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食品メーカーに物流への理解訴え=KRS西尾社長

2019.07.11

「物流会社が何に困っているか、しっかりとメーカーに伝えていきたい。このままだとメーカーがどんなにいいものを作っても届けられなくなる」――キユーソー流通システム(KRS、本社・東京都調布市)の西尾秀明社長(写真)は、5日に開かれた2019年11月期第2四半期の決算説明会で、こう語気を強めた。同社が事業展開する食品物流業界においてもドライバー不足や運送費の上昇は深刻化しており、西尾氏は「食品業界と一緒になって変えていく必要がある」と物流危機への理解を求めた。

「ひとつでも改善してもらうことが大事」としてメーカーに要請する対策の一例が、梱包仕様の統一だ。食品業界ではパレットこそT11サイズが主流だが、そこに積むカートンの仕様は統一されておらず、「共同配送時などに非常に効率の悪い積み方になっている」。そこで、梱包の規格をある程度揃えられれば「最適な積み方ができる上、自動化にもつながる」と西尾氏。さらに、「将来的に荷物を取ればどこに何が積んであるか分かるような時代になる」とし、その実現に向けたバーコード位置の標準化も呼びかけた。

また、常温加工食品などで見られる「ミルフィーユ出荷」についても言及。1パレットに少量のワンアイテムを載せた状態で出荷する形態で「本来10t車に積むパレットは16枚で済むのに、今は最大で130枚に上ることもあり、それで荷物がスカスカだと載せられる荷物の重量は5tぐらいになってしまう」と窮状を訴えた。パレタイズ化はドライバー拘束時間の短縮に必要な取り組みでもあるが、「パレットでスムーズに降ろせることは間違いないものの、積み込みには3時間ぐらい掛かっている。こんなことをしていたのではドライバーの数ばかりが必要になる」と警鐘を鳴らした。

災害時における無理な納品要請にも触れ、昨年の西日本地域を襲った台風21号では、荷主からの強い要請を受けてトラックを走らせたにも関わらず、納品先拠点では「社員の安全確保のため」として全員が帰宅していた例を紹介。西尾氏は「食品を使命感を持って運ぶことは何より重要だが、台風の中走っているトラックを見たら『ブラック』だと言われ、ますます人材は集まらなくなる」と指摘した。

その上で、「勇気を持って計画運休をさせていただくという話をメーカーには伝えている」と同氏。KRSでは、ウェザーニューズ社と提携して全国118の高速道路などを細分化した303地点の詳細な気象情報を常に把握した上で、納品の可否を荷主企業と調整できる体制を整えており、今月発生した鹿児島の大雨災害でも大きな影響が出なかったことを報告した。

今年のGW10連休にも実施された前々日受注については「キユーピー以外にも理解を得ている」とし、とくにGW後半は「拍子抜けになるぐらい荷物が動かず、結果としてトラックが余った。物流が大変だと理解いただいた証拠」と振り返った。前々日受注や隔日配送は食品物流業界で徐々に取り組みが広がっているが、「抵抗も非常に大きい」のが現状。西尾氏は「まずは常温品からスタートし、大手を中心に理解を求めながら、中小規模のメーカーに対してもお願いしていきたい」と展望した。
(2019年7月11日号)


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