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先端機器で人手不足解消や生産性向上へ=日本通運

2020.06.30

日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は技術革新がもたらす物流環境の変化や少子高齢化による労働力人口減少に対応し、さらなる生産性向上を図るため、自動フォークリフトに代表される無人型運搬機器の導入や、倉庫オペレーションの省力化をもたらす機器・システムの開発に積極的に取り組んでいる。また、顧客に最適なサービスを提案するための情報発信も強化する。持続可能な物流の維持・確保の観点に立ちながら、テクノロジーの活用を通じて人手不足への対応や生産性向上など喫緊の課題に取り組んでいる。

自動フォークリフトが省力化に貢献

同社は2019年7月に札幌支店で磁気誘導方式の自動フォークリフト(AGF)4台を導入。自動垂直昇降機(オートレーター)と連携し、夜間における出荷準備作業を無人化。それにより、年間で約3000時間相当の省力化を実現した。今年1月には静岡県吉田町の物流センターにレーザー誘導方式のAGF2台を導入。日中は自動搬送コンベアから流れてくる製品をAGFが受け取り、専用保管ラックへ自動で移動・格納する入庫作業を実施。夜間はAGFに転送された顧客の出庫データに基づき、製品を自動ピッキングし、出荷用ラックに移動する出庫作業を行う。AGFの活用で従来5人を要した業務を2人で行える。4月には山陰支店サントリー奥大山事業所で磁気誘導方式のAGF7台を導入し運用を開始した。倉庫の限定区画(約1万㎡)で入庫データに基づき、パレタイザーから搬出される製品を入庫ロケーションに移動する入庫作業を実施。約5名で行う作業量を代替する。

今後の導入に際しては、各現場の作業フローを踏まえ、AGFの活用が有効な拠点を見極めながら拡大を図る。

積収クローラーがロールボックス搬送に機能発揮

AGF以外の自走型機器の導入にも注力する。今年3月には自律移動搬送支援AGV「リモート積収クローラー」(セキシュウクローラー、トピー工業製)を2台導入。ロールボックスなどを載せて自動走行する機能を備え、クローラー式のため段差乗り越えにも高い性能を発揮する。ロールボックスは重心が高くなることがあり、重量がある場合は移動の際に転倒の恐れもあるため、積収クローラーの活用により安全確保や労働負荷の軽減をはじめ、機械化による高齢者や女性の職域拡大を通じ労働力不足に対応する。

現在、試験稼働を行いながら利便性・優位性の検証を進めている。活用場所としては国内航空貨物ターミナルなどロールボックスの利用頻度の高い現場を想定している。また、食品・日雑品の納品業務などでも機能発揮が期待される。

ロボティクスの活用でピッキングを省力化

物流センターでのピッキング業務は作業スタッフに頼る部分が大きい。そのため自動化による省力化や作業者の負荷軽減は重要な取り組みとなる。同社は18年10月からロボティクス企業のRapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス)と連携し、汎用性の高い倉庫向け協働型ピッキングソリューションの共同研究を開始。実証実験を経て今年4月、東京都大田区平和島の物流センターで協働型ピッキング支援ロボット(AMR、写真)を活用したソリューションを導入した。現在は稼働と調整を並行的に行い、秋頃には本格稼働の予定。作業時間短縮など約30%の生産性向上を見込んでいる。

作業スタッフがハンズフリーで作業を行える機能を備え、庫内レイアウトやマテハン機器を変更せずに導入が可能。AMRがピッキング対象の商品棚まで自動走行し、作業者はAMRのモニターに表示される商品をピッキングして付属の商品ボックスに収納。ピッキングリストを所持せず、荷物の持ち運びやカートを押す必要もない。AMRはロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io(ラピュタ・アイオー)」を介して稼働し、業務内容に合わせて汎用的かつ柔軟に運用できる。なお、平和島の物流センターでの導入にあたってはプラスオートメーションが提供するサブスクリプションサービス(月額定額料金制サービス)を活用。顧客は初期投資を抑え、ロボットの使用料やメンテナンス料を固定化できる。

今後、日通はロボティクス企業などと連携しながら、より高精度で生産性の高いオペレーションを提供していく考え。

最先端機器・システムのSR「NEX‐ALFA」を開設

最新機器やシステムの機能は〝百聞は一見に如かず〟だといえる。7月下旬に最先端の物流機器やシステムを実際に稼働している状態で見学できる〝ショールーム(SR)型〟最先端物流施設「NEX-Auto Logistics Facility」(NEX‐ALFA、ネックス・アルファ、東京都江東区)を開設する。同施設では実際にアパレル関連商品を取り扱い、入庫から保管・ピッキング・梱包・出庫に至る作業工程で実稼働している最新物流機器等を実際に見学できる。

労働力減少時代を迎えた日本社会において持続可能な物流を支えるには、自動化・省力化設備が必要になることから、同社では先端物流機器のショールームを活用し、顧客に最適な物流ソリューションを提案する。

同社新砂5号倉庫内の床面積2998㎡のスペースに自動倉庫システムの「AutoStore(オートストア)」、自動搬送ロボット「EVE」、無人自動フォークリフト「RACK FORK AUTO」、ガイドレス自動搬送装置「AGV」、追従型運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」を導入したほか、デジタルピッキングシステム「プロジェクションピッキングシステム」、RFIDタグを活用した検品効率化機器「RFIDトンネルゲート」などを設置。加えて、同社のグローバル標準倉庫管理システムや日通総合研究所が開発した倉庫作業分析ツール「ろじたん」など各種システムの機能も見学できるようにした。さらに、施設内には見学者向けのプレゼンテーションエリアや社内向けロジスティクストレーニングセンター、最新物流機器の展示エリアも設ける。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、見学者を迎え入れる時期は秋頃になる。見学を希望する顧客は同社営業担当者を通じて申し込む。
(2020年6月30日号)


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