2024トラック春闘、他産業並みの〝上昇気流〟に乗れず
トラック業界の2024春闘は、総じて前年実績を上回る水準で解決する傾向がみえてきた。政府が産業界に対し賃上げを求める〝官製春闘〟の機運もあり、全体では前年水準を上回る傾向がうかがえる。ただ、賃上げ率をみると他産業との隔たりが目立つ。連合が発表した2024春闘第1回回答集計の賃上げ率平均5%には届いておらず、トラックの賃上げは他産業並みの〝上昇気流〟に乗れていない状況だ。
大手の夏季一時金は前年水準を下回る結果に
連合が15日に発表した2024春闘第1回回答集計の賃上げ率は平均5・28%(加重平均)となり33年ぶりに5%を超えた。一方、運輸産業では荷動きの回復の遅れや燃油費などコスト増により各社の業績は必ずしも好調とは言えないこともあり、運輸労連(成田幸隆中央執行委員長)の大手10組合の平均賃上げ率は3・1%(加重平均、21日時点)、交通労連(織田正弘中央執行委員長)トラック部会の賃上げ率は2・72%(同、19日時点)と5%とは隔たりがある。
運輸労連傘下の12単組のうち、21日までに賃金は10組合、夏季一時金は9組合が妥結した。賃金妥結額は単純平均で8314円、加重平均で8524円となった。単純平均では前年より1767円、加重平均で723円上回った。ただ、10組合のうち全日通のみは前年実績の1万550円を下回る8450円となり、賃上げ率は前年より0・9pt低い3・1%となった。中小組合は9ブロックで97組合が解決し賃金妥結額は単純平均で5737円、加重平均で6582円と6000円前後の実績だった。単純平均で43・1%増、加重平均で38・4%増と健闘がうかがえる。
一方、夏季一時金は各社の業績を反映して伸び悩んだ。大手10組合のうち、全日通、ヤマト運輸、JPロジスティクス、ロジスティード、三菱電機ロジスティクス、エスラインギフがそれぞれ前年を下回り、トナミ運輸と名鉄運輸は前年並み水準となった。妥結金額は単純平均で43万512円、加重平均で49万3537円となり、それぞれ前年実績を下回った。
荷量減少や運賃適正化の停滞が要因?
交通労連のトラック部会に所属する労組の賃金闘争は19日時点で22労組が妥結し、妥結平均金額は単純平均で4927円、加重平均で6967円となった。単純平均では前年比647円上昇、加重平均では1917円上昇となり、単純平均でも4000円超の実績となった。また、特別グループ12組合の妥結平均金額は単純平均で4944円、加重平均で7571円となり、前年比をみると、単純平均で528円上昇、加重平均で2547円上昇するなど上向きの勢いがみられる。
これに対し、夏季一時金は前年並み水準か前年と比べ小幅の上昇にとどまるなど賃上げほどの勢いはみられない。交通労連トラック部会の貫正和事務局長は現時点の春闘状況について「昨年と比べて若干の上乗せがされているものの、他産業のように満額回答や平均でも賃上げ率5%を上回る妥結状況には至っていない。その要因として、貨物量の減少や適正な運賃収受ができていないこと、また今後の燃油価格の動向などにより、企業側にも慎重な面があるのではないか」と見立てたうえで、「ますます他産業との格差が拡大してしまった懸念がある。次年度以降、格差縮小に向けた動きができるかが課題だ」と指摘する。
(2024年3月26日号)