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虎の穴がEC事業拡大、オートストアで効率化を実現

2024.05.07

「同人誌」などの書籍やグッズの販売を手がける虎の穴(本社・東京都千代田区、吉田博高、鮎澤慎二郎代表取締役)は、近年のEC事業拡大に対応し、庫内物流の効率化を進めている。昨年の11月には、千葉県八千代市に、高度に自動化された「とらのあなロジスティクスセンター」(TLC)を新規開設した。

10万SKU超におよぶ商品の保管・ピッキングの核として、ロボットストレージシステム「AutoStore(オートストア)」を導入し、開設から約半年で、大きな効率化を実現している。また、年間2万冊超の同人誌を扱うECは、究極の「多品種・小ロット物流」と言える。このノウハウを活かし、今夏には、3PL事業への進出も視野に入れる。

EC拡大へ、大きく事業転換

個人クリエイター支援を掲げる虎の穴は、5万人を超えるクリエイターと提携し同人誌などを中心に販売を行う「CtoBtoC事業」を展開する。店舗販売からスタートした同社は、1996年からカタログによる通信販売を開始、18年には通販売上が全体の6割を占めるまでになった。

転機は20年からのコロナ禍で、25店まで拡大していた直営店舗を1店に縮小し、EC事業への転換を果たした。その後、EC事業が拡大する中で22年には流通総額が300億円を突破し、従来のDPS(デジタルピッキングシステム)を中心とした物流では対応が難しくなっていた。

同社が主に扱う同人誌は、判型が多種多様な上、バーコードの添付もなく、物流管理を行う上では手間のかかるアイテム。バーコード貼付や付録品への対応など作業工程も複雑で、作業は属人化しやすく、ピッキング効率にバラつきが生じていた。加えて当時の物流センターは多層階であり、商品移動の手間や賃貸コストがかかるなどの様々な課題をかかえていた。

そこで、今後のさらなる事業拡大を見据え、「生産性の向上」「保管面積の縮小」「24時間稼働」の3点を実現するため「プロロジスパーク八千代1」に1フロアの「TLC」を開設した。

新センターについて鮎澤社長は「事業拡大を視野に入れ、今後10年位のスパンで計画している」と話す。

「オートストア」による平準化とスピードアップを実現

「TLC」の開設にあたって、新規で導入したオートストアが、同センター物流業務の核となる。オートストアシステムが提供し、インテグレーションはオカムラが、製品導入にあたってのコンサルティングにはGROUNDが携わる。

オートストアの導入について、鮎澤社長は「様々なマテハン機器を検討したが、SKUの多さにより生じる『保管効率』『ミスピッキング防止』『作業の平準化』などの課題解決に一番マッチしていた。また、今後の事業拡大にも、オートストアの拡張性が活きてくる」と評価する。

3500坪の同センターの、500坪に設置されたオートストアは、4万2080個のビン(コンテナ)と42台のロボットで、総SKUの約半数に当たる4~5万SKUを取り扱う。入荷ポートが7ヵ所、出荷ポートが14ヵ所となり、繁忙期には入荷ポートの一部を出荷側に切り替えて波動に対応する。

稼働から約半年を過ぎた現在、1ポート当たりの出荷数は1時間当たり約100件を実現しており、ほぼ予定通りの数値に達しているという。また、1日の出荷件数は約1万件、繁忙期には約2万5000件を扱い、その内の50%〜80%にオートストアがからんでくる。同社では今後もオートストアへの保管アイテムの調整を行い、より効率を上げていく予定だ。

また、今回の新規開設により、ピッキングの作業の工数が削減されたことで24時間出荷ができる体制を整えた。さらに、天井高を利用したオートストアの保管効率なども寄与し、倉庫面積も5500坪からワンフロア3500坪に縮小、稼働人数も削減された。

鮎澤社長は「オートストアにより、作業者の熟練度に左右されず作業が平準化された。繁忙期の5月以降に向けて、真価を発揮したい」と期待を寄せる。

「多品種・小ロット物流」のノウハウ活かし3PL事業進出へ

また同社では、今夏にもフルフィルメント業務における3PL事業への進出を予定している。「TLC」の潜在出荷能力は繁忙期の1日2万5000件を上回るという。オートストアを中心とした、他社商品との庫内物流および配送業務の共同化は充分に実現可能として視野に入れている。

鮎澤社長は「『2024年問題』に代表される人手不足などで、当社にも参入の余地はあるだろう。また、多品種・小ロットの取り扱いには長年のノウハウがある。今後は免許の取得やWESシステム開発を進めて準備していく」と抱負を語る。
(2024年5月7日号)


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