全国事業者大会に1300人が参加=全ト協
全日本トラック協会(坂本克己会長)は2日、第24回全国トラック運送事業者大会を千葉市美浜区の幕張メッセ国際会議場で開催し、全国から1300人が参加した。坂本会長(大阪運輸倉庫)は、業界の諸課題を説明した上で、「我々は大変なインフラを担わせていただいている組織であり、この大会を機に全国の皆さんの事業の発展をお互いに誓い合おう」と挨拶。分科会、記念講演会後、改正貨物自動車運送事業法への適切な対応や「働き方改革」の実現、適正運賃・料金収受などを盛り込んだ大会決議が読み上げられ、参加者全員によるガンバローコールを行った。
現場のドライバーが自信と誇りを持てる業界に
開会にあたって主催ブロックを代表し、関東トラック協会の浅井隆会長(浅井)が挨拶。「先月の台風15号では千葉県全域で家屋倒壊や停電、断水などの甚大な被害が発生した。被災された会員、協会職員もあったが多くの方のご支援により万全の体制で本日を迎えられた」と謝辞を述べ、「この事業者大会が24年もの長きにわたって継続して開催されていることは業界の団結力を示すもので非常に喜ばしい。本日の大会を通じ、業界の明るい未来に向けて全国の会員がともに力強い一歩を踏み出せるよう祈念したい」と挨拶した。
続いて主催者として全ト協の坂本会長は、台風15号の被害に見舞いの言葉を述べた後、改正事業法について「真面目に事業を運営している事業者が正しく評価され、現場のドライバーが自信と誇りを持って『この業界で頑張ろう』と思えるような業界にするために、議員立法という手法で成案にこぎつけた。全国の皆さんの日頃からのご活躍と信頼があってこそ」と強調。7月から始まった荷主対策の深度化にも触れ、事業者から行政への情報提供を呼び掛けた。
標準的な運賃の告示制度に関し「運送原価を把握し、“標準”として示すため、行政で精度の高い設計作業を行っている」、時間外労働規制の適用と連動した改善基準告示の見直しでは、「経営を健全化するためには、とくに長距離輸送に関してどのように基準を設定するかプロジェクトチームで議論しており、各地方からのご意見をいただきたい」と語った。また、「働き方改革の要は道路」であるとし、重要物流道路制度創設に続き、道路整備やSA・PAのマスの拡大等の必要性を強調。新技術への対応にもプロジェクトで取り組むとした。
来賓の国土交通省の一見勝之自動車局長は、「トラック業界の働き方改革を進めるには、荷主との取引環境の適正化や生産性の向上を図り、物流の効率化を進めることが何より重要。昨年12月には坂本会長の強力なリーダーシップと立法府への熱心な働きかけにより、荷主との適正取引の推進、標準的な運賃制度の告示といったドライバーの労働条件改善に大きく寄与する、貨物自動車運送事業法の重要な改正が過去に例を見ないスピードで行われた」と指摘。
加えて「取引適正化の活動のみならず、災害時の緊急輸送、被災トラックへの低利融資、ドライバーへの研修などの事業に業界が取り組めるのも、ひとえに運輸事業振興交付金という安定的な財政基盤があるからにほかならない。その根拠として、平成23年、運輸事業振興助成交付金が制度化された時にも、坂本会長の突破力が大きな力として発揮された。行政としてあらためて敬意を表したい。国交省では改正事業法の適正な運用を通じ、働き方改革の実現や業界の発展が図られるようしっかり取り組む」と強調した。
なお、2つの分科会のほか記念講演会ではいすみ鉄道前社長の鳥塚亮氏が「廃線の危機からの脱出~いすみ鉄道の復活秘話」をテーマに講演。「ムーミン列車」「昭和の国鉄型ディーゼルカー」の導入など世界観の提案にこだわった“プロデュース”による、知名度アップや地方創生のエピソードが紹介された。また、大会ではトラック輸送振興顕彰「鈴木賞」の贈呈式が行われ、坂本会長から受賞者の岐阜県トラック協会に対し表彰状が手渡された。
(2019年10月8日号)