JR貨物、東福山駅の新統合事務所が完成
JR貨物(本社・東京都渋谷区、真貝康一社長)は15日、東福山駅(広島県福山市)の新総合事務所(写真)を完成させた。従来、別棟だった駅事務所と利用運送事業者の事務所を一体にして高層化し、新たに創出された用地を駅のさらなる機能強化に活用する。同事業は、貨物駅が持つ“物流結節機能”の高度化などを目的とした「駅のグランドデザイン策定」プロジェクトの第1号案件。同駅を含めた約40駅がプロジェクトの対象に挙げられており、今期中には他の駅についても大まかな計画が完成する予定にある。
盛岡タでも来年メドに新統合事務所を開設
東福山駅の新統合事務所は、延床面積1000㎡の鉄骨造3階建てで、駅事務所と利用運送事業者の事務所が入る。施設内には多目的トイレやスロープなどのバリアフリー化も施して職場環境の改善にもつなげる。さらに、ハザードマップによる浸水対策も講じて災害にも対応。新事務所の開設にあわせて、駅北側用地には災害時における代行輸送トラックの駐車スペースも確保した。
これにより、従来、駅事務所と利用運送事業者の事務所が置かれていた用地1800㎡が新たに生まれることから、同所での総合物流施設の建設やトラック駐車場の造成といった有効活用策を、今後検討していく。
同駅は、福山通運が専用列車を発着させる主要駅だが、「平成30年7月豪雨」で被災し、早期のBCP対策が求められていたことに加え、事務所の老朽化も進んでいた。さらにJR西日本の設備更新のタイミングなどもあり「いち早く整備すべき」との判断に至り、プロジェクトの中でも先行的に事業着手された。
その上で、第2号案件としては盛岡貨物ターミナル駅(岩手県盛岡市)における新統合事務所の開設が予定されており、今期中には計画の詳細を詰め、来期完成を目指す。同駅も、トヨタ自動車の専用列車が発着し、日本オイルターミナルのタンクも設置される、東北の基幹駅。東福山駅と同様に、現在の駅事務所と利用運送事業者の事務所を高層化した新事務所へ統合し、新たに創出される用地を、駅機能のさらなる高度化に活用する。
駅施設の最適化を現場主導で考える
「駅のグランドデザイン策定」プロジェクトは、利便性や収益性の向上が見込める駅について、駅機能の高度化を目的に、不要設備の撤去と建物の合築、用地の生み出しとその活用方法について検討するもの。昨年度より取り組みに着手し、各支社との意見交換から選定した40駅の「優先実施箇所」を対象として、貨物駅の利便性や災害時対応力の向上、職場環境の改善といった駅施設の最適化を、現場の意見を重視しながら決めていく。
16日の会見で真貝社長は、同プロジェクトについて「今の貨物駅は基本的に平面利用で、使われていない線路などもそのまま残っており、結節機能を高めるにはどのような駅であるべきか考えていく」と説明。一方で、単に用地を生み出して有効活用することだけが狙いではなく、「利用運送事業者の利便性を高めるために、例えば、駅への入り口を変更するなどの施策もある」とした。
また、移転新設工事中にある仙台貨物ターミナル駅の例を挙げ、「新技術やITを駆使して新しい駅のスタイルを作ることも将来を見据えた新しいグランドデザインのひとつ」と指摘。さらにBCPにも言及し、「東福山駅もそうだが、災害は激甚化しており、一旦線路が寸断されれば代行輸送が必要になり、トラックの駐車スペースや留置スペースを作ることが鉄道輸送の強靭化にもつながる」と述べた。
(2020年9月24日号)