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JR旅客が荷物輸送の事業化に本腰

2021.01.28

JR旅客会社が新幹線などを活用した荷物輸送に本腰を入れ始めた。すでにJR東日本は昨年10月から仙台駅~東京駅間で新幹線の空きスペースを活用した週2便の定期輸送を開始しているが、JR西日本も新幹線や在来線を使った荷物輸送を本格化することを表明。JR北海道、JR九州も佐川急便と提携し、新幹線で宅配便を運ぶ検討を進めている。コロナ禍で旅客需要が大きく落ち込む中、従来の「旅客/貨物」の棲み分けを超えた〝越境化〟が加速していきそうだ。

JR旅客各社が相次いで事業化へ

JR東日本は2017年から、地域の特産品などを新幹線で運び駅ナカの見本市などで販売する取り組みを不定期に行ってきたが、昨年10月からは仙台駅~東京駅間を定期輸送化。コロナ禍で旅客収入が大きく落ち込む中、地方創生などを名目にした従来の取り組みから荷物輸送の収益化に向けた一歩を踏み出した。

それに続いたのがJR西日本。JR東日本と連携して、北陸新幹線を使って北陸エリアの特産品などを首都圏に輸送する事業を拡大することを表明した。これまではキャンペーンと連動した不定期の実施にとどまっていたが、今後は新幹線の速達性や定時性を活かした継続的なサービス提供を目指す。荷主開拓などについてもJR東日本との間で協議を進めているという。

また、JR西日本では、JR九州とも連携し、山陽・九州新幹線を直通して九州の特産品などを関西へ輸送する実証実験も2月から開始する。新大阪駅で新幹線から荷物を降ろした後、在来線に積み替えて大阪や京都に輸送することを構想しており、早期の事業化を目指す。

新幹線を活用した荷物輸送については、JR北海道やJR九州でも検討が進んでいる。両社とも佐川急便と提携して宅配荷物を新幹線で輸送するプランを構想。このうちJR北海道では、北海道・本州間(新函館北斗駅~新青森駅)で客室内に宅配荷物を収納した専用ボックスを積載して輸送する方式で、実車検証を繰り返している。早ければ今年度内にも正式に事業化する予定。また、JR九州も昨年8月に佐川急便との間で協業についての基本合意を締結しており、九州新幹線の博多~鹿児島中央駅間の上下で車内の余剰スペース(業務用室)に宅配便を収納した専用ボックスを積載して輸送することを検討している。

「貨物新幹線」検討のJR貨物との連携は…

JR旅客各社の取り組みは、既存の物流市場から荷物を奪うというよりも、鉄道輸送の特性を活かして新たな市場を生み出そうという狙いだ。ただ、コロナ禍で落ち込んだ旅客収入を補うためには、幅広い荷主や販路の開拓が前提となるほか、荷物を集荷して鉄道駅まで運ぶフォワーダーや集配機能が不可欠。その意味で、物流事業者との連携が今後の事業の成否のカギを握っているといえる。

また、新幹線車内にある業務用室は狭く、搭載できる荷物量に限界があるため、現状のままでは大きな収益源になることは難しい。今後、荷物専用の車両をつくり、旅客車両に連結させる仕組みをつくるなど新たなスキーム構築に踏み出せるかが、事業拡大に向けたステップとなりそうだ。

その点で、JRグループ唯一の貨物専業であるJR貨物との連携が大きな焦点になっていきそうだ。JR貨物は先日発表した今後10年間の長期ビジョンで、JR旅客との連携による「貨物新幹線」の実現に取り組む考えを示した。具体的な検討はまだだが、新幹線を活用して一般貨物を運ぶ仕組みが現実化すれば、ポストコロナの新たな「運び方」として大きく花が開く可能性もある。
(2021年1月28日号)


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