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2000億円投じた物流施策が進捗=楽天・三木谷社長

2021.02.02

楽天(本社・東京都世田谷区)の三木谷浩史会長兼社長は、1月28日にWeb会議方式で行われた「楽天新春カンファレンス2021」での講演において、同社が2000億円を投じて進めている自社物流構築に向けた施策について「いざとなったら自分で(物流を)やってやるという抑止力が(物流・宅配会社に対して)大きく働いている」ことを強調した。

三木谷氏は講演の中で、2018年に発生した宅配クライシスを振り返り、「ほぼ全ての物流会社の社長と、警察に逮捕されるんじゃないかというぐらいの言い争いをして激怒したのを覚えている」とコメント。「いきなり宅配の料金がそれまでの倍、場合によっては3倍になると言われ、『こんなことがあってはだめだ。いざとなっては自分で運ぶぞ』という気概を持って、2000億円の自社物流投資を決めた」と述べた。

施策のひとつである、楽天の自社配送サービス「Rakuten EXPRESS」は昨年12月時点で人口カバー率が63・5%に到達。楽天市場出店店舗向け物流アウトソーシングサービス「Rakuten SUPER LOGISTICS(RFC)」の拠点は、今年上期に稼働する「RFC中央林間」(神奈川県大和市)で4拠点体制となる。これらの施設は省人化・自動化機器を積極的に導入し、今後も拡大させる方針。さらに「RFCに加えて全国にデポ拠点も開設しており、物流を充実させている」ことを報告した。

「ただ、これだけでは完璧ではなく、どうしようかなと思っていた」と説明するのが、日本郵便(JP)との提携だ。両社では昨年12月に戦略提携に向けて合意。「JPと楽天の物流プラットフォーム、データ、JPの配送網を合わせることで、より安価で効率的な物流プラットフォームを出店店舗に提供するとともに、全体のコスト抑制のため出展店舗以外にも構築するというアイディア。ますます進化させることで店舗の皆さんの負担がないような配送を作りたい」とした。

楽天市場における送料無料ラインの「3980円以上」への統一については、すでに店舗数ベースで85・0%、流通総額ベースで89・4%が参加しており、導入店舗は未導入店舗よりも成長率が25%高いとした。この結果「『楽天の送料が高い』という声はほぼ聞かなくなった」と三木谷氏。ECにおける顧客ロイヤリティ指標であるネットプロモータースコアも13・9pt上昇したことを紹介した。

楽天市場の流通総額は昨年3兆円を突破し、昨年12月には前年同月比50%の伸長を記録した。三木谷氏は「私のなかには1・3の原則がある」とした上で、「3兆円の次は、2030年ぐらいまでに楽天市場として10兆円の流通総額を達成したい」との考えを示した。背景として新型コロナウイルス感染症の拡大を受けたDXの進展や、日本のEC化率が中国・米国の3分の1程度である6・7%に留まる実態に触れ、「流通総額は加速度的に成長しており、今後もかなり高い成長率をキープできる」と自信を示した。

楽天新春カンファレンスは毎年、楽天市場出店店舗向けに開催されており、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWeb経由で実施し、約3万ユーザーが配信を視聴した。
(2021年2月2日号)


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