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【物流会社】SGHとの協業「着々と進んでいる」=日立物流の中谷社長

2017.03.28

日立物流(本社・東京都江東区、中谷康夫社長)は、SGホールディングスとの新たな取り組みとして佐川急便との輸送の共同化に着手し、17年度内には神奈川から東海エリアまで拡大する。17日に開かれた記者懇談会で中谷社長が明らかにした。中谷社長はSGHとの連携について「16年度は2ケタ億円ほどの売上貢献を見込んでいたが、着々と協業が進んでおり、おおむね当初計画ぐらいの数字となるだろう。17~18年度には、ある程度キャッシュベースで利益が出てくる」と手応えを強調。3年内をメドとした経営統合への進捗については「(統合を)前提にはしているが、シナジーの積み上げをしっかりと見ていく」との表現に留めた。

佐川急便との協業では今年2月より、同社の幹線輸送を日立物流グループのバンテックが請け負うトライアル運行を開始。日立物流としてはバンテック保有車両の夜間活用と売上拡大が見込まれ、佐川急便側でもドライバー不足の補完と幹線輸送の安定化が図れる。隣接するバンテックグループ横浜営業所と佐川急便横浜東営業所間で試験的にスタートさせたもので、朝9時から夕方17時までバンテックの集配に使用した車両を、夜22時から朝5時までは佐川急便が江東区に構える2中継センターへの輸送に活用する。同連携は当初計画になかったもので「色々な可能性が出てきたことを再認識している」と中谷氏は強調した。

記者懇談会では注力事業の進捗についても説明。北米では昨年7月に米国ミシシッピ州に開設した「キャントンILC」(延床面積13・3万平方m)で自動車の3PL案件を稼働。サプライヤーから搬入された自動車関連部品などを倉庫内で一時保管し、ライン別に仕分けた上で、2km先の自動車工場に向けて、自家トラックで1日370運行の配送を行う。倉庫は24時間体制で庫内従業員900人が3シフト体制で稼働する。同業務はバンテックグループが日本国内で実施していた物流業務の延長線であり、中谷氏は「我々がやりたかったことが実現した形」と評価した。

重量機工事業においては、電力インフラ事業を「世界規模でビジネスチャンスになってきている」と認識。三菱日立パワーシステムズなどの業務を受託しており、長年の実績に基づくグローバルネットワークを活かしたプロジェクト輸送の獲得を図る。インドネシアでは大規模な発電所がこの2~3年で多く開設が予定されるほか、中長期的にはポーランド、ギリシャ、ケニア、ウズベキスタン、香港、タイ、バングラディシュ、さらにはBIMSTEC(ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ)加盟国の発電施設新・増設プロジェクトに注目。これに伴い、車両調達など大型投資も視野に入れる。交通インフラ事業では英国で多数の実績を持つが、アジアや中近東でも需要の拡大が見込まれるという。

国内事業では「R&Dセンタ」を立ち上げて物流に関わる新技術の検証を加速。今年1月に開設し、4月の本格稼働を控える「土浦2期物流センター」(茨城県かすみがうら市、1・1万平方m)には、『次世代省人化センター』と位置付けて最新の技術を導入する。これまでの省人化センターはTC型であり、DC型としては同社初の拠点となる。具体的には、レイアウト上確保できる最大面積で無人搬送機「Racrew」を活用するとともに、Racrewの補充品や補充後の空パレットはAGV(無人搬送車)で自動搬送。出庫時においても、ピッキング完了後のオリコンを自動で運ぶ。17年度以降は関西地方を含めて、新たなコンセプトの物流センターを開設していくという。

これらに加え、同社が中期計画(16~18年度)に掲げる「協創」のさらなる領域拡大に向けて、中谷氏は「3Dプリンターを使ったメーカーというのは、新たな提携先のひとつとして想定できるのではないか」との考えを示した。その上で、「3Dプリントは物流と製造の境目がなくなる分野であり、IoTの中で、一番見えやすいサプライチェーンの変革。実際、当社の顧客にも3Dプリンターで製造している会社もあり、そうなると倉庫は製造現場にもなり得る」と指摘した。

(2017年3月28日号)


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