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上半期の日本発航空輸出が増加=JAFA統計

2024.08.08

近年取扱量の減少が続いていた航空貨物輸出の復調傾向が鮮明になってきた。航空貨物運送協会(JAFA、杉山千尋会長)がこのほど公表した2024年上半期(1~6月)の日本発の輸出航空貨物重量(混載貨物ベース)は、前年比約2・5%増となる約38万7774tとなり、上半期実績として3年ぶりの増加に転じた。23年は〝歴史的低水準〟となった航空貨物輸出量だが、今年に入って中国向けの半導体製造装置や自動車部品などがけん引して回復基調で推移。現在のペースが持続すれば年間実績でもプラスの確保が見込まれそうだ。

今年から回復傾向、1月は25ヵ月ぶり増加に

日本発輸出航空貨物重量の上半期実績は、TC1(米州)が前年比0・1%減の7万7208tだったものの、TC2(欧州)は7万2295tで約3・5%の増加。TC3(アジア)も3・1%増の23万8270tだった。国別にみると、最大の輸出先となる中国向けが8万4518tとなり10・8%増となっている。

近年の航空貨物市況は浮き沈みが続いた。20年はコロナ禍の影響で荷動きが大きく低迷したものの、21年は海上輸送の混乱を背景とした〝船落ち貨物〟の流入で航空輸出は急増。20年比で48・8%増となる活況を呈した。しかし、22年に入ると海上輸送の正常化や世界的な経済低迷に伴い航空貨物取扱量は減少に転じ、23年は22年比で25・2%減の76万1311tとなり、20年実績(78万4538t)をも下回る歴史的低水準となった。

24年に入ると、そうした状況に変化が生じた。1月には3・3%増となり、21年12月以来25ヵ月ぶりの増加に転じた。2~3月は再度減少に転じたものの、4月は2・3%増、5月は11・2%増、6月は5・4%増と、直近3ヵ月で回復基調が確かなものになってきた。

半導体関連の中国向け輸出が急増

輸出増加の理由として、自動車関連の需要回復に加え、アジア向け、とくに中国向けの半導体関連の輸出が好調であることが大きい。米国の中国に対する半導体の輸出規制に伴い、中国では半導体を自国で生産する必要が生じたことから、日本発の製造装置に大きな需要が発生。また、世界的な生成AIブームを受けてデータセンター向け半導体の需要が高まっていることも製造装置の輸出増を後押ししている。

財務省が発表した24年上半期の貿易統計では、輸出総額が前年比8・8%増の51兆5169億円で歴代3位の水準となった。増加品目をみると、自動車が前年比13・9%増加していることに加え、半導体等製造装置は24・2%増、半導体等電子部品は12・6%増と好調。輸出先別では、中国向けが輸出総額が9兆1413億円で12・3%増。同国向けの品目別では半導体製造装置の伸び率が最も大きく、83・5%の大幅増だった。半導体関連に関しては、アジア向け全体で見ても半導体製造装置が36・2%、半導体電子部品が13・5%の高い伸び率を示している。

成田空港は輸出額が過去最高を記録

輸出量の増加に牽引される形で、国内最大の航空貨物取扱量を誇る成田空港の24年上半期の輸出額は、半期の実績として過去最高額を記録した。東京税関が発表した成田空港の貿易概況(速報)によると、上半期の輸出額は8兆2066億2300万円(13・9%増)。輸出額の6割強を占めるアジア地域は5兆4858億6000万円で17・0%増となり、その他の地域もASEANを除くすべての地域で前年比増となった。

国別では、もっとも輸出額が多い中国が1兆6370億4400万円(33・3%増)となっており、香港の1兆2363億6500万円(23・8%)が続く。主要品目の動向をみると、半導体製造装置の輸出額が53・0%増と大幅に増加しており、半導体等電子部品も15・0%増と好調。中国(香港・マカオ含む)向けでは、半導体製造装置の輸出額は前年比で2・4倍の大幅増となっている。

海上輸送がふたたび混乱、航空輸出増加に影響

このほか、新たな海上輸送の混乱が航空輸出の増加に影響を及ぼしている。紅海における武装組織からの船舶攻撃を回避するための迂回ルート選択によるリードタイム延長に加え、パナマ運河の水位低下による通航制限も影響し、海上運賃が高騰。これにより、貨物が航空輸送へ流れていることも要因として考えられる。

輸出の好調を横目に、輸入に関しては低調が続く。JAFA発表による24年上半期の航空貨物の輸入通関件数は83万3521件で、前年比で7・5%減となっており、月ベースの実績では22年2月以降減少が続いている。円安の影響で輸入品が値上がりし、国内の消費を押し下げていることも要因のひとつとなっている。
(2024年8月8日号)


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