山九/23年3月期 国際港湾事業の好調で増収増益
山九(本社・東京都中央区、中村公大社長)が10日に発表した、2023年3月期連結決算は、売上高は4期ぶりに過去最高を更新。営業利益、経常利益は2期連続の増益、純利益は2期ぶりの増益となった。機工事業は増収増益を達成した一方、物流事業は増収ながら減益だった。
23年3月期の売上高は5792億2600万円(前期比4・6%増)、営業利益は381億6900万円(10・7%増)。国内の工事不具合に伴う支払補償費を計上したものの、海外の倉庫火災に伴う保険金の収受により経常利益が396億3100万円(11・8%増)、純利益が249億5900万円(10・3%増)となった。
売上高の52・2%を占める物流事業の売上高は3020億6700万円(5・3%増)、セグメント利益は98億7700万円(10・2%減)の増収減益。国際、港湾物流の取扱量および海外の輸送量は増加したが、海外「構内作業」での先行コスト計上と設備修繕費用増加の影響を受けた。
機工事業の売上高は2524億8800万円(4・0%増)、セグメント利益は260億7500万円(17・7%増)の増収増益。メンテナンスは、SDM(シャットダウンメンテナンス)の工事量が増加したことに加え、追加工事も計画を上回り、鉄鋼関連の修繕工事も増加した。設備工事は、前期完工した大型プラント建設工事や再エネ関連作業の剥落を鉄鋼関連の高炉改修をはじめとする大型工事の獲得でカバーした。
なお、海外売上高1018億円で売上比率17・6%(前期比1・7pt増)となり、コロナ規制の緩和に伴い、自動車部品や消費財等の輸送・保管作業が増加した。
「中期経営計画2026」の初年度にあたる24年3月期は、機工事業の工事量減少を主要因に、売上高5680億円(前期比1・9%減)、営業利益370億円(3・1%減)、経常利益370億円(6・6%減)、純利益245億円(1・8%減)の減収減益を予想。物流事業は減収増益、機工事業は減収減益を見込む。
物流事業では「港湾国際」はコンテナや国際貨物・輸出入の取扱量は引き続き堅調を維持する計画だが、海上運賃下落のマイナス影響を見込み、減収減益を予想。「3PL一般」は、関西での危険物倉庫の本格稼働や電子部品の取扱量が増加し「構内」では、中東地域の作業拡大等を織り込み、両セグメントはともに増収増益となる見通し。 機工事業では「メンテナンス」は、前期の大型SDM工事の反動減に加え、24年3月期は中小規模の案件が中心となることから、全体の工事量は減少する見込み。「設備工事」についても、前期完工した高炉改修等の大型工事の剥落に加え、再生エネ関連の重量物輸送(風力案件)も端境期となり減収減益の計画となる。
10日にオンラインで開催された決算説明会で、諸藤克明代表取締役専務は23年3月期における物流事業の増益の要因として港湾国際事業の好調を挙げ「コンテナの滞留による海上運賃の高騰があり、エアも上期は好調だった。下期には落ち着きがみられたが、年間を通じて収益に貢献した」と説明した。
大阪府高石市でまもなく竣工する危険物倉庫8棟について集荷の好調を報告するとともに、矢島克巳経営企画部長は、「主に医療・医薬に関連する危険物、EV用電池を保管する予定」と語った。また、「2024年問題」対策として、協力会社と連携したスワップボディ車によるスイッチ輸送、モーダルシフトの取り組みを報告した。
なお、前期は下期からパートナー会社への支払い早期化を開始したことで、営業・フリーキャッシュフローはともに減少した。諸藤氏はパートナーへの支払い早期化について「当社が先行して始めたが、サプライチェーンの中ですべてがそのようになり、価格を転嫁していく流れにならないと経済が回っていかない」と強調した。
今後の海外事業の展望として矢島氏は「中期経営計画ではターゲット業界とエリアを絞って、強いところを伸ばしていくことを掲げている。当社はインドを含めた東南アジア、中国を中心に、化成品、電気・電子部品、自動車部品といった荷物を押さえており、それを横に展開していく」と述べた。
(2023年5月16日号)