経産省が改正省エネ法の説明会を開催
経済産業省資源エネルギー庁は10、11日の両日、東京都内で改正省エネ法の説明会を開いた。とくに、11日の荷主向けプログラムでは250人が参加し、講演終了後の質疑応答でも会場から多くの質問が寄せられるなど、荷主企業らによる制度改正への関心の高さが伺えた。
荷主向けプログラムではまず、改正省エネ法の検討を続けてきた省エネルギー小委員会のメンバーで、荷主判断基準ワーキンググループの座長を務めた流通経済大学の矢野裕児教授が、同法改正の背景を説明。続いて、資源エネルギー庁の省エネルギー課の田中宏和課長が改正省エネ法の具体的な運用を解説した後、参加者からの質問に答えた。
管理統括制度では柔軟な運用が可能に
今回創設された「連携省エネルギー計画の認定制度」では、認定を受けた事業者は企業間で連携して取り組んだ省エネ量を、計画に参加する企業間で分配して報告できるようになる。事業者間における物流拠点の共同化や共同輸配送などが代表的な事例となり、従来は、輸送を集約(委託)した企業側のエネルギー使用量のみが減少することになっていたが、新制度ではこのエネルギー使用量を集約された企業側も輸送量に応じて按分できるようになる。実際の定期報告書には、連携時の消費量と非連携時の消費量の両方を記載することになるという。
併せて新設された「認定管理統括荷主制度」は、一体的に省エネ取り組みを行う企業グループの親会社が、子会社や関連会社などの定期報告や中長期計画を一括で提出できるようになるもの。報告者となる親会社単体が特定荷主である必要はない。また、たとえば「グループ内の特定荷主に該当する子会社のみの報告をまとめ、特定輸送事業者は個別で報告する」などの運用も可能。各子会社の算出方法がトンキロ法と燃料法――など異なる場合も、計算方法をそろえずに各社の数字で提出できるという。
「2号荷主」定義の具体的な要件を明示
今回の改正では荷主の定義が「貨物の所有者」から「輸送の方法等を決定する事業者」へと見直された。その上で、「貨物輸送事業者との契約等により貨物を輸送させている事業者(1号荷主)」と、貨物輸送事業者と直接輸送契約を結んでいなくても、貨物輸送事業者に貨物を運ばせる事業者との契約で「当該貨物の輸送方法等を実質的に決定している事業者(2号荷主)」も荷主に含まれることになった。2号荷主の該当要件は「①輸送モード、②受取日時、③受取場所――の全て決める場合」であり、メーカーが物流子会社などへこれらの指示を明確にした上で輸送を委託している場合も、メーカー側が2号荷主として定義されることになるとした。
荷主の定義については、「荷主が決定した輸送方法の下で到着日時等を指示できる貨物の荷受け側の事業者」を新たに「準荷主」と規定し、省エネへの協力を努力義務として求めるとともに、その推進に向けた事例を取りまとめた「準荷主ガイドライン」も作成された。ただ、会場からは「サプライチェーンにおいて販売先の力は強く、努力規定が定められたのみではうまくいかないことが懸念されるのでは」など厳しい指摘も。田中氏は「準荷主は直接的に輸送会社と契約しておらず、エネルギー使用量を把握して省エネに取り組む権限がなく法律上難しい。しかし、準荷主に協力してもらわないと(省エネの実現は)難しいと考え、なんとか成立させたものであり、今後1、2年でさらに規制を強化するようなことは現段階では申し上げにくい」として理解を求めた。
中長期計画の提出頻度も、直近過去2年度以上連続で「5年間平均エネルギー消費原単位を年1%以上低減」を達成している場合、翌年度以降は、中長期計画の提出が免除されることとなった。こうしたエネルギー使用量の評価についても、認定管理統括荷主制度においては個社単体ではなく提出した報告単位となり、親会社がまとめて報告した場合はグループ各社のエネルギー使用量の合計が対象となる方針を示した。
同様の荷主向け説明会は今後、全国主要都市で開かれる予定で、主な日程は下記の通り(11日現在)、▽1月23日、中電ホール(名古屋市)▽1月30日、沖縄県立博物館・美術館(那覇市)▽2月7日、品川区立総合区民会館(品川区)▽2月12日、グランキューブ大阪(大阪市)、メルパルク広島(広島市)▽2月13日、サンポートホール高松(高松市)▽2月14日、太白区文化センター(仙台市)▽2月20日、アクロス福岡(福岡市)、京王プラザホテル札幌(札幌市)。
(2019年1月22日号)