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「荷主対策の深度化」今夏スタートへ

2019.06.25

改正貨物自動車運送事業法の柱のひとつである「荷主対策の深度化」が今夏スタートする。最大の変更ポイントは、荷主への「働きかけ」が可能になることだ。これまでの制度では、トラック事業者による法令違反行為が実際に起きた後でしか荷主に対するアクションを起こせなかったが、今回から新たに荷主が違反行為に関与している〝疑い〟がある段階から働きかけが行える。国交省では、「違反の〝手前〟の段階からの対応が可能になることで、抑止効果が期待できる」(自動車局貨物課)と話す。また、荷主の「違反原因行為」の該当事例として、台風などの異常気象時に運行を強要する行為も追加される見通しだ。

早期の動き出しによる抑止効果を期待

従来の荷主勧告制度では、あくまでトラック事業者に法令違反が起きることが前提となっていた。2017年7月からスタートした制度では、トラック事業者に法令違反があった場合、その荷主に対し「協力要請」を行い、違反行為に主体的ではないものの荷主の関与があった場合は「警告」を発出。さらに、荷主による指示など主体的な関与が認められた場合や、警告から3年以内に同様の事案が再発した場合に「荷主勧告」が行われていた。

同制度のもとでも一定の成果は出ていた。17年7月からの2年間の実績を見ると、荷主勧告こそないものの、協力要請の発出件数は200件を超えているほか、見直し以前はわずか2件だった警告の発出も、この2年間で6件を数えている。

今夏にスタートする新制度では、これに加えて、荷主が違反行為に関与している〝疑い〟がある段階から、国交省や経産省、農水省と協力して荷主に理解を得るための〝働きかけ〟を行えるようにする。これにより、早い段階から行政が関与できるようになり、一定の抑止効果が期待できる。さらに、新制度では独占禁止法の不公正な取引方法に該当する事実が判明した場合、公正取引委員会と連携することも可能となったため、荷主はより厳しい社会的制裁を受ける可能性もある。

悪天候時の運行強要も違反原因行為に

また、新制度では、荷主の「違反原因行為」に新たな事例を追加することで、さらなる明確化を図る。これまでも、過労運転防止義務違反や過積載運行を招くおそれのある行為、最高速度違反を招くおそれのある行為などが違反原因行為として規定されてきたが、今回は新たに「台風や大雨といった異常気象時など、安全運行の確保が困難な状況で運行を強要する行為」も事例として追加される見通し。このほか、例えば2マンでなければ運行できない長距離輸送において、運送会社が1マンでしか運行できない状況を知りながら輸送を依頼するといったケースも、改善基準告示に違反するおそれのある行為として違反原因行為の対象となる見通し。

国交省では「新制度がスタートする前に、どういう行為がルール違反につながるのかを、荷主に理解してもらうことが重要だ」(貨物課)としている。

裏付けのある正確な情報提供が不可欠に

貨物課によると、新制度のもとでの荷主に対する〝働きかけ〟は、今夏に予定される制度施行後に収集した情報に基づいて行う予定で、現在収集している情報をもとに働きかけを行うことはないとしている。そのため、「制度が夏頃にスタートしても、実際の動き出しは少し先になる」という。

また、〝疑い〟がある段階からの動き出しが可能になるため、〝タレこみ〟的なあやふやな情報ではなく、しっかりとした裏付けのある情報とその精査が不可欠になる。このため、国交省では今後、関係省庁や地方運輸局、適正化実施機関、運送事業者からの情報提供など情報収集を強化していく考え。
(2019年6月25日号)


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