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「建材ラストワンマイル」構築へ=LIXIL 

2019.05.07

建材・住設機器最大手のLIXIL(本社・東京都千代田区、大坪一彦社長)は、「建材ラストワンマイル」の構築に向け、ドライバーの作業負荷軽減、拘束時間削減への取り組みを強化する。現場配送が増加している一方で、建材・住設機器に特有な長尺・重量物の配送に従事するドライバーの確保は困難になりつつある。運送会社との協業関係を確立し、物流センターや納品先でのドライバーの作業負荷を軽減することで、ドライバーの確保と安定供給の維持につなげる。

「物流・購買統括部」が物流本部機能を持つ

LIXILグループの中核事業会社であるLIXILは、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカー、トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生。サッシドア、窯業サイディング(外壁材)、金属サイディング、インテリア建材、住宅設備、エクステリアといった多様な商品を取り扱い、商材とその流通、施工、ビルダーによって納品形態が異なる。

物流組織に関しては何度かの社内機構改革を経て17年1月に、本社直轄で「物流・購買統括部」が発足し、全社を横断する物流と購買に関する横串機能部門として新しい組織体制がスタートした。

物流・購買統括部は各事業部の購買横串機能を担うとともに、物流全体の管理・企画・実務を担当する物流本部機能を持つ。物流オペレーションは子会社のLIXIL物流が担当し、鎌内浩司常務役員物流購買統括部統括部長が社長を兼務している。LIXIL物流では全国14ヵ所に物流センター、112ヵ所に通過型のTCを配備し、TCで大型車から小型車に積み替え、小口の納品先や現場に配送する。

運送会社と協業強化、「LPRO」を発足

11年以降、統合前の5社の統合・効率化による物流部門の改善を進め、14年からは事業部・営業との連携による物流SCM(サプライチェーン・マネジメント)の改善へと発展。18年4月にスタートした3ヵ年の中期経営計画では、物流部門として①建材業界の物流協業の推進②建材ラストワンマイルの構築③物流ネットワークの最適化④安定供給体制の再構築――を中期戦略として掲げている。

同社の商品は長尺・重量物もあり、物流拠点や納品先で、難易度の高い積み込みや荷下ろしなどの付帯作業を伴う。また、納品は現場配送を中心に着時間指定を要望されることもある。ドライバー不足の一層の深刻化が予想される中、運送会社との協業関係を強化するため、14年に「LIXIL運送事業者協力会(LPRO)」を発足。その活動の一環として、ドライバーの作業負荷の軽減の取り組みを本格化させている。

LPROは全国16支部・会員企業約200社で構成され、現場配送の増加や構造的なドライバー不足、長時間労働の規制強化といった環境を踏まえながら、ドライバーの顧客対応力の向上や安定した質の高い輸送力の確保、ドライバーの育成および作業負荷の軽減を目指し、各種活動を推進。これまでに荷扱い、マナー・安全、作業負荷軽減の評価メジャー、チェックシートを統一し、運用を開始した。

ドライバーの作業負荷軽減の取り組みでは、従来、物流センターの大画面掲示版でしか見られなかった出荷状況をドライバーのスマートフォンで見られるようにし、待機時間を改善する取り組みも開始。トラックの混雑を緩和する物流センターの車線増設や、伝票チェックへのバーコード導入、「重い」「大きい」「持ちにくい」商品の軽量・コンパクト化、持ちやすい形状に改善する取り組みも進めている。

ドライバーの作業を物流センターに移管

現状、物流センターで配送コース別にピッキングされた商品をドライバーが顧客別に仕分ける作業をドライバーが行っているが、今後はこれを物流センター側の業務に移管することでドライバーの拘束時間削減を目指す。また、納品先でドライバーが行っている作業実態を調査し、営業・物流の責任者から納品先でのサービス業務(邸別仕分け、棚入れ等)の削減について、改善を要望する取り組みも始めている。

システムキッチンでは、ドライバーの手積み・手下ろしの負荷をなくすため、物流センターからTCまでの輸送を対象にユニットロード化を検討。深谷物流センター(埼玉)、社物流センター(兵庫)でトライアルを開始した。ユニットロード化によりトラックの回転率が向上するとともに、積み込み・荷下ろしに習熟していないドライバーでも輸送に従事できるようになるため、選択肢を広げられる。

施工会社と協力し、着時間指定の緩和にも取り組む。システムキッチン、システムバスから着手しており、午前8時に集中する納品時間を「8時~10時」と時間帯の枠を拡大するほか、午後の納品の可能性も探る。また、工場間の幹線輸送でトラック輸送への依存度を下げるため、RORO船、フェリーを活用した海上輸送も拡大する意向にあり、清水~大分間などのルートで検討していく。
(2019年5月7日号)


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