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日本通運/NX総研、「CLOセミナー」開催

2024.06.11

日本通運(本社・東京都千代田区、竹添進二郎社長)とNX総合研究所(本社・東京都千代田区、田中博之社長)は3日、4月に成立した改正物流効率化法・トラック法(改正物流法)で新設が決まった「物流統括管理者(CLO)」制度を解説するオンラインセミナーを開催した。セミナーは2部構成で、第1部は改正物流法と物流統括管理者をテーマとした行政担当者による講演があり、第2部は荷主と行政担当者が参加するパネルディスカッションを実施した。

第1部は、NX総研の田中社長の開会挨拶の後、国土交通省物流・自動車局局長の鶴田浩久氏が改正物流法の概要と同法が目指す物流革新について講演。続いて経済産業省の消費・流通政策課長兼物流企画室長の中野剛志氏が「物流統括管理者に期待される役割」をテーマに講演した。改正物流法は、一定規模以上の荷主と物流事業者を特定事業者に指定し、特定事業者には中長期計画の作成や定期報告などを義務化した。加えて、荷主には自社の中長期計画に基づく物流改革に責任を持つ「物流統括管理者」の選任を義務付けた。

国交省の鶴田氏は「これは荷主だけに負担を強いるということではない。荷主と物流事業者の双方がWIN‐WINの関係を築くことが重要で、そのための役割を『物流統括管理者=CLO』に担っていただきたいと考えている」と述べ、「物流は経済と国民生活を支える社会的インフラだと考えている。荷主と事業者の互恵関係にとどまらず、荷主・物流事業者・社会の〝三方良し〟を実現することが重要だが、そのカギを握るのがCLOだ」と強調した。

経産省の中野氏は「物流改革を本格的に進めるには、生産・流通・物流など部門を超えた取り組みが必要となる。企業活動の各分野にまたがって取り組みを進められるよう『物流統括管理者』には経営層に就任していただくことを想定している」と説明。加えて「剣豪の宮本武蔵は目の前の太刀筋をとらえる『見の目(けんのめ)』だけでなく、物事を俯瞰して見る『観の目(かんのめ)』を強くせよと語っている。物流についても同様であり、CLOは『観の目』を持って全体を踏まえながら改革に取り組んでほしい」と期待を表した。

持続可能な物流へ「CLO」の活躍に期待

第2部のパネルディスカッションは、司会を流通経済大学の大島弘明教授(NX総研顧問・前常務取締役)が務め、パネラーとして荷主からエプソン販売取締役経営推進本部長の神保伊知郎氏、日清食品常務取締役サプライチェーン本部長兼Well-being推進部長の深井雅裕氏、トラックメーカーの立場から三菱ふそうトラック・バス取締役副社長兼国内販売・カスタマーサービス本部長の林春樹氏、行政から国交省大臣官房審議官(物流・自動車局担当)の長井総和氏が出席した。出席者は、共同物流の促進やトラック輸送の荷主・事業者間の取引適正化をこれまで以上に促進することが重要で、その役割をCLOが担うという認識を共有した。

エプソン販売の神保氏は「当社にはCLOという役職はないが、実効性のある物流改革を実現するには、CLOが持つ機能が必要だと十分認識している。持続可能な物流の実現に向け、経営推進本部を中心に注力していく」と述べた。

日清食品の深井氏は、持続可能なサプライチェーンを構築するための重要なポイントは「CLOは企業内部門を超えた全社最適の観点を持ちつつ、業界を超えた消費者視点に立った水平連携の実現を図る必要がある。また、物流のみならず、働き方改革や温室効果ガスの削減など社会課題の解決にも取り組むべき」と語った。

三菱ふそうトラック・バスの林氏はこれを受け「業種・業界を超えて緊密な連携を実現するには、データ連携など環境整備が重要だ」と指摘。「車両管理やメンテナンスをはじめ、AIを利用した配送管理システムの提供など、運送業の日常業務を支援するサービスを展開していく」と述べた。

国交省の長井氏は「リードタイム延長や受注締め切り時間に余裕を持たせることをはじめ、荷待ち・荷役作業時間の削減、運賃・料金の適正収受などを荷主主導で促進することが重要」だとしたうえで「CLOがリーダーシップを発揮し、商慣行の見直しや物流生産性向上に取り組んでいただきたい」と参加者に呼びかけた。

日本通運の竹添社長はセミナーを締めくくるにあたって「今回のセミナーはCLOというキーワードから様々な課題を考える貴重な機会となった」と述べ、「現在の企業は環境問題やDXの推進、ダイバーシティやコンプライアンスの取り組みなど様々な課題を抱えており、物流部門の皆様はこうした課題に複合的に取り組んでいると理解している。今後も皆様とともに物流の未来を切り開いていくことを祈念している」と挨拶した。
(2024年6月11日号)


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