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【インタビュー】国際物流総合展事務局次長 寺田大泉氏

2021.03.04

3月9日~12日の日程で開催される「国際物流総合展2021」は世界でも有数規模の物流EXPO。テクノロジーの飛躍的発展に伴い、急速に進む最新機器やソリューションの進化に対応し、昨年の「国際物流総合展2020 INNOVATION EXPO」に続き、2期連続で開催される。SDGsやカーボンニュートラルの実現に向けた動きがグローバルに加速する中、ロジスティクス分野の課題解決策を見出す絶好の機会として同展への期待はますます高まっている。(インタビュアー/吉野俊彦)

最新ソリューションや製品を成功事例とともに

――多彩な展示が期待されています。見どころについて教えてください。
 寺田 これまでの国際物流総合展でもAI、IoT、ロボティクスなどを活用した省力化・省人化やマッチングシステムなど、最新テクノロジーを活用したソリューションやサービスが多数出展されており、ここ数年で数多くの導入がなされ、多くの成功事例が出てきています。今回の展示では、そうした実績を踏まえ、様々な成功事例とともに具体的なソリューションが提案されます。来場者は成功事例を併せて知ることで、具体的イメージとともにソリューションやサービスを、より一層身近になって知ることができると思います。現在猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症への対策や、リスクマネジメントに関連した関連製品・サービスの出展も多く予定されています。
また、情報発信の併催企画として、「ロジスティクスイノベーションフォーラム」を開催します。本フォーラムでは、会期4日間のなかで、「DX」「ロボティクス」「SCM」といった産業界の関心が高いキーワードのもと、先進企業から最新動向や導入事例等が紹介されます。JILSを含む主催団体、物流関連団体の取り組みを報告するセッションも設ける予定としています。ホームページより事前に登録いただければ無料で参加できます。

日本の〝ものづくりの中心〟で開催、全国へ発信

――近年の国際物流総合展は東京ビックサイトで開催されていました。今回は中部国際空港島内の「Aichi Sky Expo」(愛知県国際展示場)が会場ですね。

 寺田 本展の開催にあたっては、「東京オリンピック・パラリンピック」のスケジュール調整に伴い、開催予定地であった「東京ビッグサイト」との調整が困難を極めていましたが、そのような状況であっても物流業界に対して課題解決・相互交流の場を提供するべく、初めて東京以外の地域に場を移して開催する運びとなりました。
愛知県は自動車をはじめとして、ロボット・航空宇宙など、日本の主要産業が集積するものづくりの中心地です。製造品出荷額は40年以上、全国1位を占め、工業従事者数が全国で最も多い県です。同県での展示会実施により、関東圏だけでなく、全国各地の関係者に本展を知っていただき、ロジスティクス・物流の課題解決に向けた様々な情報をより広く発信できると考えています。

――会場の魅力を教えてください。
 寺田 「Aichi Sky Expo」は屋内総展示面積6万㎡を有する日本で4番目に大きい展示会場として2019年8月に創業したばかりの新しい施設です。最大の特徴はアクセスの良さであり、隣接する中部国際空港(セントレア)に直結しているほか、名古屋駅から特急で最速28分という陸・空双方の高い利便性が魅力です。また、約3500台分の駐車場を備えています。さらに、会期中には名古屋駅のほか、豊田駅、刈谷駅からも会場までの無料直通バスを運行します。ぜひ会場となる「Aichi Sky Expo」へ足を運んでいただき、課題解決のための製品・ソリューションを見つけ出していただきたいですね。

「バーチャル物流展」やマッチングサービスを提供

――出展企業へのサービス、来場者へのサービスとして予定している内容は。
 寺田 感染症への懸念から、来場をやむを得ず断念せざるを得ない方もいらっしゃるかと思います。そこで本展では、会場にお越しになれない方や、来場された際、十分に見学ができなかった方も、会期中・会期後にオンラインで出展者と情報交流・ビジネス交流ができる「バーチャル物流展」のシステムを稼働します。会期初日の3月9日から5月末までの期間、稼働を予定しており、WEB上で出展者の出展製品・サービス等の情報の閲覧や、関心がある出展者への問い合わせ・資料請求ができますし、会期後には、会期中に会場で行われたプレゼンテーションセミナー等の動画をオンデマンドで配信する予定です。

――開催終了後でもプレゼン内容を聴講できるのはメリットですね。
 寺田 そのほかにも、会期前に来場者と出展者がWEB上で課題の共有や当日のアポイントを取っていただくことで、会期中の円滑な商談を支援する「マッチングサービス」や、来場者がスマートフォンで利用でき、抱える課題を入力すると、その課題に対応可能な出展者のブース位置などが案内される「物流展ナビ」などのサービスを提供し、展示会を効率的に活用いただけるよう様々な支援を行います。

――今回の出展者数や来場者数などや、どの程度の規模を見込んでいますか。
 寺田 出展規模は246社で、772ブースです。来場者数としては3万人を目標に、現在誘致活動を進めているところです。

――出展者・来場者・会場スタッフのコロナ対策についてはいかがですか。
 寺田 本展では、関係者の安全を確保するため、新型コロナ感染予防を目的として作成したガイドラインに基づき、①会場への入場者全員のマスク着用義務化、②消毒液の各所設置、③会場内通路幅の十分な確保、④展示会場における換気――など徹底した対策を実施します。さらなる安全対策として、全関係者への検温や会場内でのソーシャルディスタンス確保、登録所をはじめとした人との接触がある箇所へのパーテーション、アクリル板等の設置、ラウンジやセミナー会場等、不特定多数の方が使用する場所での頻繁な消毒の徹底を行い、参加者・来場者が安心して情報交流・ビジネス交流を行っていただけるように万全の対策を講じます。

――昨年2月に開催した「国際物流総合展2020 INNOVATION EXPO」の出展者や来場者からは、どのような声が届いていますか。
 寺田 新型コロナの感染が拡大しつつある時期の開催で、企業の中には人が集まる場への参加を控える指示が出始めており、参加を断念せざるを得ない方も少なくなかったと思います。そうした中でも会期3日間で2万人を超える方にご来場いただき、活発な情報交流が行われました。開催後にアンケートやヒアリングを通じて、出展者、来場者双方から率直な感想をお尋ねしたが、難しい状況にもかかわらず展示会を開催したことへの感謝のお言葉を数多くいただきました。コロナ禍の最中ではありましたが、ロジスティクス・物流分野には、大変多くの課題が山積しており、その解決のヒントを探す上で、展示会は対面でのリアルな情報交換・関係者の相互交流を行うことができる大変重要な場であると改めて認識させられました。

ポストコロナ時代でのロジスティクス実現へ

――コロナ禍がサプライチェーンとそれを支えるロジスティクスに甚大な影響を与えています。
 寺田 ロジスティクス・物流は、新型コロナ禍以前から様々な課題を抱えています。トラックドライバーをはじめとした「労働力不足」は、日々深刻さを増し続けています。また、カーボンニュートラルの実現を政府が打ち出し、CO2削減など環境負荷低減に向けた早急な施策が求められている。これらの課題に対して何の手も打たないまま放置し続ければ、ロジスティクス・物流は求められる役割を果たすことができなくなり、我が国の経済活動そのものが停滞することは必至であると考えます。

――危機の到来を避けるため、荷主・物流事業者は何をなすべきでしょうか。
寺田 昨年からの「新型コロナ禍」により、ロジスティクス・物流は大きな変容を迫られています。ポストコロナ時代における持続可能な社会の実現のためには、なんとしても「物流を止めない」ことが必要不可欠です。非接触・非対面型物流の実現をはじめ、感染症拡大防止に努めなければなりません。加えて、深刻化する労働力不足を乗り越える方策としてAIやIoTといったツールを用いた「省人化・省力化」への取り組みが急務となっています。
また、近年の産業構造の変容を示すキーワードの1つとして、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が挙げられますが、このような切り口からロジスティクス・物流に関する課題解決に取り組める人材の育成もまた、業界の重要なテーマです。さらに、感染症対策や頻発化・激甚化する自然災害に対応するためのリスクマネジメントも、今後はますます重要となってきます。ロジスティクス、物流においても、こうした課題の解決に向けて、SDGsの17のゴールを見据え、高い視座を持った取り組みを進める必要があります。

「コンセプト2030」で未来を提示

――そのために必要な取り組みとはなんでしょうか。
寺田 JILSでは、今後のロジスティクスのあるべき姿の指針として、昨年1月に「ロジスティクスコンセプト2030」を発表しました。同コンセプトは、「2030年に向かって我々がこれから目指すべきロジスティクスの姿を描くこと」を目的として制作されたものです。日本のロジスティクス・物流に関する課題ならびに背景となる「持続可能性」から、現在の情勢を象徴する日本の営業貨物自動車輸送の未来(ディストピア)に対し、もう1つの背景である「産業構造の変容」の視点から、これからの未来のあるべき姿として、未来の「物流モデル」とそれを支える「ビジネスモデル」、およびその「社会実装」(ユートピア)として描いています。このユートピアモデルを実現するために不可欠な要素として、「7つの提言」を提唱し、それぞれについて解説を行っています。

――〝ユートピア〟へ向かうための指針が記されているわけですね。
寺田 そのように考えています。「ロジスティクスコンセプト2030」の詳細については、ぜひ当協会HPよりダウンロードしていただき、知っていただきたいですね。10年後の30年にロジスティクスのユートピアモデルを実現するためには、サプライチェーンを担う各プレーヤーが高い視座を持ち、社会的価値の最大化をゴールとする全体最適の実現に向けて一丸となって取り組む必要があると考えます。JILSとしても、業界のロジスティクス高度化を支援すべく、様々な取り組みを継続していきます。
(2021年3月4日号)


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