過積載、荷主要因は3分の1に減少
荷主を要因とするトラックの過積載が大きく減少していることが本紙取材でわかった。国土交通省が2017年12月から過積載車両の荷主対策を強化して以降、荷主が要因となった過積載の件数は20年度には3分の1まで減少。国交省の担当者も「対策が一定の効果を上げている」との見方を示す。ただ、主要高速道路で行っている取り締まりでは、いまだに一定数の違反車両が確認されており、重大事故や道路インフラの劣化につながる過積載の撲滅に向け、一層の取り組みが求められる。
取り締まり時に「荷主情報の聴取」を開始
過積載は、道路を劣化させるとともに深刻な事故の原因となっており、その大きな要因として、荷主からの要求や非効率な商慣習があるとして、国交省では、荷主にも責任とコスト等を適切に分担させていくため、17年12月から、全国の直轄国道や高速道路で過積載車両の荷主対策の試行を順次開始した。
当時の現状については、過積載の大型車両は通行台数の約0・3%だが、道路橋の劣化に与える影響は全交通の約9割。また、通行する特殊車両の約3割が過積載車両となっていた。
このため、過積載車両の荷主対策として、収集した荷主情報を活用し、自動車部局と連携しながら、荷主勧告制度の運用強化を図っていくこととした。
具体的には、基地での取り締まりでは、道路管理者が過積載等の違反車両を確認した場合、当該車両について従来からの「警告書の発出」や「是正措置の命令」、「運送事業者名の公表」などの実施に併せ、ドライバーの任意協力のもとで、違反通行の要因となった「荷主情報の聴取」を開始した。
聴取によって得られた情報は国交省自動車局・運輸局とも共有。同情報に基づき各都道府県トラック協会など適正化事業実施機関が違反事業者に聞き取りを行い、荷主を特定。同省運輸局は過積載や過労運転などの要因となった荷主に対し改善を要請。悪質な場合には警告を発出する。
荷主が関与する過積載車両は減少傾向
この取り組みが開始されて以降、直轄国道での違反が判明した過積載車両の総数をみると17年度は171台、18年度は172台、19年度は156台、20年度は164台と、全体としては増減を繰り返しているが、荷主が原因となった過積載の件数だけを見ると徐々に減っている。
荷主の関与が主要因として荷主に対して協力要請を行った件数は、17年度には37件(過積載車両総数の21・6%)、翌18年度は50件(29・1%)と荷主要因の違反が2~3割あったのが、19年度は20件と半分以下となり割合も12・8%と1割台に低下。20年度は12件、割合で7・3%となり、17年度の3分の1の件数にまで抑えられた。
また、荷主に対して発出された警告は、17年度は2件、18年度は1件、19年度は1件、20年度はゼロとなっており、対策効果を裏書きしているとみられる。国交省の担当者は「警察など関係部署と協力しながら取り締まりを行っているため単純には言えないものの、荷主の関与する過積載車両は減少傾向だ」とみている。
なお、昨年11月に国交省が過積載車両の「首都圏大規模同時合同取り締まり」を全20ヵ所で実施したところ、計測車両83台のうち、違反車両39台に対し指導警告等を行った。荷主要因の過積載は減っていても、依然として違反車両がなくならない現状を踏まえ、国交省では警察や各都道府県トラック協会と連携しながら過積載車両対策を進めていく考え。
(2021年10月19日号)