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【レポート】特定技能外国人、受け入れへ手引き作成=全ト協

2024.07.30

2024年3月29日、外国人労働者の在留資格である「特定技能」に自動車運送業(トラック・バス・タクシー)が追加された。ドライバー不足が深刻化する中、外国人が日本でトラックドライバーとして働くための門戸が開かれ、人材確保の選択肢拡大が期待される。全日本トラック協会(坂本克己会長)では、特定技能外国人の円滑な受け入れを進めるため、手引きを作成。受け入れの要件や、受け入れにあたって要となる「登録支援機関」の選定、「外免切替」の留意点などについて周知を図っている。

受験者向けに簡単な日本語版テキスト作成

特定技能制度は人手不足が顕著な分野を対象に、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人受け入れの仕組みとして19年4月に開始された。全ト協など業界団体の要望を踏まえ、24年3月29日の閣議決定により、自動車運送業等の4分野を「特定技能1号」に追加。特定技能1号は在留期限の上限が5年間で、分野ごとに受け入れ人数の上限があり、自動車運送業分野ではトラック・バス・タクシーの3区分全体で制度開始から5年間で上限を2万4500人とした。

全ト協では24年度の事業計画に、「外国人労働者の受入れに向けた対応策の推進」を盛り込み、技能試験実施および円滑な制度導入について関係機関と調整し、対応を進めていく。これまでの取り組みでは5月に「外国人特定技能制度に関する説明会」を開催し、会員専用コンテンツとしてホームページに掲載。受け入れの要件や留意点をまとめた手引きも作成した。今後は簡単な日本語による、技能試験を受験する外国人向けの学習テキスト、雇用後の外国人向け初任運転者研修テキストを作成する予定だ。

働きやすい職場認証またはGマーク取得が要件

受け入れる外国人には、年齢(18歳以上)、健康状態、技能水準、日本語能力など要件が定められている。事前に外国の運転免許を取得している必要があり、入国後、6ヵ月以内に外免切替等により日本の第一種運転免許を取得しなければならない。「自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)」に合格し、日本語能力に関しては、①日本語能力試験で「N4」(基本的な日本語を理解することができるレベル)以上②国際交流基金日本語基礎テストの合格――のいずれかが問われる。

受け入れ先の事業者(所属機関)に対しては、労働・社会保険・租税に関する法令遵守など全分野共通の要件のほか、自動車運送業トラック区分では上乗せの要件がある。たとえば、「働きやすい職場認証」の取得(法人単位の取得が基本)あるいは安全性優良事業所(Gマーク)の保有(外国人を受け入れる事業所以外でも可)が求められ、特定技能制度の適切な運用を図るために設置される「自動車運送分野特定技能協議会」の構成員になり、必要な協力を行う必要がある。

従事できる業務は「トラックの運転およびそれに付随する業務」で、荷役や付帯作業など日本人のドライバーが通常行っている関連業務は行える。直接雇用、フルタイム勤務限定で、原則「労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、かつ労働時間が週30時間以上」とし、仕事の掛け持ちやアルバイトは禁止。所定時間は通常の労働者と同等とし、賃金は同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上(フィリピン国籍者は別途ルール)とする。また、一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させなければならない。

「外免切替」、試験予約困難のため“一発合格”を

1号特定技能外国人を雇用する場合、職業生活上・日常生活上の支援の計画を作成・実施することが義務付けられ、「義務的支援(10項目)」と「任意的支援」の2種類がある。支援は委託することができ、中長期在留者の受け入れなど一定の実績を満たさない場合には、「登録支援機関」への支援委託が必須となる。また、募集に際しては国内の人材紹介会社を介して行うことが主流で、人材紹介会社の多くは「登録支援機関」を兼ねていることから、特定技能外国人の受け入れは「登録支援機関」の選定が要になるという。

このため、手引きでは契約内容、費用も含めたチェックポイントを詳細に紹介。たとえば、人材紹介会社の有料/無料職業紹介事業者としての許可や悪質なブローカー等の介入の有無、過去の紹介実績や多言語対応の有無、応募者のバックグラウンドチェックなどスクリーニング、採用後のフォロー体制について確認することを推奨。「登録支援機関」については入管庁のホームページで登録を確認し、スタッフの人数、現地語力、支援の頻度や方法、緊急時の対応体制、日本語教育のサポートの有無などを確認項目に挙げる。

もうひとつ重要なポイントになるのが「外免切替」だ。トラック区分での就業には第一種運転免許が必要で、外国の免許しか持たない外国人を採用する場合は、いわゆる「外免切替」を特定活動期間内(上限6ヵ月)に行わなければならない。期限内に日本運転免許を取得できない場合、引き続きの雇用ができなくなり、全ト協では「不合格になることが多く、試験場は混み合って予約が取りにくい」ことから“一発合格”できるよう教習所で講習を受講すること等事前の受検対策を勧めている。

手引きでは導入コストの目安も示した。採用時の人材紹介費は1人あたり数十万円から60万円程度、支援委託費は月額2~5万円程度、ビザ取得費用は印紙代4000円のほか書類作成・申請を委託する場合、20万円程度かかる。このほか寮の手配費、渡航・国内移動費なども発生する。全ト協では、単独業務を開始するまでの特定活動期間中に行う初任運転者研修、日本語研修も重要であるとし、事故やトラブルも含めて具体的な場面に即したコミュニケーション能力の習得が不可欠とみる。

なお、2023年12月末現在、特定技能在留外国人数(速報値)は20万8462人で、分野別では、飲料製品製造業29・3%、素形材・産業機械・電気・電子情報関連製造業19・2%、介護13・6%の順、国籍・地域別ではベトナム53・1%、インドネシア16・4%、フィリピン10・2%の順に多い。全ト協では、「外国人は多様な人材確保の選択肢のひとつ」とし、特定技能制度に続き、このほど技能実習制度に代わるものとして創設が決まった就労育成制度においても受け入れ対象分野となるよう関係機関と調整を進める。
(2024年7月30日号)


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