紙オムツなどの標準化、関係者連携で=国交省/トラック中央協議会
国土交通省と厚生労働省は18日、2021年度の「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」「トラック運送業の生産性向上協議会」合同会議(座長=野尻俊明日通学園理事長)の初会合をオンライン会議で開催した。
今年度は、紙オムツ・生理用品など紙加工品のパレット積載率向上を図るため、製品サイズの標準化を目指す。紙加工品は製品サイズの種類や大きさが多様なため、メーカー、卸・小売などサプライチェーン全体の関係者が参画する会議体を設立し、標準化に向けたアクションプランを策定。また、長距離ドライバーの労働環境改善に向け、中継輸送の普及促進を後押しするガイドラインを策定・公表する。
挨拶に立った国交省の秡川直也自動車局長(写真)は「本会議はトラック運送事業者だけでなく荷主企業や関係団体が参加し、物流を取り巻く課題を全体で共有できる貴重な場」としたうえで、「関係者全員の協力により取引環境の改善と生産性向上を実現していきたい」と表明した。
紙加工品の標準化は関係者全員を巻き込んで
紙加工品の標準化アクションプランと中継輸送の普及促進ガイドラインの策定・公表までのスケジュールでは、いずれも7月に関係者へのヒアリングやアンケート調査を実施。結果を踏まえて9月以降に実証実験を検討・実施し、来年1月に素案の検討を行い、3月までに策定・公表する。
紙オムツ・生理用品などの紙加工品は製品サイズが多種類に分かれ、容積勝ちで単価が低いことから手積み・手降ろしが主体。パレット化を進めるには積載率の向上がカギとなるため、製品サイズをデザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)の観点から標準化を図る。メーカー・卸・小売などへのヒアリング調査を実施するだけでなく、サプライチェーン関係者全員を巻き込んだ議論を行うため、会議体を設立する方向。
アクションプラン策定にあたっては、20年度に栃木県地方協議会が行った紙加工品輸送の効率化実証を参考にする。同実証実験では紙オムツや生理用品をパレットに積載して輸送。手積み・手降ろしでは123分かかっていた作業がパレット化によって33分と大幅に短縮できた。一方で積載率ではパレット分のマイナスが顕著となり、手荷役で82・8%だったのが、パレットでは49・3%と約半分に低下。作業時間は改善するものの積載率が大きく低下することが課題となった。
中継輸送は同業他社との連携を主軸に
中継輸送のガイドラインでは、主に同業他社間で連携し、中継輸送を実施するための方策を検討。効率的なマッチングを行うためのプラットフォームのあり方や、運行ルート・時間や輸送品目の見える化を実施する。将来的には企業の垣根を越えて物流ネットワーク上の最適なルートで貨物輸送を実施するフィジカルインターネットの時代を見据え、ユニットロードの導入につながる可能性があるスワップボディコンテナ車両やダブル連結トラックを活用しやすい運用を検討する。また、ドライバーの労働時間の適切な管理が行えるよう休憩・仮眠施設やシャワー・食事施設などの整備も促進。ガイドラインの策定作業では必要に応じて専門の会議体を設立する。
協議会ではこのほか、加工食品、飲料・酒、建設資材、紙・パルプなど輸送品目別の改善ガイドラインの事業者・荷主への浸透の取り組みや、東京都での飲料・酒の物流改善や熊本県での生乳輸送の実証実験について報告。ドライバーの労働環境改善に企業が取り組む「ホワイト物流」推進運動については10月からオンライン方式でセミナーを実施する。2年目となる「働きやすい職場認証制度」は来月から申請受付を開始し、さらなる浸透を図る。また、荷待ち時間の実態や、標準的な運賃の事業者への浸透度合いなども調査する。
改善基準告示、22年末改正、24年4月施行へ
厚労省の事務局はトラック運送業の改善基準告示の見直し作業の途中経過について報告。今年10月から、コロナ禍による貨物取扱量の変動を踏まえた労働時間の実態調査を実施する。調査結果を踏まえて急ピッチで作業を進め、22年12月までに改善基準告示を改正。1年間の周知期間を設けた後、24年4月に施行。そのほかの取り組みでは、長時間労働改善ポータルサイトの運営による啓発活動の推進や、働き方改革推進支援センターによる時短や賃金制度に関する相談事業やコンサルティング、セミナー開催などの支援事業を継続実施する。
標準的な運賃、事業者と荷主がフェアな交渉を
標準的な運賃について秡川自動車局長は「(標準的な運賃に基づく)運賃変更届出が全国的に進んできた。引き続き事業者への浸透と荷主の理解・協力を得るため注力する」と述べ、運送事業者と荷主が「フェアな立場で運賃交渉に臨むよう行政として促す」考えを示した。それを受け、全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長は「(罰則付きの時間外労働の上限規制が適用される)24年4月に向け、事業者は全力で運賃交渉を行っていく必要がある。しかしながらコロナ状況のために荷主からは『交渉に来なくてもいい』と言われるなど難航している」と現状を語った。
また、委員からはEC通販業者による「送料無料」という表現は物流への軽視につながり「適切な表現ではない」との意見があった。これについて自動車局の伊地知英己貨物課長は「送料無料という誤解を与えかねない表示をなくしていくには物流に対する消費者の理解が重要だ」と応じ、社会インフラとして機能する物流への認識を国民的に深めていく必要性を指摘した。
(2021年6月24日号)