昭和産業が千葉~兵庫間で鉄道輸送、CO2を7割減
昭和産業(本社・東京都千代田区、塚越英行社長)は、トラックドライバーの拘束時間削減と環境負荷低減に向けた取り組みを強化している。今年2月から千葉~兵庫間の長距離輸送を、同業である食品メーカー大手の明治と連携し、全国通運が所有する「31ftオートフロアコンテナ」の共同利用により鉄道輸送へシフトした。ドライバーの運転時間を削減するとともに、輸送効率の向上と荷役作業の省力化を実現した。ドライバーの時間外労働の上限規制に伴う「2024年問題」が目前に控える中、さらなる物流効率化に向けて、運用改善や設備投資に注力していく。
ドライバーの負担軽減へ「ホワイト物流」に参画
小麦粉、食用油などの製造販売を手掛ける同社は、鹿島工場(茨城県神栖市)、船橋工場(千葉県船橋市)、神戸工場(神戸市東灘区)の3拠点で商品を製造し、各工場の構内に倉庫を有している。船橋工場出荷分についてはグループの物流子会社である昭産運輸が主に輸送を担当 し、その他の拠点については複数の協力運送事業者が輸送を担っている。
2019年8月には、「ホワイト物流」推進運動に参画。着荷主とも協力し、リードタイムの延長を実施するなど、物流改善への各種施策を推進。環境にやさしい物流を目指し、鉄道や船舶へのモーダルシフトを進めている。「昭和産業グループ環境目標」では、グループ全体のCO2排出量を30年までに13年度比で46%以上削減することを目標に掲げ、物流面での取り組みもさらに加速させている。
ドライバーの拘束時間削減および環境負荷低減に資する鉄道輸送については、これまでも輸送の一部で利用してきた。具体例としては、鹿島工場で生産した製品を神栖駅から顧客のもとへ、5tコンテナを用いて鉄道輸送を行っている。同駅では昨年秋から31ftコンテナに対応したトップリフターを配備していることから、今後は同駅からの鉄道輸送でも31ftコンテナ利用の可能性が広がる。
「帰り荷」積み、コンテナの空回送を解消
今回、明治とのオートフロアコンテナの共同利用に至ったのは、同コンテナを利用した明治の鉄道輸送の事例報告を聞いたことがきっかけ。「帰り荷」が無く復路は空回送となっている課題を知り、昭和産業側から協業を申し入れしたことによる。
オートフロアコンテナとは、荷台の床を電動でスライドさせる装置を備えた鉄道貨物輸送専用のコンテナ。荷物を荷室の入口に積み、床ごと奥にスライドさせることで荷物を荷室の奥まで移動できるため、積み降ろし時に荷室内で作業を行う必要がない。このため、作業時間が短縮されるとともに、作業者の業務負担の軽減につなげることができる。
明治では、21年9月から、岡山の倉敷工場から埼玉の倉庫への輸送の一部で、同コンテナを利用した鉄道輸送を開始していた。復路に昭和産業の荷物を「帰り荷」として積み込むことで、輸送力不足解消や配送のムダ削減を互いに補完しあう体制の構築を検討し、約1年にわたる準備期間を経て、今年2月に実運用に至った。
具体的には、明治が岡山の倉敷工場から岡山貨物ターミナル駅までオートフロアコンテナで製品を運び、岡山タでコンテナを鉄道に積み替えて埼玉の越谷貨物ターミナル駅まで輸送。コンテナをトラックで明治の埼玉の倉庫へ輸送したあと、荷物を降ろした空のコンテナは越谷タから東京貨物ターミナル駅へと運ばれる。
その後、全国通運が手配した車両がコンテナを東京タから昭和産業の船橋工場まで運び、船橋工場の製品を積み込んで東京タまで輸送。コンテナを鉄道に積み替え、神戸貨物ターミナル駅までの区間約590㎞を輸送する。神戸タへ運ばれたコンテナは神戸市内にある昭和産業の倉庫へとトラックで輸送。荷物を降ろした空のコンテナは、神戸タから岡山タまで運ばれる――という循環スキームだ。
BCP対応で5tコンテナへの切り替えもテスト
実運用にあたっては課題も浮上。ロジスティクス部企画・管理グループグループリーダーの橋本直典氏は「豪雨や災害などで鉄道のダイヤが乱れ、オートフロアコンテナが必要なタイミングで戻ってこなかった場合を想定しておく事が必要だった」と振り返る。「アクシデント発生時には5tコンテナを利用した輸送への切り替えを行えるように、あらかじめテスト輸送を行い、BCP面での対応を図った」と説明する。
千葉~兵庫の鉄道輸送はおおよそ週1便のペースで行われ、繁忙期や閑散期に合わせたペースの変動も想定。1度の輸送につき31ftオートフロアコンテナ1基分、約10tを輸送する。輸送コストは、トラック輸送時と比べても遜色ないという。今回の取り組みにより、ドライバーの運転時間の削減はもとより、CO2の排出量では、従来と比べて約7割減となる年間20tの削減を見込んでいる。
昭和産業は今後も明治との情報共有を密にしつつ、輸送効率化に向けた連携を続けていきたい考えで「ドライバーの労働負荷軽減や環境対策のためにも、両社が起用している運送事業者などとも協議しつつ、チャンスがあれば挑戦してみたい」(橋本氏)と意欲を見せる。
さらなる物流効率化へ共同配送も検討
さらなる物流効率化への取り組みにも意欲的だ。食品メーカーとの共同配送の実現に向け、現在、様々な企業と情報交換を行っており、橋本氏は「配送効率化は各メーカー共通の悩みであり、積極的に検討していかなければならない」と強調する。また、工場内にパレットチェンジャーやストレッチフィルムの自動包装機などマテハン機器の導入を推進し、物流現場の荷役作業の省力化にも取り組んでいる。
ドライバーの労働時間短縮への取り組みでは、荷積み場の車両集中による混雑や、工場と営業倉庫の多ヵ所積みによる移動時間のロスなどを課題として認識している。今後は、荷積み場の拡張や集荷・積込みの効率化に向けた環境整備や運用改善を物流現場と一体になって推進していく。
(2023年4月25日号)