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酒類・飲料メーカーが“工場発”物流改革

2024.08.27

酒類・飲料メーカーが“工場発”の物流改革を加速させている。トラックドライバーの労働時間規制が強化される「2024年問題」への対応を念頭に、トラックの輸送距離や回数を減らす生産体制に再編する動きとともに、工場としての物流機能を強化し、トラックの荷待ちや作業負荷を軽減する取り組みが進む。

物流機能向上へ工場に自動倉庫新設

サントリー食品インターナショナルでは、グループの主力工場であるサントリープロダクツ高砂工場にペットボトル飲料の製造ラインを増設するとともに、工場敷地内に物流機能向上のための自動倉庫を新設し、西日本エリアの生産能力および物流機能を強化する。設備投資額は合計約250億円で、2026年春の稼働を目指す。

高砂工場を生産拠点としてだけでなく、西日本の物流拠点と位置付ける。今回の能力増強により、今後も伸長が予想されるお茶やコーヒー等の小容量ペットボトルの中長期的な安定供給を図るとともに、関東エリアから西日本エリアへの長距離トラック輸送量をこれまでより約50%削減。また、年間のCO2排出量は約3700t削減できる見込みだ。

ピッキング自動化、保管スペース拡張

キリンビールは6月から、名古屋工場に「新自動ラック」を導入。トラックドライバーの荷待ち・荷役時間を短縮し、ドライバーの待機時間削減を推進する。また、「レイヤー自動ピッキング装置」を導入することで省力化を進め、永続的なピッキング機能の確保と作業負荷軽減を目指す。

さらに、酒類保管スペースを拡張する。繁忙期などに不足していた物流拠点能力を強化することにより、慢性化していた場外倉庫使用を抑制。工場と場外倉庫を行き来するトラックの削減につなげる。25年4月から運用を開始する。これら一連の取り組みに対し、総額約10億円を投資する計画だ。

製造能力アップで東日本からの転送削減

アサヒ飲料は明石工場に約85億円を投じ、製造棟と次世代製造ラインを新設し、24年12月に稼働予定。今回、「カルピスウォーター」の1・5ℓを新たに製造するなどPETボトル商品の製造能力を増強し、東日本からの転送数を削減することで物流の「2024年問題」への対応や輸送でのCO2排出量削減に取り組む。

なお、アサヒビールは29年から鳥栖工場の操業開始を目指している。グループの多様な商品や容器の製造を行い、博多工場からの移転により九州エリアへ出荷する大部分の商品が鳥栖工場で製造・出荷が可能となる。九州エリア内の需給率向上と配送距離短縮により、物流におけるCO2排出量は従来比で30%削減となる見込みだ。

工場隣接し新倉庫、出荷機能を集約

サッポロビールでは、トラックドライバー、倉庫作業員の負担を軽減するため、千葉工場の物流改革を実施。同工場の隣接地に京葉湾岸物流センターを新設した。ワインや洋酒などを保管、出荷作業している京葉物流センターでのすべての業務を新たな「京葉湾岸物流センター」へ移管し、8月19日から出荷を開始した。

新物流センターでは、隣接しているサッポロビール千葉工場との間に連結動線を確保し出荷機能を集約させることで、1拠点からの出荷が可能となる。これによりトラックドライバーの運行時間や倉庫作業員を含めた出荷付帯業務を年間約2万時間削減し、年間CO2排出量約116tの削減を見込む。
(2024年8月27日号)


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