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【レポート】「24年問題」で、物流子会社M&Aが再加速

2024.09.26

「2024年問題」の本番に突入し、物流子会社/荷主系物流会社を巡る再編の動きが加速している。「運べない危機」の到来を見据え、荷主企業やその物流子会社が運送会社を買収して自社の輸送力を強化する動きが本格化してきた。また、物流子会社の株式を外部の3PL大手などに売却するM&A事例が再び増えてきた。その背景に何があるのか――物流子会社を巡る最新動向を探ってみた。

小売りなど川下系は運送会社買収で輸送力内製化

まず目立っているのが、「2024年問題」への対応策の一環として、荷主企業やその物流子会社が運送会社の買収に乗り出すケースだ。食品卸大手の国分グループ本社は今年4月、物流子会社であるロジトラスト・パートナーズ(旧・国分ロジスティクス)を通じて、関西エリアで低温物流事業を展開するデイリートランスの全株式を取得した。

東海地方を中心にスーパーマーケットチェーンを展開するバローホールディングスも同じく4月、物流子会社の中部興産を通じて、石川県内に本社を置く鷺宮運輸の全株式を取得し、3温度帯の輸送力を強化した。

コープさっぽろも5月、物流子会社である北海道ロジサービスが道内の物流会社など5社を買収したほか、酒販大手のカクヤスグループも7月、生鮮食品配送を手がける大和急送の全株式を取得して傘下におさめた。

さらに、家電量販大手のエディオンは8月、岡山県に本社を置く室山運輸を買収し、家電配送・設置にかかわる輸送力を増強した。
各社に共通するのは、いずれも中間流通や小売りなど川下領域の企業だということ。輸送を中心とした物流力が企業としての競争力により直結する分野であるだけに、自社で輸送力を保持・内製化することにこだわる戦略がうかがえる。

メーカー系中心に物流子会社を売却する動きが急増

同じM&Aでも、物流子会社の株式を3PL大手に売却して、自社の物流機能を強化する事例も急増している。

三菱電機は10月、三菱電機ロジスティクスの株式66・6%をセイノーホールディングスに譲渡する。セイノーグループの海外物流網などを活用してグローバルでのサプライチェーン最適化を加速させる。三菱電機ロジは三菱電機の連結対象から外れるが、引き続き株式の3分の1を三菱電機が継続保有する。

アルプスアルパインは、ロジスティードによるアルプス物流のTOB(株式公開買付け)に賛同し、株式の一部を売却する(株式20%を継続保有)。アルプス物流はロジスティードとの協業体制により、グローバル対応を加速させるなどシナジーを創出していく。

ベアリング製造大手の日本精工は、全額出資子会社であるNSKロジスティクスの株式66・6%をSBSホールディングスに譲渡する方針を発表し、年内にも譲渡を完了する。株式33・4%は継続保有し、物流子会社のM&Aを数多く手がけてきたSBSグループに物流業務を委託することで効率化を目指していく。

このほか、自動車部品中堅のミツバは4月、全額出資の物流子会社であるミツバロジスティクスの全株式をニッコンホールディングスに譲渡。産業ガスメーカーである日本エア・リキードも同じく4月、子会社であるテーエス運輸の全株式を東部ネットワークに譲渡した。
ここで特徴的なのは、各事例ともメーカー系企業であること。前述の中間流通・小売りが自前の輸送力を強化する方向に動いているのとは対照的に、メーカーは大手3PLなどに物流子会社を売却する手法を通じて、物流業務をアウトソーシングし、持続可能な物流体制づくりに取り組んでいるようだ。

子会社統合などでグル―プ内物流を最適化する動きも

また、グループ内の物流子会社同士を合併・統合する動きや、物流子会社をグループ内で吸収合併するなどの〝最適化〟を目指す動きもある。

日本製鉄は昨年10月、日鉄物流が全国の製鉄所ごとに配置していた地域物流子会社を日鉄物流本体に統合し、一体運営によるオペレーションなどの最適化を進めた。

書籍取次大手のトーハンも昨年10月、全額出資子会社である東販自動車とトーハンロジテックスを合併。一体運営による経営の効率化や体制強化を実現している。

いずれのケースも、企業経営において物流が大きな課題として浮上する中で、自社のサプライチェーンを俯瞰し、課題に対する意思決定をスピードアップしたい思惑が見える。

このほか、半導体・電子部品製造のロームは今年6月、全額出資の物流子会社であるローム・ロジステックを、同じく全額出資の製造子会社であるローム・ワコーに吸収合併させた。グループ一体経営をさらに推進することに加え、ローム・ロジステックが持つ物流・倉庫運営に関するノウハウを活かすことで、製造部門と連携したサプライチェーン最適化を進める狙いがあるようだ。
(2024年9月26日号)


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