佐川急便、宅配便運賃を2年連続で値上げへ
SGホールディングスグループの佐川急便(本社・京都市南区、本村正秀社長)は10月27日、「飛脚宅配便」の届出運賃を2024年4月1日から値上げすると発表した。平均運賃改定率は7%。同社は今年4月1日にも平均8%の値上げを実施しており、2年連続での値上げとなる。同日、2024年3月期第2四半期の決算説明会が開かれ、SGホールディングスの川中子勝浩取締役(経営企画担当)は「2030年の輸送力不足をはじめとする構造的な課題は1年で決着がつくようなものではない。今後も都度都度の状況を見ながら、適宜、運賃の見直しを判断していくことになる」と述べた。
値上げで協力会社、従業員の待遇改善へ
同社は今年4月、「2024年問題」への対応やパトーナー輸送会社の取引単価の引き上げ、従業員の処遇改善などの原資として、「飛脚宅配便」の届出運賃について平均8%の値上げを実施。しかし、その後もインフレに伴うエネルギーや施設、車両の価格高騰などが続いているほか、2030年に日本全体の輸送力が34%不足するという構造的な課題に対処するためには、長期的かつ継続的な労働環境改善が必要になるとして、2年連続で届出運賃の改定に踏み切ることを決めた。
改定率は、飛脚宅配便(飛脚クール便含む)が平均7%、飛脚特定信書便が平均5%、国際宅配便が平均6%で、このほか飛脚クール便付加料金(対象は140サイズのみ)を220円引き上げる。
これにより、来年4月1日以降は、飛脚宅配便を関東から関東に送る場合、60サイズが現行の970円から1040円に、100サイズは1610円から1630円、140サイズは2100円から2310円に改定される。
届出運賃の改定を受け、企業など大口顧客との間の特約運賃についても今後、個別の改定交渉を本格化していく。
決算説明会で川中子氏は、2年連続での運賃改定に踏み切った背景について「足元のインフレによる諸々のコスト上昇と、中長期的な物流業界における構造的な課題への手当てが必要だった。持続可能な物流サービスを維持していくため、今後も適宜、運賃を見直していく」との考えを示した。また、従業員の待遇改善として今年度については平均3%後半の賃上げを行ったことを明らかにした上で、「来年度についても(賃上げを)検討している」と述べた。
24年3月期2Q業績は2ケタ減収減益に
SGホールディングスの24年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比14・4%減の6433億7800万円、営業利益が39・7%減の386億6600万円、経常利益が41・0%減の392億3700万円、純利益が51・3%減の252億7600万円となり、2ケタの減収減益となった。物価上昇による消費支出の弱まりを受け、宅配便の取扱個数がBtoB、BtoCともに減少したことに加え、エクスポランカ社を中心とした海上・航空フォーワーディング事業が物量・運賃ともに低調に推移したことが響いた。
セグメント別では、デリバリー事業の売上高が5049億2000万円(前年同期比2・4%減)、営業利益345億3400万円(21・3%減)。宅配便の取扱個数は6億7900万個(2・9%減)と前年割れになったものの、平均単価は今年4月の運賃改定や顧客との個別交渉などにより前年同期から3円アップの645円となった。単価アップに伴う増収効果は23億円あったものの、個数減による減収が128億円あった。
ロジスティクス事業は、売上高が1063億3800万円(48・0%減)、営業損失が16億4000万円(前年同期は145億1600万円の黒字)。米国の景気低迷などで海上・航空フォーワーディングが低調だったほか、海上・航空運賃の底這いが継続。エクスポランカ社の売上高は前年同期比982億円減の520億円にとどまった。
24年3月期通期の連結業績見通しは、売上高、各段階の利益とも大幅に下方修正。売上高は1兆3400億円(前期比6・6%減)、営業利益は915億円(32・4%減)、経常利益は925億円(32・9%減)、当期純利益は615億円(51・4%減)を見込む。
デリバリー事業については、平均単価が前期比5円アップの648円を見込むほか、宅配便の取扱個数も下期は若干の持ち直しにより年間で1%減の14億個を予想する。川中子氏は「宅配便は昨年秋から前値割れ傾向が続き、今年度上期のマイナスで推移したが、下期は昨年後半のマイナスから一巡したこともあり、力強さはないものの若干のプラスに転じる」との見通しを述べた。
(2023年11月2日号)