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【レポート】EVバッテリーで危険物倉庫を全国展開=セイノーHD

2023.05.30

セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市、田口義隆社長)は、電気自動車(EV)の普及などに伴うリチウムイオン電池の物流需要に対応するため、危険物倉庫の全国展開に着手する。まずは、今年末から来年にかけて神奈川県内の2ヵ所に危険物倉庫を開設するほか、成田空港近隣や自動車メーカーの工場などが集積する北関東での開設も計画。将来的なバッテリーの回収需要も見込み、危険物倉庫の全国展開も視野に入れる。同社は「特積みのセイノーからロジのセイノー」を標榜して、保管、荷役業務を核としたロジスティクス事業を強化中。EV化が進む自動車業界の潮流変化を大きなビジネスチャンスと捉え、需要の取り込みを図っていく。

ロジ強化へ、自動車・バッテリーを重点分野に

同社は今年4月にロジスティクス部門の強化に向け組織体制を変更。従来、西濃運輸内にあったロジスティクス部をセイノーHDに移管するとともに、エレクトロニクス、ヘルスケア、オートモーティブ・バッテリーの3分野に特化した事業部を新設し、より専門性の高いソリューションを提案していく体制にした。

このうち、オートモーティブ・バッテリー物流事業部は、自動車や建機・農機といった駆動系分野を対象にリチウムイオン電池をはじめとする幅広い物流需要をターゲットにしていく。同事業部の末永純也部長は「当社の路線便ではもともとバッテリー類の輸送を多く取り扱っていた経緯もあり、リチウムイオン電池へのシフトが見込まれる中で、新たなビジネスチャンスとして同分野を強化していくことを決めた」と語る。

ただ、リチウムイオン電池は消防法上の危険物第4類に該当するため、危険物倉庫での保管が義務付けられている。そこで同社では、オートモーティブ領域の組立部品から保守部品、将来的なリユース・リサイクルに伴う回収需要の拡大などを見据え、危険物倉庫の全国展開を進めていく方針を固めた。

まずは神奈川県で2ヵ所の危険物倉庫を開設へ

グループ初となる危険物倉庫は、今年12月に神奈川県座間市に開設する。三菱地所が開発を進めているマルチテナント型物流施設「ロジクロス座間」敷地内の危険物倉庫1棟(1000㎡)を賃借し、資本・業務提携関係にある阪急阪神エクスプレスと共同運営していく。同拠点は西濃運輸の座間支店からも至近にあり、輸送との連携もスムーズだという。また、来年12月には西濃運輸の旧相模原支店の跡地を利用してまずは危険物倉庫1棟(1000㎡)を建設し、最終的に2棟(計2000㎡)の開設を計画している(完成イメージ)。危険物倉庫としては初の自社施設となるもので、防爆処理を施した空調設備の導入を検討してEVバッテリーの保管品質にも配慮していく。

さらに、今後の需要動向を見据えながら、成田空港近隣や自動車メーカーの工場などが集まっている北関東(茨城、群馬、栃木)での倉庫開設も計画中。成田では、2019年に開設した西濃運輸の成田支店があり、敷地内を含め開設を検討していく。「国際航空貨物でも危険物需要が一定程度あり、阪急阪神エクスプレスとの連携も考えている」(同)という。また、北関東では2022年に開設した龍ヶ崎支店(茨城県阿見町)の敷地内を活用することも視野に検討していく。

トラックターミナルの敷地などを有効活用

将来的には、自動車など駆動系だけでなく幅広い分野でリチウムイオン電池の利用が広がることが予想され、リユース・リサイクルを見据えた回収物流需要が高まることが考えられる。そこで、同社は危険物倉庫を全国展開していくことで、同社が得意とする輸送力と危険物倉庫での一時保管などを絡めた回収物流ネットワークの構築を構想している。危険物倉庫の建設については、自社による整備に加え、物流不動産デベロッパーなどが建設する危険物倉庫を借り受けることや、既存倉庫の一部を少量危険物貯蔵取扱所にするなど、多様な手段で保管スペースを確保して全国をカバーしていく考え。

セミチャーターなど危険物輸送も強化

また、従来から行ってきた危険物輸送事業も強化していく。重量やロット数などに応じて混載、セミチャーター、チャーターの3つの輸送サービスを提供している。EVバッテリーは大きなもので約1000㎏になるものもあり、とくにセミチャーターでの需要が見込まれるという。「混載では大き過ぎるが、チャーターだと運賃が高くなってしまうというニーズに応えたのがセミチャーター。このサービスを全国規模でやれるところは限られている」と自信を見せる。

同社今年4月、自動車部品輸送などを手がける司企業(本社・愛知県豊田市)と業務提携契約を締結し、自動車関連の物流で幅広く協業していく方針を打ち出した。両社の強みを相互補完しながら自動車関連の物流業務を拡大していく考えだが、輸送ネットワークや危険物倉庫でも協力を検討し、EVバッテリーを中心としたオートモーティブ領域での成長を目指していく。
(2023年5月30日号)


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