「CLO協議会」発足シンポジウムを開催=JPIC
フィジカルインターネットセンター(JPIC、理事長=森隆行・流通科学大学名誉教授)は13日、「CLO協議会キックオフシンポジウム2024」を都内でオンライン方式と併せて開催した。4月26日に成立した改正物流効率化法が特定荷主に「物流統括管理者」(CLO)の選任を義務付けたことを受け、JPIC内に「CLO協議会」を創設したもの。今後はセミナーや交流会などを開催し、CLOを軸とした荷主の物流改善を支援する。今夏にはCLOの役割や求められる職能を明記した「CLO職能提言書」(CLOガイドブック)を発表し、8月以降、提言の内容を周知していく。
CLOは企業の意思決定プロセスに参加
JPICは22年に内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービスの後継組織として機能を継承するとともに、ヤマトグループ総合研究所のフィジカルインターネット関連部門と合体したプロジェクト組織。行政から委託を受け、フィジカルインターネットの実現に向けた多様な取り組みを推進している。
シンポジウム開会にあたり森理事長(写真)は「業種・業態を超えた全体最適の物流を実現することが重要であり、そのためにJPICはフィジカルインターネットの社会実装を促進していく。その一環としてCLOを接点とした企業同士の垂直・水平の連携強化を図るためCLO協議会を立ち上げた。荷主、物流企業、アカデミアと連携しつつ、物流の生産性向上に向けた取り組みを推進していく」と発足にあたっての意気込みを述べた。
続いて野村総合研究所シニアチーフストラテジストの藤野直明氏が登壇し「物流担当役員のミッション」をテーマに講演した。藤野氏は「海外の物流担当役員(CLO)は、自社の物流能力の水準を把握し、物流ネットワークの設計・運用や改善に対し責務を負っている」と説明し、今後日本企業に導入されるCLOも、企業の意思決定プロセスに関与する責任と権限が必要だと提言した。
荷主同士や荷主と物流事業者とつなぐのがCLO
行政の立場からは経済産業省商務・サービスグループ消費・流通政策課長兼物流企画室長の中野剛志氏が発言。「取り引きには発荷主と着荷主の関係または荷主と物流事業者の関係があり、そこに物流が生じるが、CLOはそれぞれの関係を緊密なものとし、より効率的にしていく『外交』のような役割が必要だ」と述べ、「とくに異業種企業間や競合数社の連携には企業の経営層レベルの『外交』が求められる。CLOが異なる企業間で協調関係を築くことができれば、物流分野での新たな価値を産み出すこともできる」と強調。「物流の能力が競争力を左右する時代では、企業はDXを活用して経営を変革し、物流をも統合したサプライチェーンマネジメントを確立すべきであり、そのミッションを実行するのがCLOだ。物流部門のみを所管するのではなく、全社的な経営プロセスに関わらなければミッションは実現できない。その意味でも改正法が規定するCLOには役員レベルの人選が望ましい」と語った。
東京大学大学院准教授の川崎智也氏は、CLO選任に向けたガイドブック的役割を持つ「CLO職能提言書」をJPIC内で策定中だと明かしたうえで、CLOの設置により「物流部門がコストセンターからプロフィットセンターへとマインドチェンジし、CLOを軸として企業間連携やDXによる全体最適化、標準化が進む」と期待感を示した。
(2024年6月20日号)