メニュー

郵便法改正案、今国会への提出見送り=総務省 

2019.02.19

総務省は、普通郵便の「土曜配達休止」などを盛り込んだ郵便法改正案の今通常国会への提出を見送る方針だ。現在、郵便法で定められている普通郵便の配達頻度は週6日。これに対し、日本郵便は人手不足や働き方改革を理由に、土曜日を休止して「週5日」にすることを求めている。同社は当初、改正案を今国会で成立させ、2020年4月からの実施を求めていたが、所管する総務省は、統一地方選やG20、参院選など国会日程がタイトなこともあり、今国会への提出を見送る考え。これにより、20年4月からの実施が遅れることが避けられない情勢となっている。

戦力をゆうパックなど物流分野に再配置

郵便のサービス水準の見直しは現在、総務省の情報通信審議会の郵政政策部会・郵便局活性化委員会で検討作業が続いている。
日本郵便の主な要望は2点。ひとつは、普通郵便の配送頻度を現行の週6日から週5日に減らすことで、具体的には土曜日の配送休日にすることを求めている。二つ目は、普通郵便の送達日数制限を現行の「差出日から原則3日以内」から1日繰り下げること。

これにより、土曜日に出勤している約5万5000人の配達員のうち約4万7000人の再配置が可能になる(残り約8000人は速達郵便などに対応)ほか、送達日数の繰り下げで、深夜に郵便の区分作業を担当する社員8700人のうち5600人分の再配置が可能になるとしている。
日本郵便では、これらの人的リソースを成長分野である「ゆうパック」など物流分野に振り向けることで、荷物分野で顕在化する人手不足の解消を図るとともに、ECの拡大などでさらなる成長が見込まれる同分野での事業拡大を図りたい考え。

タイトな国会日程もあり、提出を見送り

日本郵便では当初、こうしたサービス水準の見直しを含む郵便法改正案を今通常国会で可決・成立させ、一定の周知期間を経て20年4月から実施することを想定していた。

しかし、所管官庁である総務省では、郵便法改正案の今国会への提出を見送る方針を固めたようだ。理由のひとつが、国会日程。今年は会期中の4月に統一地方選、新天皇の即位による10連休、6月に大阪で開催されるG20サミットがある。さらには、7月には参院選があるため、会期延長は難しい。
このほか、総務省の提出予定法案も多いため、「優先順位からみても、郵便法改正案の提出は見送らざるを得ない」という事情もある。また、「参院選前にサービス水準を落とす議論は避けたいとの思惑もある」との観測も出ている。

そうなると、法案提出は今秋に開催される臨時国会までずれ込むことになりそうだが、臨時国会も会期が限られているため、提出できるかどうかは流動的。仮に臨時国会で成立となっても、一定の準備や周知期間などが必要なことから20年4月からの実施は難しく、「半年から1年程度遅れる」(関係者)との見方が強まっている。

日本郵便の〝悲願〟への今後の反発は?

インターネットなど通信手段の多様化から取り扱い減少が今後も避けられない郵便物。さらに、労働力不足や働き方改革への対応などが加わり、現行のサービス水準を維持することが難しくなっているのは事実だ。その点からも、現有する人的リソースを成長分野である物流分野に振り向けることは日本郵便の悲願とも言える。
親会社である日本郵政の長門正貢社長は1月末の会見で、「今後、安定的に郵便サービスを続けていくためには、現在の労働環境の改善を図る必要があり、ユニバーサルサービスの内容にも踏み込んだ抜本的な業務の見直しが必要。一部、郵便法改正案の今通常国会への提出が見送られるとの報道もあるが、当社としては、是非とも実現したい見直しであり、できるだけ早期の実施を希望することに変わりはない」と述べている。

日本郵便の関係者は、今回の見直しについて「今のところ、それほど大きな反対などはない」と一定の理解を得ている点を強調しているが、事実上独占している郵便のリソースを削り、競争分野にシフトさせる方針に反発が強まることも予想される。
(2019年2月19日号)


関連記事一覧