味の素物流が農産品輸送でプラットフォーム提供へ
味の素物流(本社・東京都中央区、田中宏幸社長)は幹線事業強化の一環として、農産品輸送を拡充する。東京、大阪の卸売会社2社と連携し、東京~大阪間の幹線輸送の共同化スキームを構築。中小ロットの農産品の混載など新たなメニューも検討し、将来的には卸売市場向けに農産品輸送のプラットフォームの提供を目指す。
幹線輸送を共同化、トラックを有効活用
農産品の輸送は“産地主導”で、通常、生産地の農業協同組合がそれぞれ個別に手配し、卸売会社へ輸送している。ただ、長距離トラックドライバーの拘束時間規制対応やドライバー不足を背景に、「買い付けた農産品の一部が納期までに届かない」という問題が発生し、販売機会のロスにつながっている。
こうした農産品輸送の問題について大阪の卸売会社から相談を受けた味の素物流では、卸売会社主導による解決策を検討。大阪の卸売会社が北関東や東北からの農産品の調達に苦労しているのに対し、東京の卸売会社は九州からの調達で課題を抱えていることが判り、味の素物流が両社の幹線輸送を共同化する新たなスキームづくりに着手した。
従来は北関東、東北から大阪、九州から東北に複数のトラックで個別に輸送されていた。新たなスキームでは大阪、東京の卸売会社の拠点を「東西のゲートウェイ」と位置付け、北関東や東北からのものは東京、九州からのものは大阪にいったん集約し、積み替えを行い、東京~大阪間を1台のトラックに集約する。
味の素物流では従来から北関東、東北方面に加工食品を輸送しているが、帰り荷がなく、同方面からの農産品を積載すればトラックを有効活用できる。ただ、農産品は収穫時期により物量が異なり、サイズも様々。また、野菜や果物は収穫後もエチレンガスを放出するため、積み合せの相性も考慮しなければならず、積載率向上には課題も多い。
産地から一貫したパレット輸送を実現
今回構築したスキーム(イメージ)では、安定的な輸送を実現するため、産地から卸売市場まで一貫したパレット輸送を実現。バラ積みが多い農産品の輸送では珍しいケースとなった。トラックの積載率向上、CO2排出量削減や省力化の効果が認められ、昨年7月に物流総合効率化法の総合効率化計画に認定された。
現在は大阪、東京の卸売会社2社に限定したスキームとして運用しているが、積載率を高めるために他の卸売会社への水平展開を目指す。ニーズや技術的な検証も踏まえ、混載便の運行可能性も探る。市場間だけでなく、産地からカット野菜工場への直送など市場を介さない幹線輸送の受託も増えており、農産品輸送のメニューを充実させていく。
なお、最新技術を活用した「農業の工業化」により収穫量や収穫時期が予想できるようになれば、安定的・計画的な輸送を構築しやすい環境になる。加工食品には原材料に野菜を使用するものもあり、味の素物流では農産品輸送のノウハウを蓄積し、将来的には原材料の調達物流分野でもソリューションを提供したい考え。
(2018年8月2日号)