近づいたが、そうした中で、一番伸びる市場がECだった」と、構想の背景を説明する。ターゲットとするのは、中小規模のEC事業者による3PL需要。こうしたEC事業者は、「日本中に山ほどいるが、皆、物流に困っている」。一方で、EC物流市場に注目する3PL会社は少なくないが、「ITとロボット力、倉庫開発力、現場力、そしてSBSグループの“ベンチャー企業並みの”スピード感を発揮し、日本のECを支える仕事に打って出ていく」と鎌田氏は意欲を示す。
(2021年11月11日号)


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