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「改正事業法に〝魂〟入れる」=国交省・一見勝之自動車局長

2019.08.01

国土交通省の一見勝之自動車局長は7月26日、就任後初となる会見を開き、今後の自動車行政の方針として「安全・安心」の実現をはじめ、自動運転など自動車技術開発の推進と地域の交通手段の確保を掲げた。所管するトラック運送事業では、政府行動計画に基づき、ドライバー不足対応と生産性向上へ向け、全力で取り組んでいくと述べた。具体的には改正貨物自動車運送事業法に盛り込まれた施策の実施や「ホワイト物流」推進運動の展開を進める。一見自動車局長の会見趣旨は次の通り。

「安全・安心」の実現が自動車行政の根幹

22日に軽井沢スキーバス事故慰霊碑での追悼式に参加した。亡くなった方々への献花の折には胸がふさがれる思いをした。あのような悲惨な事故を二度と起こしてはならないと強く念じた。全ての自動車行政の基本となるのは「安全・安心」の実現だ。これが最重要課題であり、検査制度や環境対策、保険制度、事故対策など様々な行政の取り組みはそのためにある。運送業でいえば荷物を有償で運ぶ緑ナンバーのプロフェッショナルによる輸送が重要であり、確かな運行管理を求め、行政によるしっかりとした監査も実施していく。

次に重要なのは、自動車技術開発の推進と地域での交通手段の確保だ。技術開発では自動運転技術が中心だが、2065年にはわが国の人口が8800万人に減少すると推計されており、人口減社会での生産性向上には自動運転車の活用が不可欠であり、安全性の確保にも有効だ。また、国連において日本が中心になって自動運転技術の世界基準づくりを推進しており、わが国の技術を標準化し、海外へ普及させることで外貨獲得にもつながる。トラックの自動運転では経済産業省とも連携し、隊列走行の実証実験を行っている。また、道の駅を中心としたラストマイルでの実証実験も進んでいる。今後も安全確保を最優先としながら実用化に取り組んでいく。

地域の交通手段確保では、地方での〝足〟の確保など定住者向けの施策とともに、観光客誘致を含めた交流人口の拡大が重要だ。自動車局と公共交通・物流政策審議官部門とが連携し、公共交通の維持・確保に取り組む。

長年の商慣習の見直しが重要テーマ

トラック事業では「安全・安心」の確保とともに、ドライバー不足への対応が喫緊の課題であることは言うまでもない。昨年5月に策定したドライバーの長時間労働是正や取引環境改善、生産性向上に向けた政府による行動計画に基づき、諸施策を実施していく。

2024年4月から時間外労働上限規制(960時間)が適用されるが、もはや〝待ったなし〟の状況だ。上限規制適用の直前になってから当局が業界に対して進捗を問うようであってはいけない。残業時間を減らしていくための事業者の方策や、それに協力する荷主の取り組みが段階的に前進していくように行政としても手を打っていく。今秋に政府行動計画のフォローアップ会議を開催するが、そこでは施策の振り返りと、さらなる進展に向けた協議を行い、実効性をさらに高めていく。

今年度から本格スタートした「ホワイト物流」推進運動では、荷主や消費者である国民にも参加していただき、課題に取り組んでいく。トラック運送業でのドライバー時短に向けては荷主業界・物流業界の関係者から問題点を聴き取り、施策を打っていく。荷主の理解・協力による長年の商慣習の見直しが今後の重要なテーマとなる。同運動に賛同する荷主は現在130社を超えているが、今後さらに増えていくことを期待している。

荷主勧告の手前で「働きかけ」を行う

昨年末の貨物自動車運送事業法の改正では、荷主対策の深度化が重要な柱となっている。従来からの荷主勧告制度では、事業者が違反行為を起こした後に、荷主に対するアクションがとられる手順となっていた。今回の改正事業法の大変よくできているところだと思われるが、新たな制度では違反行為が生じるおそれのある段階で荷主に対して改善への「働きかけ」が行えるようになった。協力要請や警告・勧告へ至る前の段階で荷主は改善策を講ずることができる。

行政として荷主勧告を行わなくなるという意味ではないが、改正事業法での制度を活用していく。今後、制度にどのように〝魂〟を入れていくのかが重要であり、しっかりと取り組んでいく。事業者と荷主の双方から事情を聴き、制度の趣旨に則りながら、全体の利便性も見極めつつ対応を図っていく。
(2019年8月1日)


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