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JPIC、「CLOに求められる要件」を公表

2024.07.25

フィジカルインターネットセンター(JPIC、森隆行理事長=写真)は22日、「物流統括管理者(CLO)」の定義・機能や求められる要件をまとめた提言書を公表した。今後は提言書を荷主団体や関連する行政機関へと周知し、企業によるCLO選定に貢献していく。JPICは内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業の一部を引き継いでおり、その一環として4月からCLOの要件などを検討していた。

CLOは社内外の「折衝窓口」の役割も

提言書は、CLOの担う3つの役割として「地域社会の持続可能性を促進し、様々な取り組みにより持続可能な豊かな社会を実現する」「サプライチェーンの全体最適の実現に向け、中長期計画の立案と実行をリードする」「物流オペレーションの効率化計画の策定と社内外の調整により実践する」を提示。物流効率化計画の主要テーマとして、①リードタイムの適正化②在庫管理の適正化と共同配送③物流品質管理の強化④リスク管理の強化⑤IoTやAIなど先進技術の活用――などを掲げた。

この考えを踏まえ、CLO職能には、経営者としての視点と能力をはじめ、戦略的思考と決断力、社内外の外交力、調整力、バリューチェーン・サプライチェーンや物流、技術動向に関する知見、物流を考慮した社会・環境問題に関する知見が必要だとした。

経営者として組織管理や重要な意思決定を行う能力に加え、他企業のCLOや物流会社の責任者とのネットワークを構築することを含め、社内外との折衝窓口として調整する行動力や外交力が必要だとした。また、バリューチェーンの分析や、物流を含めたサプライチェーンの全体プロセスの管理についての知見を持つべきとした。さらに、最新技術やイノベーションに関する情報を把握し、マテハン技術、物流情報の標準化、データ分析・AI活用などの見識を備えるべきだと提言した。そのほかにも、物流を考慮した社会・環境問題として、輸送で生じる交通渋滞・交通インフラへの負担、物流の担い手の労働環境、地域や地球環境への影響に関する知見を持つべきとした。

CLO設置により期待される効果は…

CLOの設置によるメリットも提示した。経営戦略の中心にサプライチェーンが入ることで、競争優位性の確立、顧客満足度の向上、リスク管理の強化、持続可能性の追求などの効果が得られるとした。各企業のCLO間で対話が生まれ、連携・協力を推進することで、企業間の共同配送の実施やCLO同士のアイデア交換による物流生産性の向上など、個社では得られない競争優位性や新たなビジネスチャンスを獲得する可能性を指摘した。

CLOは物流やサプライチェーンのデータを把握し、分析する役割を担うとし、全体最適を目指すためDXを推進し、データ分析を通じて物流部門のニーズ・課題を正確に把握し、経営ビジョンの実現に向けた具体的計画の策定に寄与できると強調。加えて、サプライチェーンの全体最適実現に向けた物流オペレーションの標準化を推進し、コスト削減やリスクの最小化、物流品質の引き上げによる顧客満足度の向上が期待できるとした。

CLOの担当分野には物流分野の標準化も含まれるべきとし、モノ・情報・物流作業などの標準化により、コストの削減や、リスクの最小化、物流品質改善による顧客満足度の向上が見込めるとした。

検討会には荷主企業やヤマト、JR貨物が参加

昨年6月、国土交通省、経済産業省、農林水産省は物流改善ガイドラインを公表し、荷主に対し、物流の適正化や生産性向上の取り組みの責任者となる「物流統括管理者(CLO)」を選定するよう協力を求めた。また、今年4月26日に成立した改正物流法は、一定規模以上の荷主企業にCLOの選定を義務付けた。こうした動向を受け、内閣府の物流革新事業を引き継いだJPICは、CLOに求められる要件を検討することとし、大手荷主、物流事業者、学識経験者、経産省と国交省の物流担当者らが参加する「CLO職能検討会」を設置した。検討は、荷主・物流子会社からイオン執行役物流担当兼イオングローバルSCM社長の手塚大輔氏、日清食品常務取締役サプライチェーン本部長の深井雅裕氏、大塚倉庫常務取締役の溝内順一氏、物流事業者から、ヤマト運輸取締役会長の小菅泰治氏、JR貨物取締役兼常務執行役員の篠部武嗣氏、座長として東大大学院工学研究科の川﨑智也准教授、JPICから森理事長と奥住智洋事務局長らが委員となった。オブザーバーとして経産省、国交省の物流部門幹部が参加した。

JPICによる発表を受け、経産省商務・サービスグループ消費・流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏は「物流統括管理者(CLO)に求められる役割や能力について、事業者の関係団体間で積極的に議論がなされた上でとりまとめられた提言であり、改正物流法の内容をより実効性のあるものにする取り組みだと認識している。関係する事業者の方々からこうした提言をいただけることは大変ありがたく、経産省・農水省・国交省合同会議を含めた今後の議論において参考にしたい」とコメントした。
(2024年7月25日号)


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