郵便法改正法案の通常国会提出を見送り
総務省は、普通郵便の「土曜配達休止」などを盛り込んだ郵便法改正案について、20日に召集された通常国会への提出を見送る方針を発表した。高市早苗総務大臣が17日の定例会見で、日本郵政グループに対して、かんぽ生命の不適正募集事案で行政処分を実施したことを理由に、法案の国会提出を見送ることを正式に表明したもの。日本郵便では労働力不足などを理由に土曜日配達休止を総務省に要望してきたが、今回の見送りにより、〝悲願〟の実現は早くても2021年4月以降にずれ込むことが確実となった。
通算3度目となる国会提出見送り
17日の会見で高市総務大臣は、郵便法改正案の通常国会への提出を見送る方針を表明した上で、日本郵政グループに対し「まずは業務改善に専念して、不利益を被られた顧客の皆様への対応に万全を期していただきたい。さらに今後は、当分の間、四半期ごとの報告を精査していく必要がある」と述べ、厳しい姿勢で臨む方針を強調した。
総務省が郵便法改正案の国会提出を見送るのは、今回で3度目。昨年の通常国会でも提出を模索したが時期尚早として見送りとなり、昨年秋の臨時国会ではかんぽ生命の不正契約問題が表面化したタイミングでもあり提出を断念した。
日本郵便の関係者は今回の提出見送りについて「行政処分を受けている身であり、当然だとも考えているが、提出法案の候補にすら上がらなかった」と語る。
日本郵便は昨年の段階で、土曜日配達休止の20年度中の実施を想定していたが、一連の不祥事で実現は早くても21年4月以降にずれ込むことになる。関係者は「仮に今年秋の臨時国会で可決・成立できたとしても、周知期間を含めれば、実現は最短でも21年4月。しかし、それすら希望的観測に過ぎない」と悲観論が占めている。
かんぽ問題の影響が長引けば、ユニバーサルサービスである郵便のサービス水準低下に対する風当たりが強まることも考えられる。所管官庁である総務省も、審議会で土曜日配達休止を〝適当〟としたものの、今後の成り行きを注意深く見ていく必要に迫られそうだ。
宅配便事業の拡大戦略に支障も
改正法案のおもなポイントは、土曜日配達を休止することで、現行週6日と定められている普通郵便の配達頻度を週5日に減らすことと、送達日数制限を現行の「差出日から原則3日以内」を「原則4日以内」に緩和することの2点。これにより、日本郵便はコスト削減を達成することで取り扱い減少が続く郵便の収益改善につなげるほか、生み出した労働リソースを成長分野と位置付けるゆうパックなど物流事業に振り向ける狙いだった。
この実現が遅れれば、ECの成長に裏打ちされた宅配便事業の拡大に制約が生じかねず、日本郵便では早期実施を望んでいるものの、かんぽ生命での不祥事によりこうした戦略に大きな狂いが生じそうだ。
(2020年1月23日号)