「タクシー宅配」、10月以降も継続へ=国交省
国土交通省は、9月末までの特例措置として認めていたタクシー事業者による食料・飲料の宅配業務について、10月以降も継続する方針を固めた。それに伴い、貨物自動車運送事業法第3条に基づくタクシー事業者による貨物運送の許可の取り扱いについての通達案をまとめ、8月21日から30日までの間、パブリックコメントによる意見募集を行った。今後、集まった意見等も踏まえ、今月上旬に通達を発出して申請受付けを開始し、10月1日から新制度の運用を開始する。
許可の取り扱いについては、特例措置からのシームレスな移行や、対象貨物を食料・飲料に限定することを踏まえ、申請手続きの簡素化や審査要件の緩和など弾力的に対応する。
最低車両台数は、「タクシー事業の許可に係る最低車両台数を満たせば足りることとする」とし、運送区域は発地または着地がタクシー事業に係る営業区域内に限定。貨物は原則としてトランク内に積載し、積載重量は「乗車定員数に20を乗じた重量(㎏)以内」とした。
また、旅客との混載は行わないこと、貨物運送に見合う適切な運賃設定とすること、車両は貨物自動車運送事業法に基づき届出のあったタクシー車両であること、貨物自動車運送事業法に係る運行管理者を選任しない場合は、タクシー事業の運行管理者が所定の講習を受けた上で実施すること、タクシー事業を廃止(休止)した場合は貨物運送事業を廃止または休止すること、運送中は車体前面に「貨物」の表示を行うこと――などを規定した。
許可の期限は2年で、期限後も事業を行う場合は所定の手続きを行うことで許可延長が可能になる。同法の申請に基づく許可を受けるまでの間については、特例措置の有効期限が延長される。
このほか、旅客運送と貨物運送の「かけもち」が可能な過疎地域の範囲についても拡大する。これまで「発地または着地が人口3万人に満たないもの」としていたが、新たに「人口3万人以上の市町村において、市町村の合併前に過疎地域であった人口3万人未満の区域が含まれる場合」も対象とする。
延長にあたり、トラック事業法の体系で位置づけ
タクシーによる食料・飲料の宅配は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う特例措置として4月21日から始まり、5月に入って期限が9月末まで延長された。旅客需要が減ったタクシー事業者からは好評で、すでに全国で1600社を超えるタクシー事業者が参入している。また、「新しい生活様式」の普及により利用者からのニーズも高いことから、国交省では10月以降も継続していく方向で検討していた。ただ、特例措置が道路運送法第78条第3号に基づくものであるため、制度を貨物自動車運送事業法の中で位置づけることにしたもの。
なお、国交省自動車局の祓川直也局長は「モノを運ぶのであれば、本来的にはトラック事業の手続きを踏んだほうがいいということで、10月から整理の仕方を変えていく。いつまで続けるかはコロナ次第であり、いわゆる制度の〝恒久化〟を目指したものではない」としている。
(2020年9月1日号)