【ズームアップ】減少続くメール便、宅配便へのリソース集中も影響か
メール便の減少が続いている。国土交通省の調査による2020年度のメール便の総取扱冊数は42億3870万冊となり、前年度から4億6322万冊、率にして9・9%の減少となった。メール便の取扱冊数は13年度の56億3772万冊をピークに、14年度から減少傾向が続いており、これでほぼ7年連続での前年割れ。20年度は冊数(個数)でも宅配便(48億3647万個)に逆転され、長期的な低迷傾向に歯止めがかかっていない。
企業の広告費削減などが影響か?
20年度の実績を詳細に見ると、主要7便すべてが前年割れ。首位のゆうメール(日本郵便)が前年度比7・5%減の32億9931万冊、2位のクロネコDM便が16・3%減の8億2603万冊となり、いずれも取り扱いを大きく減らした。なお、上位2便でメール便全体の97・3%という圧倒的なシェアを占めている。
メール便の長期低迷が続いている背景には、利用企業の広告費削減の影響やインターネット広告への移行があると推測される。とくに20年度はコロナ禍による企業収益の低迷により、その影響がより顕著になった。日本ダイレクトメール協会の調べによると、20年のダイレクトメール広告費は3290億円と推計され、前年比9・7%の減少となった。こうしたことが影響して、20年度のメール便はほぼ2ケタ減という大きなマイナスに見舞われたと考えられる。
宅配便へのリソース集中がさらに進む
ただ、影響はそれ以外にもありそうだ。大手宅配各社は、コロナ禍でeコマース宅配市場が活況を呈していることを受け、集配リソースを宅配便にシフトしている傾向がある。
ヤマト運輸では今年2月から、全国の一部地域でクロネコDM便の配達業務を日本郵便に委託する取り組みを開始している。ヤマトではその理由について「労働人口が減少する中で、将来にわたってクロネコDM便を継続的にお届けしていくため」と説明しているが、配達リソースを増加が著しい宅配分野に振り向けようという思惑が見える。
メール便は1冊あたりの単価が低く、利幅は薄い。とくに配達密度の薄い地方部ではネットワークを維持することが難しくなることが予想される。労働資源に限りがある中、今後は宅配各社とも宅配便にリソースを集中する傾向がさらに強まりそうだ。
(2021年8月31日号)