メニュー

“荷主連合”で常陸那珂港活用へトライアル

2020.12.22

北関東に工場や物流拠点を有するメーカーなどが“荷主連合”として、常陸那珂港の活用に向けた一歩を踏み出す。クボタの物流事業会社ケービーエスクボタ(KBSクボタ、本社・大阪市浪速区、深井誠社長)、コマツ物流(本社・東京都港区、高橋康社長)など荷主企業20社が連携し、京浜港~常陸那珂港を内航フィーダーで接続して輸出入コンテナを輸送するスキームについて、来年2月にトライアルを行う。京浜港の補完港としての常陸那珂港の活用可能性を検証し、将来的な本船誘致への足掛かりを探る。

内航フィーダースペースをチャーター

KBSクボタ、コマツ物流など輸出荷主のほか、サントリーグループで生産・調達・ロジスティクスを担当するサントリーMONOZUKURIエキスパート、山善など輸入荷主が参加し、15~20社が“荷主連合”として常陸那珂港の活用に向けた研究を関係業界などとともに進めている。

トライアルでは、京浜港~常陸那珂港の内航フィーダー船のスペースを一部チャーターする方向性で船社などと詰めている。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で輸出入が不安定であることから、トライアル期間に輸出入のタイミングが合った荷主の貨物を対象とする。“荷主連合”に参加を希望する企業も引き続き募る。

トライアルを常陸那珂港の航路誘致にかかる調査と位置づけ、「常陸那珂港区コンテナ貨物活性化トライアル事業」の助成金に申請する予定だ。
参加企業であるKBSクボタ、コマツ物流はそれぞれ北関東地区でインランドデポを活用したコンテナラウンドユース(CRU)を展開しており、今回のトライアルでも、輸出入荷主に届けるタイミングの調整基地としてインランドデポを利用する考え。輸出入の条件が合えばCRUにもつなげる。

陸送距離や拘束時間短縮への期待も

常陸那珂港は北関東自動車道に直結しているなどの地理的優位性から、首都圏の「北側ゲートウェイ」として期待されている。陸送距離やドライバーの拘束時間短縮の観点から、北関東の荷主を中心に常陸那珂港を活用した輸出入の要望は強いが、寄港に見合う貨物がどれだけ集まるかの確証がなく、現状では本船の寄港は限られている。

東京オリンピック・パラリンピック開催時における東京港の混雑回避策としては、京浜港揚げの輸出入コンテナを内航フィーダーで接続し、常陸那珂港に海上輸送するスキームも有望視されているが、個別の取り組みでは内航フィーダーのコストも含めたトータルコストがネックになっている。
“荷主連合”の音頭をとるKBSクボタの武山義知海外物流部長は、本船の寄港と集荷について「にわとりが先か、卵が先かという議論になりがち」としたうえで、「すぐには無理だとしても、今回のトライアルを通じて、将来的に常陸那珂港に本船を誘致するための調査につながることを期待している」と話す。

現在、コロナ禍の物量減で京浜港の混雑には波があるが、景気回復時には、「京浜港の補完港として常陸那珂港を活用することで、東京港に出入りするドレージ車両の混雑を緩和し、ゲート待機時のアイドリングに伴うCO2排出量の削減、ドライバーの労働環境改善、高齢・女性ドライバーの活用に貢献できる」と展望する。
(2020年12月22日号)


関連記事一覧