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雪国まいたけがきのこ輸送で鉄道利用を拡大

2018.03.27

雪国まいたけ(本社・新潟県南魚沼市、足利厳社長)は昨年3月から、新潟~北海道で31ftクールコンテナを利用したきのこ商品の鉄道輸送を行っている。当初は輸送障害による遅延への懸念もあったが、この1年間、大きなトラブルもなく「非常に順調に稼働している」と青木隆・執行役員営業本部副本部長は話す。最も重視した鮮度保持についても「従来のトラック輸送に比べても遜色が無く、素晴らしい」と森本清・営業本部物流部長。昨年11月からは20ftクールコンテナを利用した輸送もスタートさせ、鉄道モーダルシフトがさらに拡大している。

国内まいたけ生産量の過半数を出荷

雪国まいたけでは主力商品のまいたけを中心としたきのこ商品ときのこ加工品、カット野菜などを生産、販売する。中でも、まいたけは同社売上高のほぼ半分を占めるとともに、国内生産量約5万tの過半数を賄うなど、圧倒的なシェアを誇る。きのこ類の生産工場は本社を置く新潟県南魚沼市に集中しており、同所から全国へ出荷。このほか、一部のまいたけを新潟県五泉市で、カット野菜を滋賀県竜王町の自社工場と北海道の委託先工場で生産している。

まいたけは、ビタミンDを豊富に含み、免疫力強化も見込まれるとあって、需要が拡大傾向にある。とくに同社の商品は、歯応えの良い大きな株を安定的に生産できる品質の高さが売り。3年程前には、食感が強い上に色が淡く、料理に使いやすい新品種を開発したことでさらに販売量が増え、まいたけ商品の売上高は毎年およそ1割以上の伸びを続けている。

出荷量の拡大と、エントリーユーザー向け小分け商品の強化を支えるため、今年9月には竜王町でまいたけのカッティングおよびパッケージングを行う「パッケージセンター」を開設予定。その上で、中期経営計画(17~21年度)内には西日本地域で新たな生産拠点を建設する計画にあり、まいたけへの馴染みが比較的薄い同地域への普及も狙っていく方針だ。

最も重視したのは「輸送中の鮮度維持」

同社商品は、各工場から小売店の物流センターや青果市場などへ、主にトラックで出荷される。基本的には協力運送会社の拠点を活用した幹線便と2次配送で届けられ、ボリュームの大きな直販先には直送も行う。TC利用を含めた中継拠点は北海道、東北、関東、中京、北陸、阪神、岡山、九州などに構え、全国で順次、2次配送体制への切り替えを進めている。

鉄道輸送へ移行したのは、南魚沼市の工場で生産するきのこ商品を北海道へ運ぶルート。工場で商品を積み込んだコンテナは毎日1便、南長岡駅(新潟県)から隅田川駅を経由して札幌貨物ターミナル駅へ輸送される。輸送商品は、まいたけ、えりんぎ、しめじの生きのこ3品。従来は工場からトラックで出荷し、青森港~函館港のフェリー輸送を経て、北海道エリアへ届けていた。

「きのこを美味しく食べていただくには鮮度が重要」(青木氏)として、とくに温度管理にはこだわった。きのこの保管に最適な5℃を維持するため、3温度帯管理対応の新型クールコンテナを使用。コンテナ外壁も厚く、外気温の影響を受けにくい仕様とした。さらに、GPS対応で温度状態と位置情報をリアルタイムに確認可能とし、コンテナ内にはビデオカメラも設置してJR貨物と北海道フーズ輸送が商品の状況を常時監視できる体制を整えた。

コンテナの積載量も最大化できるよう、ケースサイズに合わせて設計。外装も白色を基調に「雪国から北国へ。」をコンセプトとしたオリジナルデザインを考え、メインキャラクター「雪ちゃん」もあしらってPR効果を高めた。輸送リードタイムについても北海道側の中継拠点でのコントロールにより、大きな変更も無く輸送している。

CO2排出量は8割を削減

一方で、最大の懸念材料は輸送障害による遅延だった。鮮度が命であるため各中継拠点では基本的に在庫を最小限度しか持たず、日々の出荷が止まってしまうと、店側に多大な迷惑を掛けることになる。そこで、輸送障害時のバックアップ体制を綿密に組み立て、異常時の代替ルートとして新潟貨物ターミナル駅から札幌タ駅へ輸送する日本海側ルートも用意した。実際には基本ルートでのトラック代替輸送がスムーズに済んでいることから、日本海側ルートを使用したケースはないという。

順調な稼働を受け、昨年11月からは20ftクールコンテナを使用した新潟ルートでの北海道向け輸送も週1便を運行。今後は、新パッケージセンター向けの「まいたけ原体」の配送や、売上拡大を図る西日本向けの幹線輸送へも鉄道利用を広げたい方針だが、31ftクールコンテナの確保や、スケジュールにマッチしたダイヤの輸送枠獲得などの課題もあり、「可能なルートから着手していきたい」考えにある。

今回の鉄道モーダルシフトは、将来的な長距離トラック輸送の困難化とコスト増を見据えた打開策を探る中、協力運送会社の北海道フーズ輸送から提案を受けたもの。同社グループの稚内通運と、中越運送グループの中越通運が通運業務を担当し、輸送をスタートさせた。コスト面こそ大きなメリットは出ていないが「物流リスク管理の一環として新しい選択肢を持てたことは成果」と青木氏は指摘する。CO2排出量も従来比で79.6%削減するなど効果を発揮している。

森本氏は「荷主であるメーカーとしてもコンプライアンスを遵守し、お互いが共存共栄の中、物流業者のみに、しわ寄せがいかないよう経営側にも理解を求めていきたい」と話す。
(2018年3月27日号)


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