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ロボット化の恩恵、コロナで実感=坂塲商店/MUJIN

2020.06.30

新型コロナウイルス感染症の拡大で、サプライチェーンには大きな”乱れ“が生じた。中でも政府の緊急事態宣言が発令されると、ドラッグストアやスーパーマーケット、ホームセンターといった小売店には日用品を買い求める購買客が押し寄せ、その物流現場には大きな負担が掛かることとなった。そうした中、茨城県内のある卸会社では2~3月の出荷量が平常月の1・5倍に跳ね上がったにも関わらず、庫内作業員の増員なく、残業時間も大幅に増加せずに商品供給を安定的に続けることができたという。カギとなったのは、一昨年末に導入したデパレタイズロボット(写真)だった。

坂塲商店(坂場辰之介社長)は茨城県水戸市に本社を置き、県内のホームセンターやスーパーマーケットなどへ日用品を中心に商品を納める卸会社。物流センターでは作業員40人が入出庫業務にあたり、一日当たり7000~8000ケースを出荷している。庫内には自動仕分け機を導入するほか、長年業務に従事するベテラン社員がそろう一方で、商品は洗剤などの重量物も多く、パレットからコンベアへの荷下ろし作業(デパレタイズ)は、高齢化する従業員への負担増が懸念されていた。

そこで、デパレタイズの自動化を検討していたところ、MUJIN(本社・東京都江東区、滝野一征CEO)の産業用ロボットコントローラを展示会で知り、商談からわずか1年足らずで本稼働に至った。物流センターにおいてはひとつのパレットに複数品種のケースが混載されるため、従来のプログラミングベースのロボットでは対応が困難だったが、MUJINコントローラでは商品の事前登録やロボット動作のティーチングが不要であり、「その場で8割方導入を決めていた」と坂場光治常務は話す。

坂塲商店の物流センターには、MUJINコントローラと安川電機製のアームロボット、オークラ輸送機による周辺マテハン設備を導入。作業員が担当していたコンベア投入口のひとつをロボット化したこともあって、大掛かりな設備変更なく稼働することができた。作業スピードは人力よりもやや劣るが、連続稼働でも疲労や身体的な負担がないことは大きな利点となっている。

何より、当初想定した以上の効果が出たのが、繁忙期におけるボトルネックの解消だ。従来、物量が増える繁忙期などは作業員が前工程であるトラックの荷下ろしや倉庫からのピッキング業務に集中してしまい、デパレタイズ要員が不足することから荷物が後ろ工程に流れず、作業全体の遅延につながっていた。しかし、デパレタイズを自動化したことで常に全体の作業が流れるようになり、残業時間を大幅に削減することができた。

新型コロナウイルス感染症に伴う物量増への対応でも同様に、デパレタイズロボットによるボトルネックの解消でスムーズに荷量をさばけ、残業や増員によるコスト増なく乗り切れた。
“人力には劣る”とされてきた作業スピードも、3Dビジョンによる視認技術の改良によって改善されており、昨年6月と今年3月の比較では1時間当たりの作業量が20~30%向上。ロボットの導入後であってもMUJINとの保守契約の中で最新の性能へアップデートできることは特長のひとつでもある。

ただ、「ロボットにも苦手なことはある」とMUJINの海野義郎営業本部長。坂塲商店の現場でも、雨などでカートンが濡れ、ロボットがコンベアへ投入する際に底が抜けてしまうトラブルがあったが、MUJIN側でロボットの力覚センサー技術を高めるとともに、現場側でも「フォークリフトによるパレット移送時には必ず庇下を通る」「在庫商品からの摘み取り時に濡れた商品を別にする」といったオペレーションを徹底することで解決に至った。

先進技術の採用に当たっては、「導入実績が増え、性能がより向上してから検討したい」と考えることも多いが、坂塲商店のように「ロボットの性能を最大限に生かす現場側のノウハウを先行して蓄積できることは、中長期的に見て大きな財産になる」と海野氏は話す。
(2020年6月30日号)


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