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物流子会社、新たな再編の兆し?

2020.06.09

ここにきて、物流子会社の再編事例が増えている。先日発表されたSBSホールディングスによる東芝ロジスティクスの買収が大きな注目を浴びたが、それだけではなく、今年に入ってから、物流子会社をメーカー本体に吸収する事例や、物流子会社同士を統合する動きが増えている。コロナ禍で企業収益の悪化が避けられない中、今後、メーカーを中心に物流子会社を再編する動きが活発化することが考えられる。

輸送力強化のためのM&Aも

最近の物流子会社を巡るおもな再編の動きは〈表〉の通り。この中で目立っているのは、M&Aと物流子会社のメーカー本体への吸収だ。
M&AではSBSHDの東芝ロジ買収のほか、大王製紙の100%物流子会社であるダイオーロジスティクスが7月に鬼怒川ゴム工業の物流子会社ケイジー物流を子会社化する。大王製紙はトラックドライバー不足が進む中で、約70台のトラックを保有するケイジー物流をグループ内に取り込むことで、製品の安定供給体制を確立する狙い。

物流子会社をメーカー本体に吸収する動きも目立っている。ライオンは今年1月、ライオン流通サービスを本体に統合した。また、オカムラは7月にオカムラ物流を吸収する。ライオン流通サービス、オカムラ物流とも、設立から歴史が長く、物流子会社として高い実績を持っている。ライオン、オカムラとも物流子会社が担ってきた機能を本体に取り組むことで、一体運営によるSCM管理機能の強化を図る。また、電子部品メーカーのタムラ製作所も、4月に物流子会社であるタムラ流通センターを本体に吸収統合した。

グループ内の複数子会社を再編へ

メーカー企業やグループ内で複数存在していた物流子会社を統合・再編する動きも出ている。日本製鉄は4月、日鉄日新製鋼(旧日新製鋼)を吸収合併したことに伴い、日鉄日新海運(旧月星海運)を日鉄物流の子会社に組み込み、社名を日鉄物流大阪に変更した。また、化成品大手のトクヤマは10月、徳山海陸運送を存続会社としてトクヤマロジスティクスを統合。トクヤマ本体の物流企画・管理機能を強化するとともに、現業部門を徳山海陸運送が担う体制にする。

物流子会社の歴史を振り返ると…

日本特有の物流管理形態だと言われる物流子会社の存在。その歴史や流れを概観すると、高度経済成長から1980年代までに多くのメーカーや卸などが自社の物流子会社を設立し、物流子会社による物流管理が一般化した。それがバブル崩壊以降、企業の〝選択と集中〟が進む中で、物流業務のアウトソーシングが進展し、その流れの中で物流子会社の売却と3PLの台頭が進んだ。この流れは2000年代に入っても続き、リーマンショック以降に企業収益が停滞する中で、電機メーカー系物流子会社を中心にM&A事例が頻出した。

ここ数年は一転、ドライバー不足など物流持続性を揺るがす課題が表面化したことを受け、メーカー本体が物流戦略の再構築や強化を図る〝物流部の復権〟が加速。その関連から物流子会社を本体に吸収して一体運営による機能強化を図る動きが進んだ。そして今回の新型コロナによる企業収益の悪化を契機に、再び物流子会社の再編にドライブがかかるとの観測が広がっている。
(2020年6月9日号)


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