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タカラスタンダード、「24年問題」対応へ物流効率化の取り組み加速

2023.08.15

タカラスタンダード(本社・大阪市城東区、渡辺岳夫社長)は、トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」に対応するため、効率的な物流を実現する各種取り組みを加速させる。近年注力してきた物流センターでの待機時間対策のほか、荷渡しにおけるドライバーの付帯作業の基準も見直し、2024年4月までに全運送事業者との契約の再締結を目指す。各種物流施策の実施にあたっては、ドライバーだけでなく、倉庫作業員、施工作業員の負荷も考慮しながら、サプライチェーン全体としての効率化を追求する方針だ。

自動倉庫導入で倉庫内作業全体の時間短縮

同社の商品であるシステムキッチンやユニットバスは、大型のものが多く、形状も様々。パレット化が困難であるため、荷役や搬入の際に労力がかかり、また、荷扱いの難易度も高い。ホーロー素材は重量物で、引き出しなどのキャビネットは工場で組み立てたものを配送するため、トラックの積載率を上げにくいという課題もある。

こうした特有の物流課題を踏まえ、生産物流本部ロジスティクス部の大石幸治部長は、「2024年問題」への対応について「運送事業者とともに、解決策を探る必要がある」と強調する。同部の杉山悠輔係長も「ドライバーだけでなく、倉庫内作業員、施工作業員も含めバランスを考慮しながら時短を支援していきたい」と話す。

同社が17年以降、力を入れてきたのが物流センターでのトラック待機時間対策だ。効率的な作業を目指し、同年に竣工した福岡物流センターはトラックバースを3面に配置し、出庫と入庫を同時に行える体制を確立。福岡物流センター、滋賀物流センターに続き、昨年3月には東北物流センターで出荷前の商品仮置き棚に自動倉庫を導入した。

自動倉庫をピッキングした商品の“仮置き”に用いることで、商品の搬出がスムーズになることに加え、上階の作業者が1階の仮置きスペースが空くのを待たなくて済むため、「手待ち」がなくなり、作業時間全体を短縮。東北物流センターでは、上階から荷物を降ろすために土曜日に対応していた倉庫内作業時間を半減できた。

福岡物流センターでは、出荷する商品の場内の搬送・荷ぞろえ作業に無人フォークリフトを導入。翌日出荷分の荷ぞろえ作業を前日の夜間時間帯に無人で行うことで、導入前と比べ1日の作業時間を約90分短縮。このほかASN(事前出荷情報)を利用し、ハンディターミナルで入庫検品を行うことで、入庫作業時間の短縮を図っている。

出荷量の平準化、リードタイムの見直しも

トラックの待機時間の要因のひとつとして挙げられるのが、出荷量の集中だ。倉庫作業が追い付かず、トラックの待機につながりやすい。タカラスタンダードでは輸配送能力に合わせて、1日の出荷量に上限を設け、出荷量を平準化する取り組みを実施。波動をコントロールすることで、倉庫内作業や運送事業者の集車の負荷を軽減している。

運送事業者の運行の負担増に配慮し、一部路線でのリードタイムの見直しを図っている。具体的には、自社の拠点間(工場~物流センター)のリードタイムを「翌日配送」から「翌々日配送」にしたり、顧客からの受注の締め切り時間を前倒しすることによって、納期に余裕を持たせる取り組みを進めている。

「2024年問題」対応に加え、輸送モードの複線化と環境負荷の軽減を目的とし、鉄道、船舶へのモーダルシフトも進める。昨年10月から、タカラ化工(滋賀)から東北物流センター(宮城)へ31ftコンテナを活用した鉄道輸送を開始し、現在、鉄道は6ルート、海上は5ルートを活用している。

海上輸送については一定以上の割合で利用している企業が取得できる「エコシップマーク」認定を受けている。今後も、ドライバーの拘束時間短縮効果とコストメリットを考慮しながら、モーダルシフトの路線拡大を検討する。

また、これまで搬入に関するドライバーの付帯作業の範囲が明確化されていなかったことから、長時間労働の改善や安全・労務面でのコンプライアンス確保に向け、付帯作業のオプションを明確化。倉庫作業員や施工作業員とのバランスも考慮し、荷渡しに関する付帯作業の基準を見直し、全運送事業者と来年4月末までに契約の再締結完了を目指す。

異業種との共同・中継輸送にもチャレンジ

同業種・異業種との共同物流にも取り組む。日本パレットレンタルが提供する、共同輸送マッチングサービス「TranOpt(トランオプト)」を活用し、家具・家電・住設機器の共同輸送に挑戦。7月には、デンソーがコーディネーターを務める7社合同による、スワップボディコンテナを使った幹線中継輸送サービスの実証実験に参加した。

タカラスタンダードでは「幹線の往復輸送」を共同物流の主なターゲットに据えるが、最大の課題となるのが、納品や集荷の時間など条件を合わせること。スワップボディコンテナは荷役を分離できるメリットがあるが、バースの占有やスペースの確保、倉庫作業員とドライバーの責任の明確化といった課題もある。

「TranOpt」を活用した共同輸送マッチングでは、「総論」は賛成でも「各論」を詰める段階で実施のハードルが上がる。ただ、共同物流は運送事業者の実車率向上や運収の増加に寄与できるほか、タカラスタンダードにとっても安定供給につながるため、課題を克服しながら実現に向けた取り組みを進めていく。
(2023年8月15日号)


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