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【レポート】「ホワイト物流」に約400の荷主が賛同

2021.09.28

トラックドライバーの長時間労働削減や労働生産性向上を目指す「ホワイト物流」推進運動。2019年3月のスタート以降、改善に賛同する企業は今年8月末で1266社にまで増加。そのうち荷主であるメーカーやメーカー系物流子会社が395社と3分の1超を占める。その改善内容をみると、5割超がパレットの活用、4割超が鉄道・船舶へのモーダルシフトで、このほかコンプライアンス関連の取り組みも目立つ。ただ、荷主等の賛同企業は昨年の同時期の362社からは33社しか増えておらず〝頭打ち〟も見られ、さらなる普及浸透も課題だ。

パレット化やモーダルシフトが取り組みの主流

賛同企業の自主行動宣言の中身を見ると、メーカーとメーカー系物流子会社395社のうち8割の318社が事業者と連携の上「物流の改善提案と協力」に取り組むとし、半数超の208社が「パレット等の活用」を項目に挙げた。感染症対策として荷役を機械化する動きもあり、パレット化の機運は高まっている。モーダルシフトへの意欲も高く、荷主の4割が長距離輸送で船舶・鉄道を活用する意向を持つ。
コンプライアンス意識の高まりを背景とした取り組みも多い。台風や大雪など安全運行が困難な天候時に無理な輸送指示を行った場合、法令上の責任を問われる可能性もあることから、「異常気象時の運行中止・中断等」に取り組む荷主は203社(51・4%)と全体の半数以上を占めた。

法令遵守や業務内容の明確化の基礎となる「運送契約の書面化の推進」を挙げる荷主は3割超(31・4%)の124社。昨年7月末時点の108社(29・8%)よりも16社増加した。「関係者と協力し法令遵守に配慮、契約内容を明確化」する荷主は18社(4・6%)。そのほか、運送業務を依頼する際に契約相手の「法令遵守状況の考慮」を挙げるのは101社で全体の4分の1(25・6%)に上り、40社は「働き方改革等に取り組む事業者を積極的に活用」するとして事業者のコンプライアンス遵守を後押しする姿勢を示した。

荷主の4分の1がリードタイムの延長を実施

運送業務の効率化に取り組む荷主も多い。4分の1強の104社(26・3%)が配車の負担軽減や効率的運行につながる「リードタイムの延長」を推進する。運行ルートの合理化も課題で1割以上の66社(16・7%)が「集荷先や配送先の集約など」に取り組む。

トラックバースへの「予約受付システムの導入」で荷待ち短縮に取り組むのは38社(9・6%)と約1割。ダイキン工業は予約受付システムに加え、ITを活用した車両動態管理システムを導入。配送ステータスを着荷主と共有することでドライバーへの到着時間の問い合わせを解消し、負担軽減を図る。

日野自動車は、モーダルシフトやコンテナラウンドユースに取り組むだけでなく18年6月に子会社の「NEXT Logistics Japan(NLJ)」を設立し、トラックメーカーの知見を活かした物流改善をスタート。NLJは複数の荷主や物流事業者と連携し、効率的で環境にやさしい輸送の実現に取り組む。幹線輸送では25mダブル連結トラックを活用するとともに中継地点でドライバーの交替を行い、法令遵守と宿泊勤務ゼロを実現。また、ITシステムを活用することで積み付けからドライバー交替後の荷降ろしまで一気通貫で管理する。

情報の共有化、出荷に合わせた生産も

「輸配送の共同化」には45社(11・4%)が取り組む。ダイキン工業は共同輸送と共同保管により物流プロセス全体を効率化。ADEKA、大日本塗料、DICグラフィックスは積載率向上と車両台数の削減に向け共同配送スキームを構築する。

「発荷主からの出荷情報の事前提供」に取り組むのは90社(22・8%)。大日本住友製薬は目安となる入出荷予定時刻を事業者や着荷主とあらかじめ協議の上で決定するほか、早期に入出荷物量の情報を共有化することで荷待ち短縮につなげる。松菱金属工業は納品日の調整により配車効率と積載率の向上を実施する。

「出荷に合わせた生産・荷造等」に取り組む荷主は80社(20・3%)。神戸製鋼所は製品の取引形態を踏まえ、出荷に合わせた生産、附帯作業の合理化や物流設備の改善に着手。ダイハツ九州は生産関連情報を運送会社や仕入れ先と共有し、荷待ち時間短縮や運行効率の向上を図る。医薬品のダイトは運行効率の向上を目指し、曜日波動など繁閑差の平準化を進めていく。

「宣言」「意思表明」の進捗や効果の検証は?

「ホワイト物流」推進運動は、2024年4月のドライバー職への時間外労働上限規制適用を見据え、それまでにドライバーの労働条件を改善するために24年3月末までの時限的な取り組みとして導入されたもの。あくまでも自主的な「宣言」「意思表明」という位置づけだ。時限措置終了まで3年を切り、「ホワイト物流」の進捗や効果の検証も期待される。
(2021年9月28日号)


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