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【航空輸送】「日本の酒」輸出拡大へ好機

2017.06.15

日本酒やワインといった日本産酒類の輸出促進に好機が訪れている。10月1日から、訪日外国人観光客(訪日客)が酒類製造場で購入した酒類にかかる酒税の免税制度が開始されるためだ。まずは、国内各地域で“酒蔵ツーリズム”を通じた訪日客による消費拡大が見込まれるが、中長期的には日本産酒類の認知度向上による輸出促進にも期待が寄せられている。

拡大する訪日客へ「日本の酒」の魅力をアピール

中国人旅行客らが日本製品を大量に購入した、いわゆる“爆買い”はひと段落したものの、訪日外国人旅行者数の伸びは依然として堅調で、 2016年の訪日客数は前年比 21・8%増の2403万9000人(日本政府観光局)となり、初めて2000万人の大台を突破して過去最高を更新した。東日本大震災が発生した11年の622万人から比べると約8倍に達したことになる。

これに伴い、旅行消費額も大幅に伸長。16年の訪日外国人旅行消費額は同7・8%増の3兆7476億円(観光庁)で、こちらも過去最高。11年の8135億円から4・6倍に拡大した形だ。日本産酒類の輸出金額も、16年は過去最高の430億円となり、12年の206億円の2倍以上に成長。14年度の消費税免税制度拡充で酒や化粧品といった消耗品を免税対象に含めたことが、訪日客の購買意欲を刺激したと見られる。
さらなる日本産酒類の輸出促進に向けて、今回の酒税改正では、許可を受けた日本酒の酒蔵やワイナリー、ビール工場、焼酎を造る蒸留所などで酒類を購入した場合、消費税だけでなく酒税も免除されることになる。対象となるのは、日本産酒類の全品目。日本国内には約3150ヵ所(16年3月末)の酒類製造場があるが、新制度の下、各地では訪日客に「日本の酒」を体験してもらい、魅力を知ってもらいながら観光振興に繋げる“酒蔵ツーリズム”の取り組みが進められている。

輸出拡大には物流や輸出書類作成など生産者への支援が重要に

長期的に期待されるのが、酒類の輸出増加だ。今回はいわゆる「土産物」としての酒類購入を想定しての免税措置だが、「日本の酒」の魅力を知った訪日客が帰国後に小売店や外食店で日本産酒類を購入、注文すれば輸出の拡大に結び付く。

既に、海外の日本食レストラン数は拡大傾向にあり、店舗総数は06年の約2・4万店が、13年には5・5万店、15年には8・9万店へと増加。とくにアジアでの出店が顕著で13年に2万7000店だった店舗数は、15年には約1・7倍の4万5300店に広がっている(東海農政局)。また、16年の酒類輸出額も前年比10・2%増の約430億円と伸長しており、こうした動きの後押しとなる可能性は大きい。

一方で、実際の酒類製造場などでは輸出拡大への“ハードル”もある。中部運輸局が今年2~3月に掛けて実施した「中部国際空港からの農林水産品・食品輸出実証実験」では、生産事業者側で事業拡大や海外展開への意欲を持つものの、情報不足から取り組みができていないケースが多い実態が明らかになった。具体的には、海外市場の状況やニーズの把握、海外展開に必要となる取り組み、輸出関連手続き、さらには現地輸入者の選定や契約などがわからない――との声が寄せられた。

こうした実情に対し、日本産品の輸出拡大を通じて航空貨物取扱量の増加を狙う空港会社などでは、地域と連携した具体的な支援策も打ち出している。関西国際空港では、生産事業者などが「関西・食・輸出推進事業協同組合」に加盟すると、関空や日本通運、三井住友銀行、三井住友海上火災保険などが参加する「関西フードエクスポート&ブランディング協議会」による販路拡大や輸出物流、書類作成、代金決済といった支援が受けられる。昨年7月に民営化された仙台空港でも、同6月から事業者の輸出をサポートする同様の仕組みが構築されている。

政府では訪日客数を20年に4000万人、30年には6000万人へ拡大し、訪日客消費額も20年に8兆円、30年には15兆円まで引き上げる計画にある。同時に、農水産物・食品の輸出額も16年の7503億円を19年には1兆円規模に成長させる方針を定める。20年東京オリンピック・パラリンピックを前に、「おいしく安全な日本産品」の輸出拡大への好機を逃さないため、生産事業者に対する物流をはじめとした支援策の重要性が増している。

(2017年6月15日号)


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