SGホールディングスの新社長に佐川急便の荒木社長
SGホールディングス(SGH、本社・京都市南区、栗和田榮一会長)は1日、同社社長に佐川急便の荒木秀夫社長が就任する人事を発表した。同日開催の定時取締役会で決めたもので、就任は4月1日付。町田公志社長は同日付で取締役に退き、6月に開催する株主総会後に取締役を退任する。また、荒木氏の後任となる佐川急便の社長には同社取締役の本村正秀氏が昇格する。
同日開かれた会見で荒木氏(写真右)は「グループ全体のリソースを最大限に活用するとともに必要な投資を行っていく。物流は社会インフラとして不可欠のものであり、全てのステークホルダーに必要とされる企業であることが我々の使命だ」と抱負を述べた。町田氏(写真左)は「物流環境の多様な変化に対応し、スピーディーな経営判断を下せる人物として荒木氏を後任に選んだ。新たなグループの成長を荒木氏に引っ張っていってほしい」とエールを送った。
会見要旨は次の通り。
町田 2015年3月21日より社長を勤め、社内体制の強化・充実を実現した。17年12月に東証1部へ上場し、マーケットから一定の評価をいただくとともに、適正料金収受を継続し、業績も成長した。19年4月より中期経営計画の第2段階「Second Stage 2020」がスタートし、多様な顧客ニーズに対応し、サービスを進化させていく。複雑化する物流事業の本質を見極める力が経営にはますます必要になる。変化していく事業環境で新たなSGHグループを引っ張る人材は新しい物流のあり方を創造できる人材であることが望ましいと考え、荒木氏を次の社長としてグループを託することにした。これからは荒木氏の下で新たなグループとして成長していくと確信している。
荒木 グループの社長というバトンの重みを感じ、重責に身の引き締まる思いだ。期待に沿えるよう責務を全うしていく。物流は社会インフラとして不可欠な事業に成長している。社会の公器として、全てのステークホルダーに必要とされ続ける企業として存続していくことが当社に課せられた使命だ。13年に佐川急便の社長に就任したが、その間、適正運賃収受によりグループの収益性向上に取り組むとともにグループ横断型のロジスティクス・プロジェクトチーム「GOAL」を発足させたほか、顧客に最適な物流ソリューションを提供する「TMS(Transport Management System)」を提案してきた。長時間労働の抑制にも着手し、短時間でも働ける環境の整備やダイバーシティの観点から女性をはじめとする多様な方々が働ける労働環境へと改善を図っている。
当社グループのデリバリー事業の強みは佐川急便を中心とした企業間物流だが、我々が闘うフィールドはここにある。「from B」というコンセプトでより川上への営業も強化する。一方、グローバルビジネスでも戦略的拡充を図り、長期経営ビジョンであるアジアを代表する総合物流企業グループとなるための取り組みを進めてきた。今後はグループ全体を俯瞰的に見渡し、経営リソースを最大限に活用するとともに必要な投資を積極的に行っていく。
――社長交代へ至った経緯は。
町田 新中計の「Second Stage 2020」の策定に昨年8月から取りかかり、各事業会社の幹部と話し合う中で「GOAL」や「TMS」などソリューション提供のさらなる進化が必要だと考え、その推進には物流・ロジスティクス事業のエキスパートがグループを牽引すべきだと痛感した。そうした思いから昨年12月末に荒木氏と個別に話す中で「次の社長をやってほしい」と伝え、今年1月末に承諾してもらった。
荒木 最初に話を聞いたときは驚くとともに、大きな所帯であるグループの経営は私の器では到底なしえないと考え、お断りした。しかし今年に入ってから町田社長と話し合う中で、グループ全体の事業発展のために全力を尽くそうと考え、就任を決意した。
町田 輸送ネットワークの効率性とコスト優位性を高めるには、ますますスピーディーな判断が必要となってくる。AIやIoTの活用や、ロボティクスの導入を検討しているが、そこでは瞬間、瞬間の経営判断が必要だ。その時に私では少し判断が遅れるかもしれないという懸念をこの半年間持っていた。荒木氏ならば、ぐいぐいと引っ張っていけると信じている。
――今後どのようなリーダーシップを発揮していくか。
荒木 お客様だった荷主企業が物流事業を始める場合や配送専門のデリバリー・プロバイダーの出現など、現在の事業環境には大きな変化が出てきている。そうした動きにスピーディーに対応した経営を行っていく。(リーダーシップについては)現在、佐川急便の企業風土変革を進め、成果が表れてきているが、社内連絡が密で、報告をしやすい社風が重要だと私は考えている。グループ全体でも風通しのいい組織・職場にしていきたい。SGH社長就任を決めた際には、栗和田会長から「そういうことだから頼むぞ」と声をかけていただいた。
――日立物流との連携やグローバル戦略についての考えは。
荒木 現時点はシナジー効果を検証する段階だが、今後は方向性を維持したまま、より良い形での連携実現を目指していく。グローバル戦略はまだ公表するに至っていないが、グループ化したスリランカのフォワーダー「エクスポランカ社」が欧米、インド・中東、アフリカなどに広いネットワークを持っており、同社を中心としたフォワーディング事業がひとつの軸となる。また、東南アジア各国の現地法人や「GOAL」が取り組んでいる日系企業による日本向け製品輸送サービス「スマートインポート」を拡大する。
一方、国内では、江東区新砂で全国への輸送ネットワークの拠点となる佐川急便の中継センター機能と倉庫機能を併設した大型拠点を建設する「Xフロンティアプロジェクト」を進めている。20年8月に竣工する予定で、1000億円規模の投資だ。今後も国内外において必要な投資を行っていく。
――株価に表れる企業価値についてどう考えるか。
荒木 栗和田会長や町田社長からもよく言われるが、株価だけを意識するのではなく社会的責務も踏まえた経営をしていくことが重要だ。
町田 株価は企業価値の指標のひとつであり、常に意識している。企業価値を自覚しながら事業を進めることは必要なことだと認識している。
――佐川急便の新社長となる本村氏への期待は。
荒木 本村氏は佐川急便の専務職や他の事業会社の社長職も経験があり、内外から佐川急便を見る視点を持ち、これまでのことも知っていることから適任だと判断して私から推薦し、町田社長に承認していただいた。これからは本村氏の采配だが、物流の川上や海外を見据えた営業強化など、企業間物流を軸に事業経営を行ってもらいたい。
荒木秀夫氏(あらき・ひでお)1956年1月1日生まれ。63歳。神奈川県出身。82年10月東京佐川急便(現佐川急便)入社。2000年12月佐川急便執行役員。06年6月同社取締役執行役員。09年4月佐川グローバルロジスティクス(現SGHグローバル・ジャパン)代表取締役社長。11年6月SGホールディングス執行役員ロジスティクス事業担当。12年1月佐川急便専務取締役執行役員営業担当。同年3月佐川引越センター(現SGムービング)代表取締役社長。13年2月佐川急便代表取締役社長(現任)。14年6月SGホールディングス取締役デリバリー・ロジスティクス事業担当(現任)。18年4月ヒューモニー(現佐川ヒューモニー)取締役(現任)
(2019年3月7日号)