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百貨店納品体制見直しへ=JAFIC/百貨協

2019.06.18

アパレル業界と百貨店業界で、 “物流危機”の深刻化を見据えた納品体制見直しへの取り組みが進み始めている。日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC、北畑稔理事長)と日本百貨店協会(百貨協、赤松憲会長)ではこうした問題意識を共有した上で、課題解決に連携して取り掛かっており、百貨店側でも「物流への意識が変わりつつある」(関淳弘・百貨協企画グループ主幹)という。

営業時間内の納品などを提案

アパレル製品は通常、早朝3時頃に百貨店ごとの物流センターで集荷し、5時頃に納品代行業者が各百貨店に納品する。しかし、百貨店のトラックバースは1店舗当たり最大でも4~5ヵ所程度。現行の体制では、同じ時間帯に1日分の商品を積んだトラックが数百台規模で押し寄せるため、待機時間は1時間に上るという。
その結果、納品代行業者によるトラックの運行効率を下げ、物流コストの上昇やドライバー不足を誘引。加えて、トラックの待機列は一般道路にまでおよび、「一般車両の渋滞要因になっている」とJAFICの遠藤孝顕事務局長は説明する。

そこで、JAFICの取引改革委員会と百貨協は昨夏、会合を開き、早朝に集中している納品時間を分散させるため、営業時間内の納品を含めた対応を協議。さらに、今年3月には取引改革委員会が各百貨店の担当者を集めて、「運送業界を取り巻く環境変化への対応」をテーマにセミナーを開催し、物流の現状への理解を求めた。

セミナー後、納品代行業者からは「リードタイムを延長してくれる可能性が出てきている」や「今年のGW期間中の休配日の事前通知に理解をいただいた」などの声が寄せられ、納品時間変更などの具体的な事例こそ出ていないが、「問題を百貨店のみなさんと共有することで、課題の解決に努めていきたい」と遠藤氏は話す。
関氏も「過去からの慣行で、現在の納品体制が続いているが、物流が置かれている現状について理解を深めることで、少しずつ今の体制が変わっていくのではないか」と展望する。

東京2020に向けて、議論を加速

両団体では今後、来年7月から開催される東京オリンピック・パラリンピックの物流体制についても議論を加速させる方針。開催期間中は首都圏で通行規制が予定される一方、アパレル製品は7月に秋冬物の納品の最盛期を迎える。さらに、製品の98%は海外生産で、そのうち8割は東京港から陸揚げされるため、オリンピックの開催前後にかけても物流に影響を及ぼす可能性が高いという。

こうした想定から、JAFICでは今年4月にオリンピック開催期間の物流体制を考えるセミナーを開催。会員らに発注のタイミングの前倒しや、秋冬物商品の納品時期を6月や9月に移行する対策などを提案した。また、百貨協とも引き続き連携し、オリンピック時期の百貨店への納品体制を研究していくが、遠藤氏は「両団体のみならず、今後は業界全体で話し合っていかなくてはならない」と指摘する。
(2019年6月18日号)


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