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【3PL】EC物流協議会が一斉メール送信アプリを開発

2017.07.13

日本3PL協会(和佐見勝会長)のEC物流委員会ワーキンググループから2016年度に独立した「EC物流協議会」は、大物宅配時の「事前連絡」を購入者に一斉メール送信できるアプリを開発し、今月中をメドに実稼働する。同アプリは事前連絡のほかにも幅広い用途が見込まれるもので、協議会のリーダーとして開発を先導した丸和運輸機関では、同社で拡大を進める軽貨物便事業の連絡ツールとしても活用を検討していく。

小売店や通販などで購入した家具や家電を購入者などのもとへ届ける「大物宅配」では再配達が難しいこともあり、購入者が指定した配達予定日の前日に電話して配達時間帯のアポイントを取る方法が主流となっている。しかし、電話連絡は作業負荷が大きく、担当者のアポイント件数は1日100件に上り、繁忙期には応援も必要。最近では未登録の電話番号からの着信には出なかったり、日中は電話が通じなかったりするケースも多く、煩雑さを増していた。

そこで、EC物流協議会ではダウンロード型の一斉メール送信アプリを開発。同アプリにCSV形式の配達先リストを読み込み、「送信ボタン」をクリックするだけで、登録された携帯電話番号宛てに配達予定日時や配送連絡先、商品購入店舗などの情報が記載されたSMS(ショートメッセージ)が一斉送信される。メッセージを受け取った購入者は配達予定日時を確認し、都合が悪い場合には配送連絡先へ電話して日程を再調整する。

これにより、購入者は事前連絡の電話に出る必要がなくなる上、メッセージで配達日時を確認できるため言い間違いや聞き間違いのトラブルも防止。荷主である商品の販売会社への問い合わせ減少も見込まれるほか、外国人購入者への通知もしやすくなる。配送会社側ではアポイント作業に係る従業員の負担軽減や不満解消につながるとともに、人件費や人材募集コストの削減にも期待できる。早いタイミングで配達予定日時を確定できるため、より積載効率の高い配車を組むことも可能になるという。

物流センターの着車連絡などにも応用可能

同様のシステムは一部の大手小売企業が自社のサービス品質向上のため導入しているが、配送会社主体による開発は今回が初めてという。配送会社としては複数荷主で同一の仕組みを利用できた方が効率化効果は大きい。電話による事前連絡の煩雑さは大物宅配会社にとって長年の悩みの種だったが、個社でシステムを作るには開発費用が重く「EC物流協議会で課題を共有できたことが最適な仕組みの開発に繋がった」と秋元敏良リーダー(丸和運輸機関)は説明する。

また、複数の相手先にSMSで情報を一斉送信する仕組みは、大物宅配の事前連絡以外にも幅広い活用が見込まれる。丸和運輸機関では軽貨物便事業者らに道路混雑や集荷先の車両待機状況といったリアルタイムの情報を発信するツールとしての利用を検討。このほかにも、物流センターからドライバーへの着車時間連絡や、採用面接のアポイント通知など多様な用途が考えられるという。SMSを利用するため、協力会社など発信先が多い場合でも携帯番号さえあればメッセージを送信できることが特徴だ。

アプリは5月末に納品され、まずはEC物流協議会メンバーの丸和運輸機関、エスラインギフ、タカダ・トランスポートサービスが7月中をメドに試験導入する見通しで、朝日町運輸倉庫でも採用を決めているという。利用には3PL協会への加盟が条件だが、EC物流協議会に参加しない企業も導入可能。料金は月額の固定料金制とする見通し。

EC物流協議会は大物宅配会社約50社で構成され、各社のネットワークを持ち寄ることで全国配送を受託可能にしながら、案件ごとに各社が元請になる「コンソーシアム方式」を採用して営業面でのメリットも享受する。16年度は教育施設を設けてサービス品質を統一化させるとともに、輸入家具2件、ホームセンターの大物宅配1件を新たに受託。17年度も引き続き、営業の開拓とネットワークの構築に取り組む。

(2017年7月13日号)


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