JR貨物/21年3月期 コロナ禍で減収減益も、連単で黒字確保
JR貨物(本社・東京都渋谷区、真貝康一社長)の2021年度3月期業績は、鉄道事業の運輸収入が新型コロナによる需要低迷の影響から大きく低迷し、連結売上高で前期比115億円の減収となるなど、減収減益となった。ただ、グループ全体でのコスト効率化や不動産事業の押し上げもあり、連結・単体とも黒字を維持した。今期(22年3月期)は連結経常利益100億円を目指すなど、前々期(19年度)の水準への回復を期すが、「今年度に入っても、コロナによる需要低迷の影響が色濃く残っている」(犬飼新・取締役常務執行役員経営統括本部長)と計画を下回る厳しいスタートとなった。
鉄道ロジ事業は79億円の営業赤字に
21年3月期の連結業績は、売上高が前期比5・8%減の1873億6100万円、営業利益が74・9%減の25億2700万円、経常利益が83・9%減の14億4900万円、当期純利益が82・3%減の8億9500万円と減収減益。
単体業績も、売上高が6・7%減の1502億円、営業利益が87・4%減の10億円、経常利益が99・1%減の6100万円、当期純利益が99・8%減の600万円だった。
連結での鉄道ロジスティクス事業は79億円の営業赤字、単体の鉄道事業は90億円の営業赤字で、不動産事業による着実な利益貢献で全体での黒字を確保した。
14日に会見した犬飼氏は「マイナス要因の9割はコロナによる需要低迷であり、加えて昨年7月に九州地区で発生した豪雨、今年1月の北日本・日本海側での暴風雪など災害による影響もあった」と振り返った。グループ会社については「日本運輸倉庫、日本フレートライナーの売上げが前期を上回ったほか、グループ各社ともコスト面で柔軟な対応が進んだ」と述べた。
なお、前期の輸送実績は、コンテナが前期比9・3%減の1883万7000t、車扱が7・1%減の815万2000tで、合計で8・6%減の2699万t。コンテナでは各品目が前年実績を下回る中、積合せ貨物とエコ関連物資の2品目がプラスとなった。車扱は太宗を占める石油の落ち込みが響いた。
今期は経常100億円目標も厳しいスタートに
今期(22年3月期)の業績は、コロナ影響からの反動や、今年3月のダイヤ改正で新設した特積み事業者向けブロックトレイン、前期中に満床となった東京レールゲートWESTからの賃料収入などで、大幅な増収増益を見込む。
連結ベースでは、売上高が前期比139億円増の2013億円、営業利益が86億円増の111億円、経常利益が85億円増の100億円、当期純利益が40億円増の49億円を予想。
また、単体では売上高1638億円、営業利益98億円、経常利益87億円、当期純利益41億円を見込んでいる。
ただ、「今期に入ってからも、コロナ感染が拡大しており、当初計画を下回る厳しいスタートになっている」(犬飼氏)としており、コロナの収束時期が遅れれば、計画値との乖離が顕在化しそうだ。
なお、今期の設備投資は連結ベースで461億円(うちリース分51億円)と例年よりも高い水準での投資を計画。うち427億円分が鉄道ロジスティクス部門への投資で、東京レールゲートEAST(22年8月竣工予定)、DPL札幌レールゲート(22年5月竣工予定)の建設や、IT・DXへの投資を積極化する。
(2021年5月20日号)