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丸和運輸機関・中計でEC常温物流、大幅下方修正

2020.06.02

丸和運輸機関(本社・埼玉県吉川市、和佐見勝社長)が5月11日に下方修正を発表した中期経営計画(2019~21年度)において、EC・常温物流事業の目標値が当初見込みよりも大幅に下がることが分かった。22日に公開された同社決算資料によると、同事業の売上目標は、昨年5月の中計策定時の619億7000万円(18年度実績比2・1倍)から24・8%ダウンの466億円(同59・7%増)へと見直された。

医薬・医療物流も下方修正、食品物流は計画値引き上げ

事業全体における中期計画の目標値は、売上高を当初の1300億円(18年度実績比51・9%増)から11・5%ダウンの1150億円(同34・3%増)へ、経常利益を100億円(65
・4%増)から13・0%ダウンの87億円(43・8%増)へとそれぞれ下方修正した。主要事業の中でもEC・物流の下げ幅が大きく、その理由を、「新規のセンター運営や幹線輸送の拡大を計画するものの、常温物流の新型コロナウイルスによる売上減少やEC宅配の拠点拡大による成長率の低下が予想される」としている。

中期計画では、大手ドラッグストア向けの物流業務などを受託する医薬・医療物流事業でも、売上高を当初計画の219億5000万円(13・4%増)を、4・3%ダウンの210億円(8・4%増)へと下方修正。今期はコロナウイルスの影響などでインバウンド需要の喪失が見込まれるものの、来期にはインバンドが正常化し、回復基調に転じるとの見通しを示した。
一方で、食品スーパーマーケット(SM)などを主要顧客とする食品物流事業は、売上目標を当初計画の450億円(24・5%増)から2・8%アップの463億円(28・0%増)へと引き上げ、新規物流センターの通期稼働や新規取引先の拡大に注力する――とした。

新卒採用数をさらに拡大、AZ‐COMも1万社目標に

今期以降の事業戦略としては、EC物流のアマゾンジャパン向け「ECラストワンマイル当日お届けサービス」で引き続き、“人財”と車両の確保を進め、車両台数1万台以上を目指す。食品物流では、食品SMの流通支援サービス「AZ‐COM7PL」を拡充。同事業では19年11月に兵庫県加古川市でマルアイ向けの低温食品物流センター(写真)を新設したほか、今年3月には延床面積20・7万㎡の大型食品物流拠点を埼玉県松伏町に建設する計画も発表した。

機能戦略では、21年度以降の新卒採用者数を中計策定当初の毎年500人から600人へと修正。20年度の採用実績は321人で、“人財”確保を急ピッチで進める。また、輸配送協力会社の「AZ‐COM丸和・支援ネットワーク」では会員企業数を30年に1万社へ増やす計画を発表。今年5月時点の会員数は1400社だが、今期中に3000社まで拡大させる。
加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)も推進。電子承認・資料のペーパーレス化やAIカメラによる手書き書類のデータ化、RPAを用いた業務自動化、Web会議などを促進しながら、物流センターの構築に必要なAI・IoTの研究活用を進める。地方自治体や企業との協定締結が進むBCP物流事業においても、ドローンを活用した輸送などを検討する。

今期予想は増収増益、売上高1000億円の大台に

5月11日に発表した20年3月期の連結業績は、売上高983億4800万円(14・9%増)、営業利益71億9400万円(23・7%増)、経常利益73億9200万円(22・3%増)、純利益48億1800万円(23・5%増)となり、前期に続いて2ケタ増収増益を達成した。

物流事業のセグメント別売上高は、EC・常温物流が376億2700万円(29・0%増)。ECラストワンマイル当日お届けサービスの受託エリアで拠点・車両台数が拡大したほか、新規3PL業務案件も受託した。食品物流は新規物流センターの稼働が貢献して394億2400万円(9・0%増)。医薬・医療物流は203億5700万円(5・1%増)となり、主要顧客であるドラッグストアなど既存取引先の新規出店や新物流拠点稼働が寄与した。

同事業の営業利益は、新設物流センターの設備や車両への投資や労働力確保に向けた積極採用に伴うコスト増があったものの、日次決算マネジメントの強化による生産性向上や積極的な事業拡大が奏功し、69億1200万円(23・3%増)と好調だった。

21年3月期の連結業績予想は、売上高1000億円(1・7%増)、営業利益73億2000万円(1・8%増)、経常利益75億円(1・5%増)、純利益48億3000万円(0・2%増)の増収増益予想。インバウンド需要の縮小や不採算荷主の撤退・業務縮小はあるが、前期稼動した食品物流センターのフル稼働やEC物流事業の継続的な拡大で既存荷主の取引が伸長。利益面でも、同一労働同一賃金や賃金アップで大幅なコスト増を、日次決算マネジメントによるコスト管理や料金改定、生産性向上で吸収する。

なお、同期のコロナウイルス影響額としては、売上高で30億円、経常利益で5億円のマイナスを織り込んだ。
(2020年6月2日号)


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